今シーズンのパリ ファッションウィークの前半は、次世代のライジングスターたちのショーが注目を集めた。中でも『SPUR』がラブコールを送るのは、昨年度LVMHプライズで特別賞を受賞したロック・ファンによるロック。また新たなクリエイティブチームを迎えた老舗メゾンのデビューショーも多いに話題を呼んだ。
【ROKH】LVMHプライズ受賞で注目を集める、パリの新星が初のランウェイを開催
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パリコレのキックオフは『SPUR』が注目するロック 。初となるランウェイショーのインビテーションには「ティーンエイジ・ナイトメア」の文字。80~90年代のスティーブン・スピルバーグやガス・ヴァン・サント作品に着想源を得たコレクションには、テキサスで少年時代を過ごしたデザイナーのロック・ファン自身の心象風景も重なっています。ただしそこには陳腐なノスタルジアは一切なし。彼が得意とする解体、再構築の計算のもと形作られたモダンなシルエットは無類。ロックが、セントラルセントマーチン時代に初めて手がけた課題だったというトレンチコートは、より複雑なパターンとなり、見る角度によって異なる美しさを放つ完成度で披露されました。アウターのバリエーションは実に見事で、彼のクリエーションの真髄である「パーフェクト・インパーフェクション」を体現していました。なお、ロック・ファンの肉声インタビューは『SPUR』の4月号の「新世代デザイナーの"声"を聞け」特集にて掲載中です!
【DIOR】50年代のテディスタイルを、フェミニンかつアーティスティックに昇華
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ディオールの2019-20年秋冬コレクションでマリア・グラツィア・キウリが描いたのは50年代のテディボーイのカウンターとしての「テディ・ガール」。印象的だったのは、チェックやボーダーでトラッドやパンクの要素をメゾンのエレガンスと融合させたスタイル。バージャケットやウェストがシェイプされたシルエットなど、優雅さを表現しつつ現代的な反骨精神も垣間見せました。会場は、女性がアルファベットの形を表現するパネルに囲まれたデザイン。これは男性だけに与えられた特権を皮肉るために男性名で活躍したというイタリア人アーティスト、トマーゾ・ビンガによる作品。マリアらしい女性らしさへの視点が今回も会場全体から伝わってきました。
【MAISON MARGIELA】ジェンダーにとらわれない、ジョン・ガリアーノのスタイル美学
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ウィメンズとメンズの「デフィレ」コレクションを統合した「Co-ed」ショーを発表したメゾン マルジェラ。大音量の白鳥の湖の音楽とともにドラマティックに始まったショーは、女性モデルがマスキュリンなオーバーサイズコートを羽織り、男性モデルがヒールやクラッチを身につけるジェンダーフリュイドなスタイルをアップデート。強さと儚さをジェンダーを超えて表現することで美しさとは何か、という本質を追求したジョン・ガリアーノらしいショーでした。
【LANVIN】ブルーノ・シアレッリによる、新生ランバンが待望のデビュー
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ショー会場は13世紀に建立されたクリュニー美術館。ブルーノ・シアレッリによるランバンでのデビューコレクションは、レディスとメンズを合同で発表。かつてはロエベのメンズを手がけていたブルーノ。コレクションは、躍動感あふれる、はつらつとしたデイウェアを中心に、随所に差し込まれたフォークロア要素も目を引きました。フェアアイルや南米風ニット、タータンチェックなど、民俗的折衷主義をモダンに演出し、テーマである唯一無二の「ミスティック・ピルグリム」スタイルを作り上げた手腕と、風にたゆたうような軽やかなフルイドシルエットは見事。新時代に突入した新しいランバン像に注目です。
【CHLOÉ】ナターシャが提案する、フレンチシックなライディングスタイル
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馬が駆ける蹄の音から始まったクロエのショー。アーガイルチェックや、トワルドジュイ柄、オリエンタルなプリントなどさまざまなカルチャーミックスで、クリエイティブ・ディレクターのナターシャ・ラムゼイ=レヴィが考える新しい女性のスタイルを提案しました。フード付きのニットスヌードや馬蹄を模した大ぶりのアクセサリーなどプレイフルな小物たちの存在感にも注目。また、シートには過去にクロエのデザイナーを務めていたカール・ラガーフェルドに関する追悼カードが。ここでもモード界のレジェンドへの感謝とリスペクトが示されていました。