【HC 20SS】ヴィルジニー ヴィアールによるシャネル、その新たなビジョン

凍えるような寒さの中、グラン・パレに足を踏み入れる。目の前に広がるのは、ボタニカルガーデンと白い布。天窓から射す日の光に、一瞬真冬であることを忘れそうになった。

シャネルのオートクチュールコレクション、今シーズンの着想源となったのは、オバジーヌ。そう、マドモアゼルが幼少期を過ごした修道院のあるところ。メゾンの歴史を語る上で欠かすことのできないこの場所だが、実はこれまでコレクションのテーマに用いられたことはなかった。

ファーストルックで登場したのは、ヴィットーリア・チェレッティ。ノーカラーのツイードドレスは、モノトーンで統一され、どこか禁欲的な印象を与える。

コレクション全体を構成するのは、白、黒、そして花々から写しとったような柔らかなパステルカラー。メゾンダール (オートクチュールの工房) による刺しゅうやプリーツ、ツイードが奥ゆかしくも力強くコレクションの女性像を引き立てる。

ヴィルジニー ヴィアールによる2シーズン目のオートクチュールにあたる今回のコレクション。彼女がアーティスティック ディレクターに就任してまだ1年足らずだが、既に新たなシャネルのビジョンは鮮やかに示されているように感じる。メゾンの歴史に敬意を払い、ヘリテージを継承する傍らで、現代に生きる女性に必要なワードローブとは何か、もといシャネルを体現するのはどんな女性像なのか、といった内省的な視点から生み出されたオートクチュールは、柔らかくも力強く、そして現代的な軽やかさに満ち溢れている。

photos and text:Shunsuke Okabe

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