世界に羽ばたく日本発ブランドを追いかけろ! Rakuten Fashion Week TOKYO 2022 A/Wで注目した4ブランド

2022年秋冬のファッションウィークはまだまだ終わらない! 3月14日〜3月19日の期間、渋谷ヒカリエを中心に行われたRakuten Fashion Week TOKYOは、東京発のファッションウィーク。日本のファッションシーンを牽引するブランドから新進気鋭の若手まで、計54ブランドがフィジカルショーやオンラインプレゼンテーションを発表した。今回追いかけたのは、世界での活躍を期待されるブランドに贈られる賞、TOKYO FASHION AWARD 2022を受賞した8ブランドのうちの、ウィメンズ4ブランド。これから世界に羽ばたいていく、注目の才能をお見逃しなく!

 

【HARUNOBUMURATA】パーソナルな視点で描くミニマルなエレガンス

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ブランド初となるショーを開催したハルノブムラタは、上質なテキスタイルと計算されたシルエットが生み出す、ミニマルなエレガンスが魅力。今季は20世紀初頭の写真家、ジャック=アンリ・ラルティーグが切り取った景色から着想を得た。

幼い頃からカメラを手に取り、自らの視点で世界を見つめていた彼が関心を寄せていたのは、車や馬、運動する人々など、日常のムーブメントを捉えること。その視点を服に向けると、肩から滑り落ちるコートを押さえたり、鞄に手を添えるといった、日常に潜む何気ない仕草が浮かび上がる。ハルノブムラタの服は、そうした仕草にある美を再発見し、着る人の動作に光の軌跡を描くような一着だ。

もしこのコートを羽織ったら、今より少し優しくなれるかもしれない。思い切ってドレスを素肌で着てみたら、自信が湧いてくるのかも。そんな妄想が止まらない。デザイナーの村田晴信は「服というプロダクトではなく、服を着た女性が美しく見えること、そして女性像を作ることがゴール」と語った。ショーにはデザイナーの友人である、俳優の三吉彩花がモデルとして登場。


 

【MALION vintage】アップサイクルで作る“秘密基地”

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もし大人になったいま秘密基地を作るとしたら、自分だけのその空間で、どんな宝物を愛でるだろう?

年代も国も様々なアイテムをアップサイクルすることで、独自の世界観を描き続けているMALION vintage。ブランド設立6年目の集大成として、シグネチャーであるヴィンテージネクタイをアップサイクルしたアイテムをメインにコレクションを発表した。

2022AWのテーマは“秘密基地”。その言葉は、公園で拾った少し変わった小石やお菓子の可愛いパッケージ、友達にもらったいい香りのする練り消しなど、幼少期に集めては隠していた、小さな宝物たちを思い起こさせる。

服を、特に古着をこよなく愛する二人のデザイナーが、古着を解体する「過去を紐解く作業」の過程で着目したのは、クローゼットという秘密基地。デザイナーの石田は父のクローゼットに大切に並べられていた、様々な柄のネクタイを思い出したという。

ショーはオーガンジードレスとビンテージのネクタイをパッチワークしたロングスカートのスタイリングから幕を開ける。ネクタイをパッチワークで仕上げたオーバーサイズのシャツ、年代もさまざまなハリスツイードの生地をつなぎ合わせたビスチェやワイドパンツ、テーブルクロスとクッションカバーを使ったジャンプスーツと続き、宝物が集まっていくかのように、次第に着重ねられていく。ラストルックは80本のネクタイを解き再構築したという、渾身のダウンジャケットだ。

好きなものだけを集めて、愛でて、身にまとう。誰にも何にも縛られることない自分だけの秘密基地は、大人になっても必要なんじゃないだろうか。ネクタイが敷かれたランウェイには「好きなものが好き」という純粋な気持ちが一心に注がれ、まるで彼女たちの秘密基地に招かれたようだった。


 

【pillings】現実と理想の間でもがく力強い人間像

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「音痴なんです。合唱コンクールで『口パクでいいよ』と言われたことがショックで、音楽が怖いんです」そう語るのは、ニットブランド #pillings デザイナーの村上亮太。ランウェイの上に吊るされたピアノは彼にとって「正しくないと許されないもの」を象徴している。窮屈な社会のメタファーだ。

2022AWのテーマは「理想と現実」。抗えない規則で律された社会という現実と、自分の内に秘める理想の間で葛藤する人間の不器用さを描いた。

ショーで多く登場したアランニットは、漁に出る夫に向けて妻が編んだニットが起源と言われている。海で迷わず無事に帰ってくるように祈りを込めた柄や、遭難してしまった際に個人を識別するための家紋のようなものが編まれていた。

今回、花やロバ、イルカなど手編みの模様が描かれたpillingsのアランニットにも、同じような願いが込められている。それは、現代社会の「規格」にはまらなかった人、自分の居場所を探している人への道標としての、様々なモチーフでもあるのだ。

大きなインパクトを残したのは、ピアノを覆う蟻や昆虫の標本といった虫のモチーフ。蟻は社会性の象徴として描かれ、標本は属性の枠を越えた「個」の美しさを讃えている。虫のモチーフは、実はすべて手編みのブローチという遊び心にも注目だ。

フィナーレのBGMは「もしもピアノが弾けたなら」。もしも理想が叶ったら、人生は今よりもっと良くなるのだろうか? 現実と理想の間で何かを掴もうともがく力こそ、素敵なものなのかもしれない。今をもがく人たちを優しく祝福してくれるような服に、心があたたまった。

 

【malamute】ハプニングに出合える景色を求めて

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ニットブランドのmalamuteが2022AWのテーマとして掲げたのは「out of action」。家で過ごす機会が多かったこの二年間は、穏やかな気持ちになれる服作りを心がけていたという。しかし、内省的な時間を経た今、新たに求めたのは何が起こるかわからないライブ感と、ハプニングがもたらす高揚感。

会場には発光する球体や青と金のオブジェが規則的に置かれ、その間をモデルたちが足早に通り過ぎていく。円形に配置された客席から見える景色は、何ひとつ同じではない。

動きがあることによって生まれる偶然の景色を描くため、今季は普段よりスタイリングできる服を意識した。サイドスリットやフロントにジップを用いることで、着こなしの幅を広げた。服を重ね、素肌を自由に見え隠れさせることで、さまざまなシーンに対応する。

ダブルジップのカーディガンやスカートを彩るのは、インターナショナル・クライン・ブルー。イヴ・クラインの作品から抽出したビビッドピンクやゴールドといったカラーパレットは、動的な欲求の表れだ。

鮮やかな色彩のニットウェアに身を包み、自分の目でしか切り取れない景色を探しに行こう。ーそんなメッセージが心に届く。

 

TOKYO FASHION AWARD

世界で活躍するファッションデザイナーを東京から輩出することを目的に、ポテンシャルの高いブランドを選定・表彰し、海外での展開をサポートする日本発のファッションアワード。パリでの独自ショールームの開設など、受賞ブランドに対してビジネス面における支援を継続的に行っている。受賞者への支援の一つとして、Rakuten Fashion Week TOKYO 2022 A/WにてTOKYO FASHION AWARD 2022 WINNERS' EVENTと題し、受賞8ブランドがランウェイショー、インスタレーションを開催した。

 

第7回 TOKYO FASHION AWARD 2022 受賞デザイナー

SUGARHILL/林 陸也
DAIRIKU/岡本 大陸
KIDILL/末安 弘明
YOKE/寺田 典夫
MALION vintage/石田 栄莉子、清水 亜樹
pillings/村上 亮太
HARUNOBUMURATA/村田 晴信
malamute/小高 真理

 

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