会社の仕事でこぼれたものを絵や文章で還元
イラストエッセイ集『日本のヤバい女の子』が好評のはらだ有彩さん。平日はメーカーでテキスタイルデザイナーとして働いている。
「最初に就職した広告会社は激務でしたが、興味深い人に会える仕事でした。けれどせっかく面白い人に会えたのに忙しすぎてその面白さをどこにも還元できなかったんです。3年後に今の会社に転職したら、早く退社できるから夜が暇に。これは今までに会った人たちに垣間見せてもらった人生や聞いた話を還元するチャンスだと感じました。それでまず絵で表現するつもりでしたが、絵だけでは取りこぼすものもあると思い、エッセイも書こうと。たまたまウェブマガジンで連載してもいいという話が舞い込んだので、そこで書き始めたのが『日本のヤバい女の子』です」
会社の仕事は、聞いた話や調べ物をしていて気づいたことでも、商品化のためにそぎ落とさざるを得ないものがあり、すべてを生かすことができない。もっと掘り下げると面白いのにと思うことがどんどんたまり、それを絵にしたり文章にしたり。そうやってふたつの仕事をしていくことになった。
「創作のヒントが自分の中から湧いてくるタイプではないので、人と話したり何かを見たりして、両方の仕事につなげています。たとえば会社のお客さんと、どういうテキスタイルが希望かを話していると、イメージしている女性像がそれぞれ違っていて発見があるんです。そこに出てきた新しい女性像が、自分が今興味のある女性の未来の話とリンクしていることも。それを絵や文章の仕事にも生かしています」
会社からは競合でなければ副業をしていいと言われている。やりがいの差も感じていない。将来は絵や文章の仕事で還元するほうに力を入れたいけれど、今はその材料を会社の仕事で賄っているので、まだ先のことになりそう。
「『日本のヤバい女の子』では日本の昔話などを題材に、固定観念を解くような絵とエッセイを書きましたが、これからも古い規制を取り払い、未来を生きる人の助けになるような何かを作っていければいいと思っています」
はらだ有彩/はらだ ありさ
関西出身。テキスト、テキスタイル、イラストを作る"テキストレーター"。2018年4月に『日本のヤバい女の子』、2019年8月に続編『日本のヤバい女の子 静かなる抵抗』を刊行(柏書房)。 2014年からブランド「mon.you.moyo」を運営。「東京新聞ほっとweb」で「はらだ有彩の東京23話」を連載している。上の描きおろしイラストでは、ふたつの仕事が作用しながら回っている日々を表現。