今年のハロウィン。黄色いドレスを着て、『美女と野獣』のベルの格好をさせてもらった女の子たちの姿をけっこう目にした。もちろんアニメが大ヒットした時も、このベル・スタイル、人気はあったはずだが、やはり実写版の「エマ・ワトソンちゃんになりたい!」子たちの圧倒的支持によるものだろう。同作の撮影中、来日舞台ミュージカル版『天使にラブソングを』の取材で、作曲家アラン・メンケンにインタビューするという話があったのだが、「『美女と野獣』のための追加曲作りのためにロンドンにいなくてはならなくなった」と急遽キャンセル。「でも、それだけ素晴らしい作品に生まれかわりそうなんだよ。エマもイキイキしているし」とのことだったが、確かに名匠が興奮していただけある。映画界の“黄色いドレスのヒロイン”、定着だな。
エマを初めて取材したのは『ハリー・ポッターと賢者の石』('01)公開を控えていた時。映画の中ほど極端ではないけれど、例のハーマイオニー・ヘアを爆発させていたので、「シリーズが続く限り、ずっとそのスタイル?」と質問したら「アハハハ」と大笑い。「ハーマイオニーのトレードマークのようなものだから、突然短くしたりはしないと思うけど、少しずつ落ち着かせていくんじゃないかしら(笑)」。エマの予言が当たったのは、シリーズを順番に見ていくことによって明らか。「一人のキャラクターの成長をずっと続けて演じられる幸運、後になってしみじみ感じるんだろうな」と、こちらの予言も大正解だった。
周囲のスタッフがいいのか、エマ自身が賢いのか。『ハリー・ポッター』のような超ヒット作に出演すると、どうしても同じレベルの大作への出演を狙いがちになる。ところがエマの場合、『マリリン7日間の恋』('11)『ウォールフラワー』('12)『ブリングリング』('13)と、作品の規模やビリング(役の大小)ではなく、面白さにこだわったことが吉と出た。特に『ウォールフラワー』に関しては、「世代の近い仲間たちと、等身大の青春を演じられたのは本当に貴重で、新鮮だった」とか。『マリリン7日間の恋』も大きな役ではなかったけど、「共演のエディ(レッドメイン)やミシェル(ウィリアムズ)の姿勢から学ぶものが多かったわ」と謙虚だ。
そんなエマの最新作が、SNS全盛の現代の深部を描いた『ザ・サークル』。ハーマイオニー人気で、「どこに行っても騒がれて大変なんじゃない?」と質問された時は、「だから進学は母国イギリスじゃないアメリカ(のブラウン大学)を選んだの。全く違う環境に自分を置こうと思って」と答えていたエマだが、無名だった女性が、常に私生活を見張られている恐怖を味わうというストーリーは、妙にリアルでドキドキする。共演がトム・ハンクスというのも意外で面白いが、不安気になると出てくるおでこのシワがストーリーに説得力を持たせ、成功している。
映画や舞台、ダンスに造詣が深く、独自の視点で鋭く切り込むインタビューに定評が。ジョニー・デップから指名されることも多々。