" 会社"ではなく、やりたいことを軸に考える
ゲーム会社でサウンドデザイナーとして働いている井上幹さんは、音楽好きにはおなじみ、“エクスペリメンタル・ソウルバンド”を掲げるWONKのベーシストでもある。「もともとゲームが好きでゲーム音楽を作る仕事がしたかったので、新卒で今の会社に入社しました。当時はWONKを結成するかしないかくらいのとき。他のメンバーもバンドだけでやっていこうって気はなかったから悩むことなく就職しましたね」
それから6年。ライブがある日は仕事を早めに抜けたり、アルバム制作期間中は深夜2、3時まで集中したり。ハードだが会社員生活も音楽活動もやりたいことがやれているので、とくに不満はないという。
「会社は人の要望にこたえる仕事なので、自分の作家性はいったん置いておく。お金をもらっているからこそ、ユーザーのためにベストを尽くしたいと思えます。一方、WONKは自分がいかにかっこいいベースを弾けるか、面白いものを作れるかに尽きますね」
本業は職人として、副業は表現者として。就業中にWONKで生かせそうなフレーズがひらめいたら?との問いに「さすがにメモを取って録音くらいはするかも」と笑う。お互いどうフィードバックし合っているのだろうか。
「かなり影響し合っています。WONKではベースのほかにミキシングやレコーディングのエンジニアもやってるんですけど、本業での楽曲制作の技術や知見を反映しています。会社の同僚が作った曲のベースを弾くこともありますし(笑)」
姿勢は違えど、やっていることはあまり変わらないという井上さん。働き方で大事だと思う点は?
「バランスですかね。『会社』という軸じゃなくて、自分がやってることともらえるもののバランスで見ていくといいかも。本当にやりたければ、会社員をしながらでもなんでもできる気がするんですよね。好きなタイミングで何かするには、今までやってきたことにとらわれすぎないことが、柔軟に生きるコツなんじゃないかと思います」
井上 幹/いのうえ かん
1990年、東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、ゲーム会社でサウンドデザイナーとして楽曲制作を行う。その傍ら4人組バンド「WONK」のベーシストとしても活動。現在、2年ぶりとなる新作EP「Moon Dance」が発売中。取材は自主レーベルEPISTROPHの事務所兼作業場で行なった。