【2023-24年 秋冬コレクション】10人のファッションプロが選ぶ、注目トピックス

注目トピックスが満載の秋冬。ハイライトからそれぞれ気になった小ネタまで、モードインサイダーたちの視点を通して深掘り

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ジャーナリスト 市川暁子/ライター・エディター 大杉真心/ライター 栗山愛以/ジャーナリスト マスイユウ/ジャーナリスト 森 光世/SPUR編集長 並木伸子/SPUR副編集長 衣笠なゆた/SPUR編集 S・H・R

世界観を拡張するコラボレーション

異なる分野のアーティストや企業などと協働した演出にも、ブランドの個性が光った。ルイ・ヴィトンは「特殊な3D音響のセットが話題に。まるで街中に佇んでいるかのようにさまざまな方角から音が」(並木)。
ディーゼルの会場には20万個のDurexのコンドームが積まれ「強烈なインパクト! ショー後には世界の各店舗で配られたとのこと」(大杉さん)。
ADEAM ICHIのランウェイではミュージシャンのMIYAVIが圧巻のギター演奏を披露。「モデルとして歩く姿も印象的でした」(編集S)

LOUIS VUITTON ✕ Philippe Parreno

LOUIS VUITTON ✕ Philippe Parreno

"フレンチ・スタイル"を再解釈したテーマに合わせて、仏現代アーティストのフィリップ・パレーノが音響をデザイン。石畳を歩くヒールの足音や車の走行音がランウェイに臨場感を加えた

DIESEL ✕ Durex

DIESEL ✕ Durex

ディーゼルの"セックス・ポジティブ"な姿勢を象徴するコンドームの山が圧倒的。ルックではより多様に進化したデニム使いが目を引く

ADEAM ICHI ✕ MIYAVI

ADEAM ICHI ✕ MIYAVI

アディアムのショーを通してアディアム イチもランウェイデビュー。グランジやパンクロックに着想を得た装いの世界観とぴったりマッチ

NOIR KEI NINOMIYA ✕ TAKURO KUWATA

NOIR KEI NINOMIYA ✕ TAKURO KUWATA

現代陶芸の境界線で活躍する桑田卓郎作のヘッドピース。「発泡スチロールを融解したという表現方法に驚きました」(市川さん)

展示会で震えたブランド

間近でアイテムに触れるからこその発見や驚きが。スキャパレリは今季、レディトゥウェアをお披露目。「ブランドらしいアイデアを、リアルに落とし込んだコマーシャルアイテムも豊作でした。シュールな意匠のボタンがついたカーディガンや、大ぶりなコスチュームジュエリーが狙いめ」(並木)。
逆にウェアラブルに見えながらも、卓越したメゾンの技を改めて実感できたのが、ディオール。「シワ加工やビーズの装飾、花の刺しゅうなど、クチュールテクニックが圧巻。力のある服に感動しました」(並木)

SCHIAPARELLI

SCHIAPARELLI

スキャパレリは、オートクチュールの世界観をプレタポルテに。ハリのある素材のブラウスは、立体的な刺しゅうにも惚れぼれ

DIOR

DIOR

"旅"をテーマに、ボストンバッグのような新作も。「シワ加工は、トランクに服を詰め込んで旅するストーリーに基づく。メタリックな糸を採用し、柄の輪郭がぼやけて絵画のようなムードでした」(並木)

マーク ジェイコブス"3分のショー"の裏側

6月26日夜に開催されたランウェイの舞台は、ニューヨーク公共図書館。「120人ほどのゲストが期待感に包まれる中、モデルが足早に次々と登場。通常はひとりずつ歩くところ、一気に現れ、40mほどの回廊を一往復してフィニッシュ! 訪れた人々もしばし唖然としました」(森さん)。衝撃的な演出の一方で、服は「クレア・マッカーデルのロンパースをモダンにアレンジしたり、コルセット・ビスチェにブルマを合わせたり。若々しさとマークらしいグランジのミックスが素敵でした。特にドレープやギャザーといったクチュールテクニックは秀逸!」(森さん)。ショーノートはChatGPTで生成するなど、加速する社会やテクノロジーに服づくりを通して向き合ったシーズンに。

