時代の流れの変化とともに、リアリティショーもラブコメも「多様性」がキーワード。人種、ジェンダーほか、現代社会が抱えるリアルな人間模様を、愛たっぷりに描く作品が台頭しています。そこで、海外ドラマ好きエディターが、NetflixとPrime Videoで、話題の作品をウォッチ&レビュー。
人種もジェンダーも異なる6人の独身男女がそれぞれ5度のブラインド・デートに挑戦する『5ファースト・デート』シーズン2、現代の黒人女性版“SATC”と称されるパワフルなガールズドラマ『ハーレム』シーズン1、ラテン系アメリカ人家族のロマンスを巧みに描いた『ウィズ・ラブ』の3作品をご紹介します。
どれもリアリティショーとラブコメの新潮流となりそうな傑作揃い。愛あり、笑いあり、涙もあり。パワフル&ハートフルな作品たちは、寒い冬の、心の温もりとなりそうですよ!
世の中のデート事情をリアルにお届け!/『5ファースト・デート』シーズン2
恋愛リアリティショーの新形態と申しますか、恋愛リアリティデートショーとしておすすめしたいのがこちら。新しい恋がしたいと考えている6人の独身男女が、5人と夜のブラインド・デートを試したあと、セカンド・デートに本命の(今後もつきあっていきたいと思う)1人を誘うという設定です。ブラインドデートの場所は5人とも同じシチュエーション。バーからはじまり、お酒を交えてのディナーに続き、気が合えば3軒目へ。といった段階を追って、会話も、打ち解け具合もディープになる(本性が出る)という流れ。もちろん、会話がはずまなかったり、思わぬ失態をしてしまうなどして、ディナーでお開き……となるケースもあります。シーズン1はNYが、2はニューオーリンズが舞台になります。ハイエンドで別世界感のあるNY編にくらべ、くだけていて、登場人物たちのやりとりにいい意味で人間味を感じるニューオーリンズ編のほうが、よりリアリティがあり楽しめました。
主人公と5人のデート相手が多様性に富んでいるのも本シリーズのみどころです。恋愛に奥手な人、離婚歴のある人、といった恋愛ステイタスも様々で、人種もジェンダーも多種多様。ゲイの主人公も登場しますし、バイセクシャルが主人公のときは、5人のデート相手が男女混合になるなど。人間はカテゴライズできるものではないと、つくづく考えさせられます。
主人公が誰を選ぶのか想像するなど、この作品の楽しみ方はいくつかあると思いますが、私にとっては大人のための、デートのハウツー番組でもありました(笑)。人のデートの様子って、普段、見ることができないじゃないですか。ですので、1人の主人公を通して、5人5様のデートスタイルを定点観測できるのは、気づきが大きい! 口説き方、次のステップへの誘い方、断るときの仕草や台詞などが、とても勉強になります(笑)。
趣味が合うからマッチするとは限らないし、見た目がタイプだから惹かれるわけでもない。恋愛って本当に不思議でわかりにくくて、面白い! また、主人公の心の声が一切入らず、5つのデートシーンを上手く編集でつないでひとつの物語に仕立てている演出もセンスよく、そのあたりもみどころです。
多様性に富むアメリカならではのリアリティショーだと思いましたが、日本編があっても面白いのかもしれません。ラブコメの名作にもひけをとらず、デートしたくなる! 恋愛したくなる!という気分にさせてくれる、ニュータイプのリアリティショーかもしれません。約30分尺でサクッと観られるのも高ポイントですよ。
STORY
ニューオーリンズ編、第3話「ディバ」(写真上)。アートに関心が高く性的指向にはオープンなディバ。デート相手と恋愛に関する価値観のズレからせっかくの夜が台なしになりそうで……。
エンパワメントされる、現代の黒人女性版“SATC”/『ハーレム』シーズン1
王道のラブコメも癒しの“観るサプリ”ですが、予定調和の進行に、お約束のキャラ設定といったパターンに陥りがち。ちょっと飽きたかも……と思うなか、話題作品との噂を耳にし観はじめたところ、ハマって観ているガールズドラマが、Prime Videoのオリジナル作品のこちら。例えるなら、現代の黒人女性版“SATC”でしょうか。“SATC”こと『セックス・アンド・ザ・シティ』に登場する4人のように、愛とか仕事とか夢とか友情とか、欲しいものや大事なものがぜんぶがごっちゃになりながらも、ポジティブに今をいきる、現代の黒人女性たちが主人公です。
