"凪"を描くこと、演じること

主人公を演じる黒木華さんと、原作者のコナリミサトさん。意外な共通点を持つふたりがじっくり語り合う。

“凪にとっての幸せって何だろう?と考えながら描いています“。
ーーMisato Konari

リアリティたっぷりなこの作品はどこから生まれた?

コナリ 今日、黒木さんが凪の格好をしてくださっているのを拝見して、本当に感激してます!

黒木 ありがとうございます! 実はこれ、カツラじゃなくて地毛をくるくるにしてもらったんです。私も天然パーマで、学生のときはクセを一生懸命伸ばしたりしていたので、凪の気持ち、すっごいわかります!

コナリそうなんですか! 学生時代って、どうしてあんなにストレートな髪の毛に固執してたんでしょうね(笑)。

黒木 当時のはやりもあったと思うんですが、本当に必死でしたよね。コナリさんもクセ毛なんですか?

コナリはい。当時は縮毛矯正にひたすらお金を吸い取られていました。「モーニング娘。」の第1世代がはやっていた時代で、周りの友達もみんなストレートにしてましたね。

黒木 実際の体験や感覚も漫画に描かれているんですね。体験といえば、凪の節約術は面白いし、お料理がおいしそうですよね。私も料理好きなんですけど、パンのミミのチョコポッキーも、フライパンまるごとちぎりパン(3)も作ったことあります! 熟して赤くなったゴーヤも食べてみたいなぁ。

コナリ ゴーヤ(4)は実話です。冷蔵庫に入れっぱなしにしていたゴーヤが、ある日爆発してしまって。真っ赤な実が出てきたので何だこれ⁉ バケモノだ‼ と焦ったんですが、とあるブログに食べられると書いてあるのを見つけて食べてみました。私はもともと、節約工夫生活みたいなテーマの読み物などが好きで読んでいて、そのストックを使いながら描いている感じです。

3 凪が隣人のうららちゃんと焼いた簡単パン。ふわふわもっちり!と大興奮(4巻p.88)
4 ゴンのベランダで放置されていたゴーヤを見かねて凪が話しかけたシーン(1巻p.78)

 

ほっこり節約漫画のはずが……キャラに連れられ物語が動く

黒木 『凪のお暇』を描かれるきっかけって何かあったんですか?

コナリそれこそ最初は節約漫画というか、毎話、豆知識みたいなものが出てほっこり終わっていくはずだったんです。だけど、気づいたらどんどんこういう漫画になっていって……。

黒木 キャラが動いていくというアレですね! ご自分で描かれているのに、その世界がどんどん変わっていくっていうのはすごく不思議です。

コナリ キャラが何を考えているのかわからないときは、あぁこの子は他人なんだ、私じゃないんだって実感します。描いていてもすごく面白いんです。

黒木 一番わかりにくいのって?

コナリ 凪ですね。紙に登場人物の絵を描いて質問すると答えてくれるよ、と友人の漫画家さんに教えてもらったので、そんなバカな……と思いながらもこの間やってみたんです。

黒木 インタビューだ。面白いですね。

コナリ そうなんです。好きな食べ物を聞いてみたら、慎二はあったかい唐揚げ、ゴンは赤飯だって言うんだけど、凪だけは答えてくれないんですよ。だから、登場人物の中でも、特に凪に関しては、描きながらだんだん知っていく感じなんです。あぁこんなことを考えるんだ、こんなことするんだ、意外と腹黒いところもあるんだな、とか、その都度発見しながら描いています。

黒木 凪の腹黒さ、好きです。いい子なだけではなくて、すごく人間ぽいですよね。

コナリ ありがとうございます、うれしい……!

黒木 高橋一生さんもおっしゃってましたけど、みんなが見た目どおりなわけでもないし、逆に見た目どおりなときだってある。そういうリアルが描かれているんだな、と読むたび思います。漫画は今も連載中ですが、着地点って決められているんですか?

コナリ かっちりは決まっていないです。だけどやっぱり凪を幸せにしてあげたいので、彼女にとっての「幸せ」って何なんだろう、ということを最後まで考えながら描いていくと思います。今日、凪になった黒木さんにお会いできたことで、この子を絶対幸せにしたい! この笑顔を守りたい! という思いが、初めて強く芽生えました。

黒木 恐縮です、ドラマ頑張ります!

Misato Konari漫画家。埼玉県生まれ。2004年『CUTiE』(宝島社)で『ヘチマミルク』の連載をスタートしてデビュー。『ひとりで飲めるもん!』『宅飲み残念乙女ズ』(ともに芳文社)、『珈琲いかがでしょう』(マッグガーデン)など食を描いた作品も多い。

 

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