【NYFW 20-21FW】サステイナビリティとどう向き合うか、それが問題だ

ランウェイシーンで今最も重要なアジェンダといえば、サステイナビリティを置いて他にない。特に環境問題への意識が高いNYでは、今シーズン様々な試みが取り入れられ、コレクションのルックと同様に高い注目を集めた。再利用素材を使ったアップサイクルは当たり前。環境に配慮した会場演出や、リセールストアのシューズを合わせるスタイリングなど、趣向を凝らしたアイデアで、ファッションの次なる道標を示した。

 

【ロンシャン】70年代のミューズにオマージュを捧げたブージーシックスタイル

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NYファッションウィークでも圧倒的な透明感を放つ、のんさん。ロンシャンのフロントロウにて。今季のロンシャンは、カトリーヌ・ドヌーヴやロミー・シュナイダー、ステファヌ・オードランといった70年を象徴するミューズたちのスタイルを着想源としています。コレクションのポイントとなっていた美しい幾何学模様の刺繍のインスピレーションは、旅する女性の車のメカニックから。重厚感がありながらも非常にモダンなコレクションでした。

 

【コリーナ・ストラーダ】サステイナブルは楽しくなければ!アップビートなショーに集ったフラワーチルドレン

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ヒラリー・テイマーがデザイナーを務めるコリーナ・ストラーダは今季のNYコレクションのハイライトの一つ。ヒラリーは、ブランド創立2008年から一貫してサステイナビリティと向き合ってきました。ショーが始まる前には環境問題に関して、女優Sasha Frolovaが約30分にわたってスピーチを披露。布の生産によって毎年失われる木材の量、クリーニングによる汚染、一年間に無駄になっている途方もない服の量、などをあくまでも明るく紹介します。ファッション業界が向き合う問題点をメディアに知らせる時間です。その後ショーがスタート。コレクションに使われた服は、スウェット以外はほぼ、デッドストックの布地と、バラの花びらから作られたシルクのようなリサイクル生地で作られています。テーマは「Garden Ho」。おなじみタイダイ、カラフルな花柄、スタッフの手描きペイントをのせたポジティブなコレクションです。そのどれもが、おとぎの国の世界から抜け出てきたようにロマンティック。モデルは皆思い思いに自己表現をしながらランウェイを歩き、自分が自分自身である喜びを伝えます。その手にはラインストーンで覆われたデコ・マイボトルが。これ、ちゃんと販売してます。サステイナブル、と聞くと急に複雑に考えてしまうけれど、楽しみながら、でも真剣に具体的に、自分のできることから始めていく。沈黙せず声を上げる。そんな姿勢が実に今らしいと思います。最後にヘイリー・ウィリアムスによる音楽に乗せて踊る姿は、現代版ヒッピーのコミュニティを見ているようでした。間違いなく2020年代のファッションを変え、牽引していくヒラリー・テイマーのインタビューは、2/22発売の『SPUR』4月号で掲載しています。

 

【アディアム】インスピレーション源は蹴鞠!大坂なおみとのコラボレーションも

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テニスプレーヤーの大坂なおみさんとのコレクションをスタートすることを発表したアディアム。写真はフロントロウで、ショーを見守る大坂さんです。今シーズンのコレクションのインスピレーションは、平安時代の貴族の遊び、蹴鞠。プリーツやフリルのダイナミックな動きで、その躍動感を表現しています。また、ジオメトリックパターンも伝統的な蹴鞠の模様を想起させます。アディアムらしいフェミニンなルックに、ヘッドバンドやバイカーショーツ、トラックパンツがスポーティな味付けを施して。もちろん美しいテーラリングも健在です。

 

【ヴァケラ】次世代のNYを担うライジングスターズは、東京ブランドにお熱?