MARC JACOBS

MARC JACOBS

「今回も右腕と名高いアラステア・マッキムのスタイリングがすごくきいていた印象でした。ポインテッドシューズに学生風ソックスの組み合わせも新鮮」(森さん)。80年代調のムードも印象的。ミニドレスの反復も、彼からの個性への疑問の投げかけだという

やっぱり気になる靴&バッグ

"ウェアラブル"がキーワードとなった今季。リアルクローズをモダンにアップデートする、キャッチーな小物も見逃せない。「服はシック、それが退屈にならないよう小物にトレンド感やインパクトを担わせるのは、日常的に取り入れやすいバランス。争奪戦必至の靴やバッグをいくつも見かけました」(並木)。
バッグはアクセサリーのようなものからビッグサイズまで、靴もブーツやパンプスなどバリエーション豊富な顔ぶれに。「イットな存在感のものが多く、それでいて画一的でない。小物を選ぶのが楽しい季節の到来です!」(編集H)

CHANEL

CHANEL

「カメリアのコサージュがあしらわれたスリングバックのシューズ! 説明不要の愛らしさ、ときめかずにはいられないデザインです」(並木)

GIORGIO ARMANI

GIORGIO ARMANI

「アイコニックなラ プリマの新作は柔らかなレザーが最大の特徴。エレガントかつエフォートレスで365日使いたくなる!」(衣笠)

STELLA McCARTNEY

STELLA McCARTNEY

「この秋は"持つ"のではなく"抱える"バッグもトレンドとなる予感。チェーンがついたアイコニックなデザインも視線に映ります」(編集R)

MM6 MAISON MARGIELA

MM6 MAISON MARGIELA

「目を引くシルバーにひと目惚れ。一足あればシンプルなスタイリングもモードに昇華するので、着こなしのカンフル剤として手に入れたい!」(編集H)

CELINE

CELINE

「折り返しデザインのブーツは、さりげなくも差がつく一足。スエード×デニムも素敵で、ブーツインする着こなしにもトライしたい」(編集H)

HERMÉS

HERMÉS

「"バーキン"にハーネスをプラスした、エルメスならではのエスプリにしびれます。ショルダーストラップがついていて持ちやすいのも素晴らしい!」(栗山さん)

COACH

COACH

「今季のコーチはりんごなどプレイフルなフォルムのバッグが豊作。中でもシグネチャーパターンで表現したリップ型が心に残りました」(編集S)

スリークなヘアが描く、モダンウーマンの肖像

フラッフィーなヘアが多く提案されていた前シーズンから変わって、濡れた質感で仕上げたタイトなスタイルが主流に。「芯の強さとたおやかな魅力、どちらも感じるルックスは新しい時代を生きるモダンな女性像に重なります。肩肘張らず、でも力強く新しい時代を進むイメージ。実はカジュアルからエレガントまで幅広いスタイリングに似合うので、個人的にもマスターしたいです」(編集R)。
スリークといえど、無造作感を出したヘアからクリーンにまとめたものまでブランドごとに異なる提案をしていたのも興味深い。「一方でドライでナチュラルなヘアも目立っていましたが、デイリーにマネしやすいのはこちら。秋冬はクールなまとめ髪が街に増えそう」(編集S)

