実際にファッションの現場で働くクリエイターにインスピレーションを与える作品こそ、何かしらの本質を捉えているはず。東京とNYの間でふたりの鋭い意見が交わされた
From : NEW YORK
メイクアップアーティスト AYAKO
海外のファッション誌、広告キャンペーン、コレクションで活躍。2009年にクリエイティブ・ディレクターとしてADDICTIONを立ち上げる。
From : TOKYO
スタイリスト 広田 聡
米国LA生まれ。大学卒業後、伊藤忠商事勤務ののちスタイリストになることを決意。現在は雑誌、広告を中心に活動中。単純に美しいものが好き。
件名:グレイ・ガーデンズとファッション・アイコン
From AYAKO ▶ カルト的と言っていい『GREY GARDENS』。見終わったあとたくさんの疑問が浮かんでくる映画です。そして衝撃を受けるのです。伊『VOGUE』でスティーヴン・マイゼルがこの映画をテーマにファッション・ストーリーを撮るくらい、ファッショナブルでもある。この監督が『アイリス・アプフェル!』を40年後に撮ったことにも注目ですね。彼が公開前に亡くなったのは残念です。
From 広田 ▶『GREY GARDENS』はハイソサエティから脱落した親子ふたりをフィーチャーした、ちょっと見ていて悲しくもあり、ほのぼのとするドキュメントでした。育ちがよすぎたのでしょうか? 世間知らずの親子ふたり。娘のイーディは薄くなってしまった髪を隠すためにスカーフ、カーディガンなどを頭に巻いていたのがトレードマークでした。もしこれから作られるとしたら、ファッション・アイコンのイザベラ・ブロウのドキュメンタリーを作ってほしいです。彼女の装いは、誰もまねできるものではありませんでした。
From AYAKO ▶ 私もイザベラ・ブロウで知りたいことがたくさんあります。私が愛してやまないアレキサンダー・マックイーンの発見から、その後のふたりの自殺――。ダイアナ・ヴリーランド、アイリス・アプフェル、イザベラ・ブロウも共通して言えるのは、美しさは自分でクリエイトすること、もっと大事なのは自分のスタイルをもつこと。人種も年齢も関係なく、きれいでなくてもいい、それよりもっといいことがある。スタイルをもつことがどんなに素敵かをビジュアルで教えてくれたと思います。私にとってドキュメンタリーの好きなところは本人のメッセージがシーンひとつひとつ、話し方から鋭く伝わってくることです!
©amanaimages
『GREY GARDENS(原題)』
イーストハンプトンの屋敷で暮らす母娘の姿をメイズルス兄弟が捉えた、70年代のカルト・クラシック。