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NYの新進気鋭ブランド、ヴァケラのデザイナーを手がけるデザイナー陣(左から)、パトリック・ディカプリオとクレア・サリー、ブリン・トーベンシーをショールームでキャッチ。ドーバー ストリート マーケット ニューヨークで開催されたショーでは、クロコ型押しのエナメルレザー風生地を用いたパワーショルダージャケットや、コクーンシルエットの迷彩柄ドレス、フリルをふんだんに配した黒いドレスに、赤いストライプのオーバーサイズシャツをはじめ、フェティッシュな色気と禁欲さが同居した、力強いコレクションを披露しました。「NYのファッションシーンに対する反抗心がインスピレーション。アメリカのファッション業界はコマーシャルすぎて面白くないよね。いわゆる売れる服しか扱うリテールがない。その点東京はクリエーションに対してとても協力的で、大好きなんだ。去年遊びに行ったのだけど、たくさんの面白い友達ができた。デスパレード・トーキョーの親子や、コンテナストアのクルーは最高にクールだよ。日本でのディストリビューターはディプトリクスに決まったから、今後僕らの服を扱ってくれるお店がますます増えたら嬉しいな」と語るパトリック。その言葉通り、確かに彼らの生み出す服には、どこか東京っぽさが漂います。尊敬しているデザイナーを尋ねると「アンダーカバーの高橋盾が僕のスター。ジュンヤ・ワタナベ、もちろんレイ・カワクボも。あと最近、『インスタグラム』で見つけた、ヘイヘイっていうニューブランドにときめいてるよ。面白くない?」興奮してインスタグラムの画面を見せながら話してくれました。何よりわりとクセのあるヴァケラをさらりと着こなす(当然と言えば当然ですが)三人が本当に素敵で、すっかりこのブランドのファンに。新しいデザイナーが次々生まれる今のNY、面白いですよ……!

 

【エコーズラッタ】個性派モデルが勢ぞろいするブランドといえばここ、サステイナビリティとの向き合い方も独特

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そこには嘘のない多様性があると思います。「エコーズラッタのショーには、世界一おしゃれな人が集まっている」。以前編集部の同僚がそう言っていたのを今日改めて実感しました。モデルとしての多様性は言わずもがな、来場者の面々が実に様々。肌の色も、体型も、性別も。自分の体のラインを思いっきり出して、柄が伸びるのも楽しんでニットパンツを堂々と履いている女性。とってもかっこ良くて、憧れます。今回のコレクションではトマトレッドやレモンイエロー、ターコイズブルーにオレンジ、グリーンといった目の覚めるカラーが印象的。また、このブランドのスターアイテムであるニットに加えて今回はテーラードジャケットや美しい仕立てのコートも登場しています。80年代のスタイルを思わせるシルエットときらめきが隠し味。注目すべきは足元。なんとすべて、デザイナーリセールストアのザ・リアルリアルからの提供。つまりユーズドアイテムです。配られたリリースには全てのルックに使われた靴のブランドがきっちり記載されています。サステイナビリティへの取り組みとして、なるほどこういうやり方もあるのか、と膝を打ちました。

 

【マイケル・コース コレクション】NYコレクションの花形、安定感のあるコレクションに、ゲストのセレブリティもため息

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マイケルコースのランウェイを観に来ていた西内まりやさん。ショーの感想を聞くと、「上品で綺麗な服、とても素敵でした。生地感やシルエットも好み。はやく着たい!と思いました」とのこと。今回のコレクションのテーマは「心地よいグラマラス、タウンアンドカントリー」。グレーやベージュの滑らかなウールやダブルフェイスのカシミアニットなど見るからに気持ち良さそうな生地を用いて、洗練されたスタイルを描きます。ゆとりがあるシルエットでも、ウエストをレザーベルトでマークしたり、ハーネスを取り入れたりと、どこかにポイントを置くことで緊張感が生まれます。「王道のマイケルコース」という感じのコレクション。個人的にはニットグローブのスタイリングがツボでした。コレクションピースの中にはリサイクルウールを用いたものも。ランウェイで使った木材はアートのための再利用を担うセンターへ寄贈するそうです。

 

【マーク ジェイコブス】静謐なコレクションと、ダイナミックなパフォーマンスの融合、NYのトリを飾るスペクタクル

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マーク ジェイコブスのテーマは、「CHAOS +FORM」。アメリカのダンサー兼振付師、別名 “パンクバレリーナ” であるキャロル・アーミタージュが暗闇の中でスポットライトを浴びます。そして次々と走り出すダンサー、その合間をモデルが歩いていきます。感情の爆発と、静けさのコントラストがキャロルのダンスの特徴ですが、このショーもまさに、動と静のスペクタクル!モデルがまとう服は、ここ最近のマークの装飾主義から一転、抑制の効いたミニマリズム。60年代から90年代、マーク・ジェイコブスが愛したアメリカに着想した、クラシックな装いです。たとえばパステルカラーのセットアップや、キャミソールドレス、丸襟のミニドレス、ピーコートにソックス…さまざまなスタイルが出てきますが、確かな様式美に貫かれています。このショーには、実にたくさんのモデル、ダンサーが登場しました。中にはマイリー・サイラスの姿も。さまざまな個性を持ったモデルたちが、削ぎ落とされた「エターナルに美しい服」に身を包んだとき、着る人の内面や感情が外側へ溢れ出ていく。このショーから、そんなメッセージを受け取りました。今季もマーク・ジェイコブスが私たちにファッションの醍醐味を教えてくれました。

 

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