うつわも料理も、まずは仲間との出会いから
料理の食材は、誰がどんな思いで作っているか、産地に足を運んで自分の目で見ることを心がける野村さん。うつわへの姿勢も基本は同じだそう。「自分の料理を引き立ててくれるうつわを選ぶというより、志すことが通じ合う人と、それぞれの持ち場でもの作りをしながら対等につながり合えたら、という考えが根底にはあって。レストランで使ううつわを探すなかで出会った二階堂明弘さんをはじめ、先に作り手と会い、おつき合いが深まってオーダーで作っていただくことも多いです。店のうつわも自宅のうつわも、そうした人との出会いから導かれて手もとにやってきた品が多い気がします」
また、夫や母など価値観と美意識が合う人がすすめてくれたものも、素直に受け入れて使う。特に料理とうつわへの造詣が深い母の影響は大きく、下の写真で野村さんが桐箱から出している湯呑みも、母娘で訪れたこともある唐津の隆太窯のもの。嫁入り道具のひとつとして、五客揃いで贈ってくれたという。「『なかなか自分では揃えないけれど、1 セットあると便利よ』って。なんて気が利くの!と感動しました(笑)。うつわに対する私の感覚は自由なほうだと思うけれど、意識がきゅっと引き締まる和のうつわも、やっぱり好きです」
自然の木肌を生かしたボウル
沖縄の木工作家、藤本健さんのボウル。「工房を訪ねた際、ガジュマルの木だと聞いていかにも沖縄らしいなぁ、と感激して購入」
PROFILE
フードディレクター。フードクリエイティブチーム「eatrip」を主宰し、「restaurant eatrip」の運営やケータリングフードの演出などを手がける。著書に『eatlip gift』(マガジンハウス)。
www.babajiji.com/
photography:Yumiko Miyahama edit:Nao Ogawa
SPUR2016年6月号掲載
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骨董市で出会った染付の中皿は江戸時代の品。「料理をのせると思えば、こんな大胆な絵柄も楽しくて。青の色合いにも惹かれました」
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和食器の伝統的な文様である麦わら手の蓋もの。「奈良の骨董屋さんで五客揃いで買いました。保温性と、蓋を開ける喜びがあるうつわです」
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「restaurant eatrip」のメイン皿であり自宅でも愛用する二階堂明弘さんのうつわ。「料理が引き立てられ、浮かび上がります」
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サンフランシスコで出会ったアーティスト、ジェシカ・ホワイトからプレゼントされたプレートには、前菜やフルーツをのせて
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夫から贈られた大類信の鉢。「食器というより、美しいものをそばに置く、という意識で普段も部屋に飾っています」
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「LAの陶芸家、アダム・シルヴァーマンの作品で最初に手に入れたのがこのボウル。西海岸らしい色彩感覚に魅せられました」
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ガラス作家のケイレブ・シーモンには直接ワインクーラーをオーダーした。「透明のガラスはラベルがきれいに見えるし、花も映えます」
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「木の表情そのままというより、人の手が繊細に加わることで、木の美しさがより引き立って見えるのが、小山さんの作品の魅力」
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「来客用の大皿が足りないと感じて、実家の棚から持ってきました。和にとらわれずに柄ものが欲しいときに使えば、食卓が華やかに」