タイはBLだけじゃない!? 今こそ注目したい【タイホラー】の良作3選をマニアがリコメンド!

タイのエンタメ作品といえば、“BL一強”のイメージが先行するけれど、実は“ホラー”もアツい! そこで今回は大のホラー好きである人間食べ食べカエル氏がリコメンドする、良作タイホラー3選をご紹介。ホラー好きはもちろん、これまでホラー作品に触れてこなかった人も、本作が新たな扉を開くきっかけになるかも?

【プロミス/戦慄の約束】今からでも遅くないから劇場公開希望! アジアを代表する傑作因果ホラー!!

ホラーマニアがおすすめするタイホラー映画『プロミス/戦慄の約束』
『プロミス/戦慄の約束』U-NEXT、Prime Video、Apple TV+などで視聴可能。

あまりの完成度の高さに圧倒されてしまった。これまで色々なタイホラーを観てきたが、これがいちばん好きだ。いや、タイ国内だけでなくワールドワイドで観ても上位に来る。
まずプロットからして素晴らしい。親の失業で絶望した仲良し少女ふたりがともに死のうと約束し、廃ビルで拳銃自殺を試みる。だが、先に死んだ片方の姿を見て死ぬのが怖くなり、ひとり逃げ出してしまったのが主人公。彼女が大人になって成功し、娘も成長したころ、死んだ少女が怨霊となって姿を現す。タイお得意の因果応報な展開だ。恨み、恨み、恨み!! これが嫌というほど描かれていて、とにかく怖くて物悲しい。少女同士の友情が娘を巻き込んで絶望の連鎖に発展する様は、あまりにも残酷だ。

ホラー描写も良い。劇中にほとんど幽霊の姿は映らない。見えるのはせいぜい2〜3シーンくらいで、それも一瞬かぼやけて小さく映るのみ。あとは物音や勝手に開くドア、数々のアイテムを使った間接的な演出で霊の存在を表現する。それと合わせて、娘役が見せる壮絶な取り憑かれ演技で恐怖を生み出す。とにかく本作の怖がらせ方はテクニカルだ。ジャンプスケアもあるが、タイミングとタメ、脅かす際に使う細かいアイテムなどを計算高く組み合わせていちばんビビるところで炸裂させるため、並みのホラーの数倍ビビらされる。緻密で勢いに溢れた作品だ。
映像の質も非常に高く、安っぽさは一切感じない。こんな素晴らしい映画があったのか……。タイホラーを代表する傑作。配信から消える前に鑑賞必須です!!

【フォービア 4つの恐怖】バリエーション豊かでどれも逸品。タイのヒットメーカーが集ったオムニバスホラー!

ホラーマニアがおすすめするタイホラー映画『フォービア 4つの恐怖』
『フォービア 4つの恐怖』U-NEXT、Prime Video、Apple TV+などで視聴可能。

本作は、4話構成のタイ産オムニバスホラーである。1話目は、交通事故で足を折り、ひとり孤独に部屋で過ごす女性の話。寂しさを紛らわせるために出会い系アプリで男性と仲良くなるが、そこから段々と怖い方向に。台詞はほぼ無く、文章のやり取りだけでドラマが進むチャレンジングな作り。後半のスケアパートも怖くて、伏線回収も見事。トップに相応しい良作だ。

2話目が最も好き。幽霊話の1話から打って変わって『ファイナル・デスティネーション』みたいな展開が炸裂する。いじめっ子が黒魔術で次々事故死! その死に方が本家並みに残酷でグロい! しかも短編だから、死ぬスピードも異常。衝撃のラストまで一瞬も目が離せない。
3話目は少しコミカル。バカ話で盛り上がる仲良し男子4人が怖い目に遭う内容で、見どころは本筋よりもバカ話の中身にある。監督が『心霊写真』のバンジョン・ピサンタナクーン監督なのだが、自分でその作品をいじりまくる。「心霊写真観たか? オチで幽霊が男の肩に乗ってるけど、あれはローズがジャックの肩に乗る『タイタニック』のパクリ!」「タイ映画は最低だ……」みたいなやり取りがあってマジで笑った。

ラストを飾るのは、飛行機内の怨霊話。タイお得意の恨みと因果応報からなる展開で、ユニークな幽霊の見せ方と心霊顔芸で楽しませる。これもあっさりはしているが悪くない。いずれの話もレベルが高く面白い。5話構成にパワーアップした続編とあわせておすすめだ。

【フェート/双生児】『女神の継承』の監督がキャリア初期に放った、荒々しくも小技の効いた秀作

ホラーマニアがおすすめするタイホラー映画『フェート/双生児』
『フェート/双生児』U-NEXT、Prime Video、JAIHOなどで視聴可能。

今、タイのホラー映画監督で最も日本で知名度があるのは、恐らくバンジョン・ピサンタナクーン監督だろう。タイホラーを代表する傑作『心霊写真』でヒットを飛ばし、ここ最近は韓国の鬼才ナ・ホンジンのプロデュースを受けて製作した『女神の継承』で話題を呼んだ気鋭のクリエイターである。本作は、彼がキャリア初期に手掛けた作品だ。

双生児をテーマにした物語。かつて結合双生児で、プロイという妹と文字通り繋がり一心同体だったピム。だが、ふたりの分離手術の影響でプロイが死んでしまう。それからしばらく経ち、大人になったピムの元に、かつて死んだプロイの怨霊が現れる。ジメジメとした画作りとライティングに加え、おぞましい恨みがそこかしこからにじみ出る、非常にアジアらしい内容となっている。心霊描写はジャンプスケアが中心で、ちょっと怖がらせるにしてはやり方が荒っぽいかなと思うが、それでも何箇所かビクッとなるシーンがある。
もちろん、ただ脅かすだけでなく、ピムがひとりで砂浜を歩いていたはずが振り返ると真横に沿うようにもうひとり分の足跡が残っていたりと、隣立つ双子を匂わせる静かな恐怖演出も堪能することができる。終盤ではアッと驚くツイストも炸裂し、ストーリー面でも十分に楽しませてくれる。

玉石混淆のタイホラー界の中でも、やっぱりこの監督は頭ひとつ抜きんでていると感じる。約90分でしっかり満足できる。新たなタイホラーを発掘したい人におすすめです。


【ホラードラマ ナビゲーター】
人間食べ食べカエル
あらゆるジャンルのホラー映画・ドラマを網羅する敏腕ライター。人が喰べられる作品に目がない。的確なコメントと面白いつぶやきがクセになる「X」アカウントは、@TABECHAUYOをチェック!