“SATC” と同じNYを描いた作品なれど、舞台は黒人の多くが暮らすハーレム。人種問題、ジェンダー、社会問題にもふれ、且つ、そららの問題が恋愛や仕事にも影響を及ぼします。例えば、デートアプリ会社CEOのタイは、自分と同じ有色人種のクイア向けのマッチングアプリ開発を進めますが、一度恋仲になった白人のビジネス誌の記者に、「それって白人の使用を禁ずるということ。裏を返すと、白人に対する差別になるのでは?」といった主旨の質問をされ、たじろぎ、自ら有色人種であることをさげすむような言い回しをしそうになるなど。登場人物の4人にとって、人種やジェンダーにまつわるあれこれが、日常的に当たり前のように起こり、ときにハードルとなります。ドラマだから過大表現もあるかと思いますが、現代社会が抱える問題をシリアスに視聴者に説いたりするのでもなく、ときに笑いも交えながら、コミカルにリアルに描くバランス感覚が見事。
個人的なお気に入りポイントは、テンポとリズム。約30分尺で小気味よく進むストーリーに、劇伴がH.E.R. とノリがいいのもよし。コロコロ変わる4人の衣装やヘアスタイルにメイクと、視覚的にも楽しめますし、観た後は、なんだか元気になれる。私にとって、明日にむけての活力になる“夜ドラ”でした。また、ウーピー・ゴールドバーグも要となる人物で出演。さすがの演技力で、作品全体を引き締めてくれていて、そこもポイント。2月3日からはアメリカでのシーズン2の配信が決定。日本での配信が待ちきれません。
STORY
SNSを駆使して人気の大学講師、デートの相手をとっかえひっかえのテック企業家、なかなか売れっ子になれない歌手、恋に恋して男運のないファッションデザイナー。ハーレムに住む4人の女性が求めるのは、“真実の愛”だがが……。
愛あり、笑いあり、涙もあり。ラテン系アメリカ人家族のロマンス群像劇コメディ/『ウィズ・ラブ』シーズン1
ニュータイプのラブコメとして、もうひと作品、激推ししたいのが、ポートランドに住むラテン系アメリカ人の一家ディアス家の人びとの恋愛模様を描いた、こちらのドラマ。長女のリリー、長男でリリーの弟でゲイのホルヘ(ジュニア)、仲はいいけれどトキメキを無くした父ホルヘと母ベアトリス、祖母のマルタに祖父のルイス、叔母のグラディスらが、それぞれのまわりの人を巻き込んで、一家、いや、一族総出で繰り広げるロマンス群像劇コメディです。
ラテン系のノリよろしく、友達の友達は友達……といった具合で、登場人物も雪だるま式に増え、しかも、意外なところで絡みあいます。ときに、3カップルの話が並行場面もあるのですが、ストレスなく自然と頭のなかに相関図ができあがっていくというスクリプトのうまさがみどころ。恋愛のみならず、友情、家族の問題もほどよくミックスされ、コメディタッチだけどハートフル。愛あり、笑いあり、涙ありで、めちゃくちゃ面白い!
物語は、全部で5話。登場人物たちの一年を、アメリカの記念日やイベントの日に起こったできごとを通して描く様もユニーク。それにあわせてタイトルも、第1話のクリスマスイブからはじまり、大晦日、バレンタインデー、独立記念日と続き、11月の死者の日となっています。
個人的な推しキャラは、オーディション番組『アメリカズ・ネクスト・トップ・モデル』において、史上初のトランスジェンダーモデルとして登場し話題になったアイシス・キング(とっても美しい!)。ソルという医師役で登場し、恋人のトランスジェンダーの子どもと向き合うシーンは示唆に富むものがあります。
家族のことを何よりも大切に思い、愛情にあふれるラテン文化へのラブレターのような当作品。ラブコメ、ロマコメのエッセンスがあり、どこかぬくもりを感じる魅力的な作品ですよ。
STORY
ディアス家の長女リリーは、恋人に別れを告げ、家で開催されるクリスマスパーティ用のワインを買いにいったお店の店員に電話番号を渡す。ゲイの弟ホルヘがパーティに招待した恋人として会場に現れたのはその店員で……。
【海外ドラマ ナビゲーター】
エディターR
一日の終わりを、ワインとショコラとドラマで締めくくるのが愉悦のとき。“SATC”よりゴシップガール派。映像美と緻密な脚本ものが好物。最近は動画配信サービスのオリジナル作品のチェックに余念がない。作品でいうと、Netflix『ザ・クラウン』、Apple TV+ 『ザ・モーニングショー』などがお気に入り。ドラマに出てきた名台詞をコツコツとしたためていて、いつかどこかでアウトプットするのがささやかな目標。