【シャロン・ストーン】ハリウッドを頭脳で攻略? 加齢の苦しみを吐露したシャロンが、今、自由なわけ【辰巳JUNKのセレブリティ・カルチャー】

シャロン・ストーンは、多くの人々、とくに女性に勇気を与えるアイコンだ。フェミニストとして有名で、同業者へのサポートも欠かさない。同時に、多くのセレブリティとは一線を画す存在でもある。業界において、パーフェクトとされる論に沿わぬ発言も多いのだ。

セレブらしからぬ「加齢で号泣」告白

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たとえば、今日の中高年の女性セレブで主流なのは、世の中の年齢差別に立ち向かう勇敢なスタンスだろう。一方、シャロンの場合、40代のとき、バスルームに籠城し、加齢していく自身の顔と身体を見ながら号泣した日々を明かしている。

 

幼いころより「本音しか言えなかった」と語る彼女は、セレブにありがちな大局的エンパワーメントや、主語の大きいポジティブ発信をあまり行わない。「二十歳ごろの自分へのアドバイス」を問われた時すら「自分を信じて、諦めないで」といった、定番文句は口にしないのだ。現在60代のシャロンの答えは非常に実利的。「投資マネージャーを雇え」「不動産や金の延べ棒など価値変動しにくいモノを買え」という、資産運用論だった。

IQ154で「セクシー主義」なハリウッドを攻略

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シャロン・ストーンといえば『氷の微笑』によって一世を風靡したセクシーアイコンである。しかしながら、当人はそうしたキャリア認識を持っていないことも興味深い一面だろう。

 

1958年、信号機がひとつしかないペンシルバニア州の小さな農村に生まれたシャロン・ストーンは、周囲から浮いている子だったという。高校卒業後にすぐ結婚する周囲の人生設計にも抗おうとし、実現させた。IQ154の「神童」だったシャロンは、15歳にして大学に入学したのだ。その後、法律家の道をすすめられたものの、モデルの仕事をしつつ、夢だった映画の世界に飛び込む。

俳優デビューした1980年代、ハリウッドは今よりもっと男性優位だった。ヘアメイクからケータリング担当にいたるまで、女性キャスト以外は全員男性の現場も珍しくなかったという。さらに、重役が「ヤりたくなる女か」でキャスティングを決める状況だった上、当時のシャロンは、そうした需要に沿わないとされていた。

 

そこで、シャロン・ストーンは、計画を立てた。彼らが求めるセクシーな像をつくりあげた上で、期待を超える仕事をしてみせればいい。そう考えて戦略的にグラビアを行い、業界人のパーティーに通った(飲んだふりをしていた酒は、密かに捨てていたという)。

そうして、1992年、過激な描写で話題を巻き起こした『氷の微笑』にて、映画史に刻まれるセクシーアイコンの座についたのだ。役作りの面では、罪の意識を持たない殺人鬼の側面にフォーカスし、論文を読んでいったという。この演技指針は、明らかに正しかった。同作の性表現は、今となっては珍しくもない。それでもレガシーが続いているのは、セクシーである以上に恐ろしいキャラクターを作りあげたシャロンあってこそだろう。計画どおり、需要に沿った上で期待以上の成果をあげたのだ。

賃金不平等と闘い「ハリウッドで一番面倒な人間」に

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しかしながら、当時は困窮していた。作品が大ヒットしても、共演したマイケル・ダグラスと異なり、ギャラは低かった。アカデミー賞に着ていくドレスすら買えない状況なのに、街で追いかけまわされる知名度を得た状態だったと振り返っている。

 

そこでシャロンに手を差しのべたのは、ハリウッドの伝説、シャーリー・マクレーンだった。初対面の後輩を招き入れたシャーリーは、特にアドバイスはせず、有名になった女性俳優の身に何が起こっていくかを具体的に教えたという。この実利的なアティチュードこそ、シャロン・ストーンが受け継いだものだろう。

 

その後も、シャロンは険しい道を進んできた。交渉を重ねて「高報酬を受ける希少な女性スター」となった暁には「ハリウッドで一番面倒な人間」とも呼ばれるようになった。1995年作『クイック&デッド』にて、無給で雇われそうになっていたレオナルド・ディカプリオのために、自腹でギャラを払ったりもしていた。2000年代に入ると、脳卒中に倒れ生死をさまよった。胸部の腫瘍をとりのぞく手術を行った時、無許可で豊胸をほどこされる恐ろしい出来事にも見舞われている。

自由になったシャロンが語る、加齢の官能

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60代となった今、彼女はもっと自由だ。40年ものあいだ「背が高すぎる」「太りすぎ」「痩せすぎ」などと注文をつけられた末、エージェンシーやマネジメント会社との契約を切り、直接オファーのみ受け入れるフリー体制に切り替えた。セレブの常識とは離れた発言ができるのも、こうした立場もあるのかもしれない。たとえば、Netflix『ラチェッド』等のドラマに出演している昨今は、「名映画とは、滅びゆく芸術」「今はテレビのほうが高品質な機会が広がっている」 、との大胆な宣言もしている。

 

バスルームで号泣していたという加齢問題にしても、彼女らしい受け入れ方をしたようだ。「老化は段階的なもの。運が良ければ、その進行は遅い。そして、私は幸運な立場」 。相変わらず、一般的なセレブビジネスとしては「パーフェクトではない」かもしれないが、正直その通りだろう。

かつて計画的にセクシーアイコンになった彼女は、その称号に乗り気ではない。しかし、今の自分には、性的魅力を見出しているようだ。美容整形もやめたシャロン・ストーンいわく、歳を重ねることの魅惑は、パーフェクトではないこと。「不完全性は、官能的だから」 。

辰己JUNKプロフィール画像
辰己JUNK

セレブリティや音楽、映画、ドラマなど、アメリカのポップカルチャー情報をメディアに多数寄稿。著書に『アメリカン・セレブリティーズ』(スモール出版)

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