【2023-'24年 NYFW】SPURがインスパイアされたベスト5ブランドを紹介!

2月10日〜15日まで開催されたNYファッションウィーク。トム・ブラウンがアメリカファッション協議会(CFDA)の会長に就任して初めてとなる、2023-‘24年秋冬コレクションです。各ブランドの発表を通して、それぞれ異なる方向から“女性の強さ”に向き合ったクリエーションが多かったのも印象的なシーズンでした。また、パンクやゴシックといった要素も注目したいキーワード。この記事ではSPUR編集部がラブコールを贈るベスト5ブランドを、現地の声とともにお届け。

【ADEAM】パンクな要素の光るドレスルックに夢中

ADEAM 2023-'24年秋冬コレクション
ロマンティックなドレスに、ダークカラーの口紅とノーズアクセサリーがパンチの効いたアクセントに! Photo: Courtesy of ADEAM

インスピレーションは、矢沢あいによる伝説的な作品『NANA』! そこに描かれたパンクロック・ファッションの要素を、ADEAMらしいエレガントな視点から解釈しました。ゴシックレースやチュールなどの素材に、チェック柄を巧みにミックス。そのバランス感覚が素晴らしいんです。また、コロナ禍を経て高まるパーティー需要に応えた、優美なイブニングドレスの幅広いバリエーションにも目が釘付けに。ハリウッドの若い俳優やセレブリティが着用する姿も素敵に映えるはず。レッドカーペットを華やげるアワードシーズンが待ち遠しい!

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Photo: Courtesy of ADEAM
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Photo: Courtesy of ADEAM
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エディターのフェイバリットルックはこちら。柄違いのシャツのレイヤードは真似したい! Photo: Courtesy of ADEAM ICHI

そしてジェンダーニュートラルなADEAM ICHIが今回、ランウェイデビューを果たしました。ファーストルックで登場したのは、なんとギタリストのMIYAVIさん。迫力のギターパフォーマンスに圧倒されつつ、グランジに転換した瑞々しいランウェイに、クリエイティブディレクター前田華子さん自身が愛する音楽のレガシーが重なって。足元のDr.Martensの靴紐も左右で色が異なっていたり、ショーツからはドローストリングが揺れていたり、ディテールがピリッと効いていました。新たなフェーズに力強く歩を進めたADEAMに、心からの拍手を送りたい!

MIYAVIさんによる迫力たっぷりのギターパフォーマンス

【ANNA SUI】レトロな世界観は、永遠のスタンダード

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胸もとの大ぶりなペンダントも可憐なアクセントに。ラメトップスとタイツのリンクも真似したい。Photo: Courtesy of ANNA SUI

かつてNYで一世を風靡したディスコ、ペパーミントラウンジに想いを馳せた今季。ファーストルックは、どこかコケティッシュなスリップドレス。そこにツイードジャケットを羽織ったり、柄同士を重ねて遊んだり。「この格好で踊りに行きたい!」と胸がキュンとする仕上がりです。エターナルな愛らしさがぎゅっと凝縮されていました。ヴィンテージライクでレトロな雰囲気は、SPURの根底に流れるDNAとも強くリンク。「女性が袖を通して、本当に可愛い服だと再認識しました。会場にはデザイナーと昔から親交のあるマーク・ジェイコブス氏やソフィア・コッポラ氏も訪れていて、とても熱く拍手をしていたことが印象的」と、NYジャーナリストの森さんの証言も。

【COACH】ヘリテージを若者らしいミックス感覚を通して解釈

COACH 2023-'24年秋冬コレクション
ショート丈のシアリングジャケットも、メタリックなシルバーを纏って刷新。Photo: Courtesy of COACH

パーク・アヴェニュー・アーモニーでショーを開催したCOACH。シアリングやデニムなど、ブランドを構築するコードを現代的な視点を通してアップデート。「レザーも黒ではなく、あえてブラウンレッドを採用したのが新鮮。メンズも自然にスカートを履く、ジェンダーフリーのコンセプトも自然に登場していましたね」と森さん。また、このシーズンから素材の端切れをアップサイクルしたアイテムも登場。役目を終えたレザーをフットウェアに再利用するなど、サステナブルなアイデアがそこここに。循環へのポジティブな姿勢にも共感しました。また、唇やリンゴなどキャッチーなモチーフを象ったバッグもチャーミング! ユースらしいミックス感覚を織り交ぜながら、ヘリテージをアップデートしていたシーズンでした。

【TORY BURCH】ミニマルな要素で、モダンな女性像を表現

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色合わせもコンテンポラリーなルック。Photo: Courtesy of TORY BURCH

今シーズン表現されたのは、不完全な美しさ。彫刻的なシルエットを描くテーラードジャケットなど、エレガンスな要素はありながら、あえて生成り素材を用いたり、折れたヒールや安全ピンなどの意匠を採用したり……と未完成だからこその美学に焦点を当てていました。アナ スイやアレキサンダー ワンのショーでも見られたランジェリードレスのような“inside out”もキーワードかもしれません。ありのままの自分でいることから生まれる自信、というデザイナーの言葉も今のムードを体現しているように思います。森さんも「女性の強さを描き、モダンに仕上がっていました」とコメント。

【THOM BROWNE】ファンタジックな世界に飛び込んで

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ロングコートも大胆なパワーショルダーに。Photo: Courtesy of THOM BROWNE

テーマはサン=テグジュペリの物語「星の王子さま」。不朽の名作として愛される物語を、ショーの着想に落とし込みました。シグネチャーのテーラードスタイルを基軸に、きらきら輝くビジューや刺しゅう、構築的なドレス、プラットフォームのシューズを。会場のセットにも不時着した飛行機が出現し、あの世界がそのまま眼前に立ち上がってくるよう。ファンタジックな表現に深く魅了されました。森さんも「このテーマの設定には、今の世の中に欠けているものを追求したい、という背景があったのではと思います。世界からの隔絶や分断を背景に、僕たちは一人じゃないんだ、というメッセージを伝えているようにも感じました。独自路線を貫くように見えて、世界の実情としっかりリンクしているのはさすがですね」と絶賛。

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ゲストにも配られたチョコレート Photo: Teruyo Mori

会場での裏話としては、ショーが行われたのは2月14日のバレンタインデーのこと。フィナーレでは、トム・ブラウン氏がハートのチョコレートが収められた赤い箱を携えて登場。彼のパートナーであり、METの服飾研究所のキュレーターのアンドリュー・ボルトン氏に捧げて、ショーはお開きに……いうハートフルな展開も。

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