TOD'S

TOD'S

すっきりとしたオールバックヘアがグレー×ホワイトのスタイリングのクリーンな魅力をいっそう高める。ナチュラルなヘアメイクもマスキュリンな装いによく似合う

FENDI

FENDI

斜めに下ろしたバングスに透け感をつくり、無造作なムードも取り入れた。グロッシーな輝きが印象深いヘアが、淡いベージュのワントーンルックのアクセント

GIVENCHY

GIVENCHY

ストイックにブラック×オールバックヘアで。目もとも黒をきかせることでクールな世界観を構築

CHLOÉ

CHLOÉ

センターパートで分けたダウンスタイル。インパクトある配色のコートにはこんなミニマルなヘアでバランスを取るのが正解。毛流れを整えたアイブロウも相性抜群

DOLCE&GABBANA

DOLCE&GABBANA

センシュアルなトップスと相性のいい、コンパクトなシルエットに仕上げたボブヘア

注目の若手ブランドは"アップサイクル"がキーワード

モードインサイダーたちの注目は、環境に配慮した服づくりをする若手。"アップサイクル"で知られる DURAN LANTINK が、今シーズンよりパリでランウェイデビューした。「今までに比べ本格的な服づくりが見られた今季。リュックをアップサイクルしたボディスや、インパクト大のバルーンシルエットなど、アイデアに圧倒されました」(マスイさん)。
「気になったのは、 中国出身のデザイナーによるZIMO。毎回環境や文化、伝統など社会的な視点を服に落とし込んでいて、今季は"Hoarderism=ため込み"をテーマに、郷愁や愛着を感じさせるデッドストックやヴィンテージを再構築していました」(森さん)。
ロンドンのCONNER IVESもアップサイクルを強みにする気鋭デザイナー。「来場者もブランドの服を着ていて、さっそくコアなファンを増やしているようです」(大杉さん)

DURAN LANTINK

DURAN LANTINK

ヴィンテージのコートをデジタルテクノロジーで大きく膨らませた。砂時計型のシルエットが美しい

ZIMO

ZIMO

モデルが古着を一枚一枚重ね着し、その場でスタイルを完成させるプレゼンテーション

CONNER IVES

CONNER IVES

90年代の感覚を独自のセンスでアレンジし、リアルな提案をするCONNER IVES

ランウェイを盛り上げたのはレジェンドモデルたちのカムバック

過去に一世を風靡したトップモデルたちがランウェイに返り咲き、大きな話題に。長年のキャリアで培った堂々たるウォーキングでファッションウィークに華を添えた。「10代から60代まで。幅広い世代のモデルが登場するショーは、現代の考え方に即していて好感を持った人も多いはず。年齢に基づく固定観念や偏見、"エイジズム"にとらわれない強さや美しさを表現したいブランドが増えたことの表れでしょう」(大杉さん)。
「アナ スイのショーに登場したジェシカ・スタム。エレガントな大人になったけど、可愛さも残っていて……。客席にいたマーク・ジェイコブスが、大声でジェシカに掛け声をかけ拍手をし、彼女を盛り立てていたのもほほえましかったです」(森さん)

ANNA SUI

ANNA SUI

アナ スイのラストを飾ったジェシカ・スタム

SACAI

SACAI

アン・カトリーヌ・ラクロワは、クレージュやマリーン・セルにも登場

NINA RICCI

NINA RICCI

90年代、パンクな赤髪で人気を博したシビル・バック

CFCL

CFCL

60代のクリスティーナ・ド・コニンク

ショーの合間に立ち寄る! 各都市の絶品アドレス

NEW YORK

【2023-24年 秋冬コレクション】1の画像_27

ユニークなカクテルに出合えるホテルバー
「昨今ショーの開催が増えたウォール・ストリート界隈なら、デザインホテルThe Beekmanのバーへ。カクテルの名前にインパクトがあり、写真の手前がHayao Miyazaki、奥はBritish VOGUE。19世紀建造の重厚感ある空間の中、個性的なカクテルを味わう体験を!」(市川さん)

MILAN

MILAN

栄養補給はジェラートで
「ミラノ滞在中は、必ず毎日栄養補給の感覚でジェラートを食べるようにしています。常にマップに行きたい店を記録し、新規開拓もしていますが、定番はプラダグループ傘下のMarchesi 1824。見た目も可愛く、味も濃厚。写真は、シャンパンを使ったジェラートで有名なCerdini & Quenardel。こちらもとてもおいしかったのでぜひ」(大杉さん)

LONDON

LONDON

アクセスよしの本格派なタイ南部料理
「Plaza Khao Gaengはロンドン中心部の、センターポイントのおしゃれなフードコートに入っているタイ南部料理店。頻繁にタイにも行くのですが、ロンドンで本場に劣らない味に出合えるとは。定番の魚介のサワーカレーや豆の炒めものはマスト。辛いので心して食べて!」(マスイさん)

PARIS

PARIS

通い詰める変わり種のフォー
「ショーや展示会がマレ地区付近で終わった際に足を運ぶベトナム料理のDong Huong。長いコレクション期間中、手軽なフォーを食べる機会は多いのですが、ここのピーナッツを使った濃厚スープは唯一無二。気分を変えたくなると頼みます」(マスイさん)

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