ファッションは単なるトレンドだけにあらず。一着の洋服には、デザイナーをはじめ作り手のメッセージが込められている。サステイナビリティ、現代の女性に求められる価値観、そしてオーセンティシティ (本物であること)。4大コレクションのトリを飾るスペクタクルから、今のモードシーンが求める声に耳を傾けてみよう。
【ディオール】女性による、女性のためのワードローブ。シスターフッドは永遠に!
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クリエイティブ・ディレクターのマリア・グラツィア・キウリは、ディオールでのデビューコレクションから一貫して「フェミニストであれ」というメッセージを発しています。今季、彼女が出発点に置いたのは、自身がティーンエイジャーの頃の日記。一人の少女が、ファッションやアートを通じて、自己を確立していくまでの道のりに思いを馳せ、コレクションを完成させました。その中で鍵となるのが、1960年~70年代イタリアのフェミニストアートにおける象徴的な人物たち。特に、ショー会場やルックにも用いられたカルラ・ロレンツィの「I say I」というメッセージは、力強い自己肯定に満ちています。チェックや水玉、ジーンズ、ブラック&ホワイトといったエターナルなモチーフをモダンかつエレガントに昇華させて。意思の強さを感じさせるアイメイクアップもポイントです。
【ドリス ヴァン ノッテン】デカダンなファッションへの情熱は夜ひらく
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白い陶器のような肌に赤い唇。まるでセルジュ・ルタンスを思わせるメイクアップが目を引く今季のドリス ヴァン ノッテン。一人ひとり異なる色に髪を染め上げ、まとうのはナイトシーンを想起させるきらびやかでダークなウェア。パンクやロカビリー、ディスコ、ハワイアンなどの思い思いのスタイルに身を包み、着飾ることの喜びや情熱を表現しています。ショーの間に流れていたのは、パーティーガールの繊細な内面を歌ったミシェル・グレーヴィチの "パーティー ガール"。その日の服を選ぶことは、自身の気持ちを表現することでもあるので、華やかに装うときの心の中の対話にこそ、デザイナーは注目したのかもしれません。
【メゾン マルジェラ】サステイナブル・イン・プログレス!
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サステイナブルという考え方が当たり前となる中で、クリエイティブディレクターのジョン・ガリアーノが提案するのは、“Recicla”という発想。再利用を意味する言葉“Upcycle, Recycle”と、過去の服に再び光をあてるメゾンのアイデンティティとも言えるコンセプト“Replcia”の2つを組み合わせた造語で、ガリアーノ自身によって探し出された価値あるピースに、原産国と年代を示す“Recicla”のラベルが付けられ、修復され、最適化され、スペシャルなアクセサリーや服として登場します。例えば写真4枚目のコートにご注目を! また、この発想はブルジョワに象徴されるクラシックな洋服(ボウタイやふっくらとした袖を持つコートなど)にも応用され、今の時代にフィットする服に生まれ変わりました。目の覚める色や大胆なカッティング、思いもよらない生地の組み合わせなど、服を着る喜びを刺激するアイテムの連続です。本当に価値ある服とは何か、を問いかけるコレクションでした。
【クロエ】アートとモードが出会う時。その服は、あなたの糧となる
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クロエから届いたインビテーションに書かれていたのは「If You Listen Carefully… I'll Show You How to Dance」というメッセージ。今回のショーというダンスパーティを彩ったのは、クリエイティブ・ディレクターのナターシャ・ラムゼイ=レヴィから招待された3人のアーティストでした。会場のセットを手がけたのは、マリオン・ヴァーブーム。金色の柱には、アールデコ調の花や松ぼっくり、蜂の巣、そして子宮の彫刻が施され、荘厳なムードを漂わせます。さらに、マリアンヌ・フェイスフルによる詩の朗読がバックミュージックの代わりに。その空間を歩くのは、リタ・アッカーマンのアートをまとったモデルたち。1990年代のアーカイブ作品から選ばれた神秘的な少女のイラストレーションが、ウェアやバッグにちりばめられています。意志ある女性の背中を押す演出が随所に見られた今季、優雅でありながら芯の強さを感じる服は、きっと着る人の人生を応援してくれるはずです。
【ケンゾー】新クリエイティブ・ディレクターが描く、ノンシャランな異邦人
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新クリエイティブ・ディレクターのフェリペ・オリヴェイラ・バティスタによるケンゾー。透明なビニールドームでできたショーセットに朝日の差し込む中、ランウェイがスタートしました。高田賢三が初めてパリの地を踏んだ日に思いを馳せて描くのは、放浪者の遊牧精神。馬のプリントやジッパーによってシルエットを変えられるドレス、翼のように広がったパーカーなど、自由なマインドに寄り添うアイテムが揃っています。メゾンのシンボルでもあるトラは、リスボン出身のアーティスト、フリオ・ポマールの作品をヒントに進化。ちなみに、ショーセットはモジュラー式で、今後ポップアップショップなどに再利用されるそうです。