【パリコレクション2022SS③】モードは時を超えていく

久しぶりにフィジカルでのショーが戻ってきて、モードラバーたちの熱気に包まれたパリ・ファッション・ウィークも終了しましたが、その余韻は冷めやらぬままです。終盤戦で登場したビッグメゾンのコレクションに底通するのは、時とモードの関係。新たなスタイル提案とともに、時代の捉え方を教えてくれるベスト3ルックを紹介します。

【MIU MIU】ローライズ、完全復活を宣言


©︎IMAXtree/AFLO
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ファーストルックを見た瞬間から、“このコレクションはヤバイ。伝説になる”とすら思いました。10数年ぶりに、ローライズの復活が決定的になったのです。ニューヨーク、ロンドン、ミラノからその気配はみなが感じていたと思いますが、この完成度、素晴らしすぎる。シャツ、Vネックニット、ブレザー、スラックスといったトラッドでエターナルなアイテムがクロップド丈、カットオフ、ローライズという、ディテール&バランス操作で全く新鮮なプロポーションに生まれ変わっています。

©︎IMAXtree/AFLO
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ニューバランス「574」の再解釈にもカットオフのディテールを採用。これぞ今すぐ欲しい一足です!

「不必要な新しさを追い求めるのではなく、ファッションの基本や洋服における人々のニーズや欲求を表現し、現実に焦点をあて、その幅を広げた」という本コレクション。不必要な新しさはいらないというミウッチャ・プラダの決断に感服しました。いよいよ、モードは次なるステージに向かっているのだと思わずにはいられません。

【CHANEL】『クルーレス』(’95)ルックは永久不滅


©︎IMAXtree/AFLO
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まるで大内順子先生のナレーションが聞こえてくるようでした。一本のランウェイをたくさんのフォトグラファーが囲み、モデルたちがキャットウォークしながらフラッシュを浴びる。その光景は、モードの世界に憧れ、焦がれ、必死で情報を得ようと「ファッション通信」を見ていた当時を思い出させてくれました。やっぱりファッションは夢を抱ける魔法です。

華々しいランウェイの中でも特にキュンとしたのがこちらのピンクのセットアップ。大好きな映画『クルーレス』で、ダサいことが大嫌いな主人公シェール(アリシア・シルバーストーン)のワードローブにありそうなジャケットとスカートは、背伸びしてでもおしゃれしたいという小生意気な雰囲気が魅力的。あのスタイルは永遠なのだと嬉しくなりました。

©︎IMAXtree/AFLO
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さらに、アクセサリーまで細かくチェックすれば、小ワザが効いた可愛いものが勢揃い。100周年を迎えた香水「No5」のボトルを模したバッグは、コレクターアイテムです!

【LOUIS VUITTON】時をかけるモード


©︎IMAXtree/AFLO
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ここ数シーズン、ニコラ・ジェスキエールは世紀を超えたスタイルミックスを生み出していますが、その最高潮と言えるのが今回のコレクションではないでしょうか。テーマはまさに「時のル グラン バル(仮面舞踏会)への招待状」。過去、未来、そして今を繋ぐものが服であると考えるジェスキエール。実は数年前の年末に、都内のヴィンテージショップで彼を見かけたことがあります。その際、服への敬意を感じ、丹念に研究しようとする姿勢に驚きました。それらを一歩先ゆく現代の感覚と織り交ぜて出来上がるルックの数々は、やっぱり力強い! モデルのMIKAが着用したのは17世紀から19世紀にかけて見られた胸飾り「ジャボ」を強調したブラウスに、ミリタリーパンツという意表をつくコントラストに目が釘付けになりました。スタイリングは自由精神にあふれ、どんな年代のどんなものと組み合わせたっていい。モードとは時をかける装置であると、その奥深さを噛み締めております。

エディターKINUGASAプロフィール画像
エディターKINUGASA

顔面識別が得意のモデルウォッチャー。デビューから好きなのはサーシャ・ピヴォヴァロヴァ。ファッションと映画を主に担当。

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