棚田と海の狭間に佇む一棟貸しの宿
北は海、南は棚田。秋には稲が輝き美しい光景が見られる。
直島に続きアートの島として注目される豊島(てしま)に、この春できたばかりのスペシャルな宿泊施設。1974年建築の民家を、ミナ ペルホネンのデザイナー、皆川明さんがディレクション、SIMPLICITYデザイナーの緒方慎一郎さんが設計し、一棟貸しの宿としてリノベーションした。ウミトタとは海と田という意味で、背後は棚田、目の前は海という素晴らしいロケーションを指し、他では見られないこの景観が最大の魅力になっている。棟内は古民家の味わいを生かしながらミナ ペルホネンの世界が広がる空間に。それが顕著に表れているのが"タンバリン"ファブリックを使った1階のソファコーナーと、2階のロフト。屋根裏部屋風のロフトには、目前の海から波が寄せてきたような絵のカーペットが敷かれ、床に座れば窓から海と空と山しか見えないよう工夫が。1階はリビング、ダイニング、琉球畳の寝室、壁をくりぬいたようなライブラリースペース、長期滞在のためのキッチンと、すべてが一続きの空間。棚田の風景が座って眺められるよう低い目線で設えられた窓、高い天井とで、外、中という隔たりが取り払われ、宿泊者自らが豊島の景色の一部に溶け込んでいる気持ちにさせる。
DATA
住所:香川県小豆郡土庄町豊島家浦423の2
0879-68-3386(9時〜18時)
https://www.umitota.jp/
皆川さん、魅力的なデスティネーションホテルとはどんな場所でしょう?
「"人の気配をあまり感じないけれど、必要なときに的確なサービスが準備されている"というのが理想ですね。華美じゃないけれど行き届いている。どんな宿泊施設でもそれが一番大切ではないでしょうか。個人的な好みでは、たとえばパリのル・パヴィヨン・ド・ラ・レーヌや、那須にあった二期倶楽部のような。ウミトタでは、朝、宿泊客が整っていなくても朝食を受け取れるよう壁に小さな扉をつけたり、読書中に目を上げると揺れる炎が見られるよう窓際にエタノール暖炉を作ったりと、小さなことでも思いついたアイデアを取り入れました」