【NEW YORK ⇔TOKYO メール対談】世界で活躍するトップクリエイターふたりが、 影響を受けた作品は? Part2

実際にファッションの現場で働くクリエイターにインスピレーションを与える作品こそ、何かしらの本質を捉えているはず。東京とNYの間でふたりの鋭い意見が交わされた

From : NEW YORK
メイクアップアーティスト AYAKO
海外のファッション誌、広告キャンペーン、コレクションで活躍。2009年にクリエイティブ・ディレクターとしてADDICTIONを立ち上げる。

From : TOKYO
スタイリスト 広田 聡
米国LA生まれ。大学卒業後、伊藤忠商事勤務ののちスタイリストになることを決意。現在は雑誌、広告を中心に活動中。単純に美しいものが好き。

件名:天才カール・ラガーフェルドの素顔

From 広田 ▶ 『サイン・シャネル』で感じたのは、デザイナーがいくら優秀であっても、同じく優秀な周りのスタッフ、お針子さんたち、チームとしての信頼関係がないと成立しない、ということ。カールさまは自分のブランドもありながら、今ではシャネルの顔。やはり、ブランドと同じく、カール・ラガーフェルド=シャネルという、自分のブランディングがうまいと感じました。

From AYAKO ▶ 私が初めて彼と会ったのはクロエのデザイナーだった頃のメイクアップ・テストの現場でした。テストなのにシェフがいて、食事をサーブしてくれたその現場では、美しい花からキャンドルから、カール・ラガーフェルドの世界が広がっていたことを今でもよく覚えています。その後、日本の雑誌で出会い、マダム・バタフライのルックをモデルに施したことで腕を認めてもらい、また彼のミューズでもあるアマンダ・ハーレックとの出会いがそれを確実にしました。それからはシャネルやフェンディのキャンペーンや万里の長城でのショーのメイクアップも。彼に選ばれることは、私のアーティストとしてのキャリアが世界に通用することを意味するんだと思いました。
彼との仕事は緊張の連続、でも現場でのやさしさは誰よりも温かいものでもあるのです。必ず名前を呼んで、メイクアップが美しいと称賛してくれる。このうえない自信を与えてくれるのです。撮影が終わると手を握って「ありがとう」と、そんな人は彼以外にいません。
フェンディはよくローマで撮影したのですが、そのときは全員が同じホテルに宿泊し、必ず一緒に食事に行きました。その席で、彼は昔のいろいろな話をしてくれました。マレーネ・デートリッヒとの会話とか! それは本当に楽しくて、夜は延々と続くのでした。ドキュメンタリーで見せる飾らないシーンは彼そのものです。


©Jean Lauritano
『サイン・シャネル カール・ラガーフェルドのアトリエ』(’05)
オートクチュール・コレクションの準備を通じて、カールとスタッフの作業を緻密に観察。尊敬の念が湧く!

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