旅のクライマックスはエストニアのDNAを体感できるミュージアム!
首都からバスで2時間半。名門大学があり学生の街として知られるタルトゥへ。エストニア国立博物館は 幅71.7m、高さ15.4m、奥行きは355.8mとそのスケールの大きさに驚く。まずはじっくりと外観を味わいたい
建築家・田根剛に聞いた記憶に残る博物館とは?
“建築家・田根剛が手がけたエストニア国立博物館を見ること”は、エストニアで必ずしたいことのひとつ。ミナ ペルホネン展覧会の会場ディレクションや2020年東京オリンピック招致に向けた新国立競技場のプラン“古墳スタジアム”などを手がけた、最も旬の建築家が、10 年の歳月をかけて完成させた大規模な博物館は見逃せない。
エストニア国立博物館は歴史と文化を保護し、伝えることを目的に1909年にタ ルトゥで設立。修復のための国際コンペティションを2006年に勝ち取ったのがDGT.。同年、日本人の田根剛、イタリア人のダン・ドレル、レバノン人のリナ・ゴットメの3名がパリで結成した設計事務所だった。田根は当時を振り返ってこう語る。
「エストニアの人々待望の国立博物館の建設をするにあたり、国際コンペの結果とはいえ外国人の建築家であり、無名で実績もない若手の僕らを採用した勇気は素晴らしいですよね。そして何よりもわれわれが提 案した『旧ソ連軍の元滑走路をナショナル・ ミュージアムに接続する』というアイデアを 受け入れ、自分たちの未来をそこに見いだ したという姿勢と国民性に感服します」
“メモリーフィールド”というコンセプト が博物館の随所に込められている。注目してほしいポイントを聞いた。
「まずは、外観を見たときの、永遠に延びていくような建築の大きさですね。数年前まで荒野であり、軍用地であった場所の持つ記憶が、ところどころから伝わってくるでしょう。その一方で、ガラスの外壁には民族衣装にも使われる伝統的模様で“希望”を示すシンボルを描きました。入り口 付近のパブリックスペースを散策してもらったり、建物後方から出た先にある軍用滑 走路の上を静かに歩くというのも、深い実感へとつながりますよ」
いまでは国民が一度は訪れたいと思う、 美しい博物館として評判だ。「建築は、人が集まる場所であることが大切だと思っています。そのためには、みながその建築を大事にし、人が集まるための工夫をし続けることが重要。そうして共有していく体験が、結果的に建築の記憶として残っていければ、うれしいです」
Eesti Rahva Muuseum(エストニア国立博物館)
1 民族衣装は膨大なアーカイブを収蔵。国内各地で緻密に収集された衣装の数々は見ごたえあり 2 タリンで開発されたSkypeから最古の土器まで、エストニアの民俗文化をさかのぼっていく常設展示 3 ガラスに施したエストニアの伝統的な模様。光を通し、繊細な表情に。未来的なモチーフにも映る 4 占領や戦争を経て、文化的 背景が複雑なエストニアを 言語から解きあかす構成 5 農民の文化を丁寧に、 スタイリッシュな仕立てで 展示している
DATA
Muuseumi tee 2, Tartu
736-3051
10時〜18時、〜20時(水) 月曜、祝日 定休
http://www.erm.ee
Eesti Loodusmuuseum(エストニア自然史博物館)
自然を大切に、身近に感じる心を養う
地元の子どもたちにも親しまれている小さな博物館。エストニアの人々は、幼い頃にここで自然のもつ力を学び、より身近な存在として感じとっていく。1 階は季節に合わせた企画展、2 階はエストニアの地質や化石、3 階は森と草原について。地域に生育する植物を押し花のように展示したりと、アイデア豊富な見せ方も見事。
6 古いものは1830年代から収集。ローカルな植物の標本が可愛い 7・8 1階のチケット受付がミュージアムショップ。小鳥の形の 笛(€ 5 )やきのこ柄のトートバッグ(€ 6 )も、どこかファニー 9 鉄で作られたみみずくがお出迎えする看板を探して 10 古代の魚を取り上げた企画展は9月30日まで。VRを使った 体験型の展示が面白い。子どもが楽しめる仕掛けがいっぱい
DATA
Lai 29a, Tallinn
6411-739
10時〜17時、〜19時(木) 月曜 定休( 9 〜5 月)、無休( 6 〜8 月)
https://www.loodusmuuseum.ee
Eesti Tarbekunsti-ja Disainimuuseum(エストニア工芸美術館)
フォークアートの歴史を膨大なアーカイブからひもとく
エストニアの20世紀から現代に至るまでの工芸とデザインを網羅した博物館。取材時は1階で現代美術、2階は陶磁器、ジュエリー、ガラス、家具、テキスタイル、レザーなどの工芸品を展示。この秋には3階をリニューアルし、新たな展示室が増える予定だ。クラフト好きにはたまらない、可愛いデザインがざくざく見つかる。
11 古い建物の構造のアーチと モダンアートがベストマッチ 12 小さな中庭を通って エントランスにたどり着く 13 洞窟の中のような構造をユニークに使った展示方法 14 テキスタイルには歴史的なシーンが描かれる 15 独立100周年を祝って旧ソ連時代の生活を模したインスタレーション作品
DATA
Lai 17, Tallinn
627-4600
11時〜18時 月・火曜、祝日 定休
http://www.etdm.ee