音楽バナシが止まらない

深い音楽愛にあふれたふたりが、今、気になるアーティストから近年の音楽の傾向まで2020年を振り返りつつ熱くトークセッション!

SNSの拡大が曲調にまで影響している

――普段の生活において、音楽はどんな位置づけにあるんでしょう?

臼田 常に流れていて、家ではこっちで鳴ってて彼も鳴らしてて、娘も鳴らしているみたいな状況がよくあります(笑)。

――そんなおふたりが今注目しているアーティストを、それぞれ教えてください。

臼田 最近だと、「GOOD GIRL」という番組に出演していたラッパー、イ・ヨンジ)。低めの声と骨太のラップがいいんです。18歳とは思えない落ち着きがあるんですが、ちゃめっ気もたっぷりで、本当に性格のいい飾らない人です。

レイジ 俺は藤井風)にすごくハマっています。歌もいい、見た目もカッコいい。レベルの違う才能が出た!という感じです。アルバムも素晴らしかったな。

臼田 私の2組目はENHYPEN)。BTSが所属するBig Hit Entertainmentが関わった、韓国のオーディション番組「I-LAND」からデビューしたグループです。デビュー曲から確かな実力を発揮していて、コンセプトごとにいろんな顔を見せてくれそうなので期待しています。

レイジ Nyege Nyege Tapes)というレーベルも面白い。アフリカのテクノなんですけど、BPMがものすごく速くて、どうやって作っているのかわからないし、衝撃でした。これをうまくDJでかけられるようになりたいなと思っています。特にシッソというアーティストがおすすめ。

臼田 STAYC)という新人グループもおすすめです。TWICEやBLACKPINKを手がけた方々が楽曲や振り付けを担当していて、デビュー前から話題でした。

レイジ あとは、徳島県出身の神仲アナン)という19歳のビートメイカーがいるんですが、伸びしろがありそうで楽しみにしています。彼が送ってくれたデモがカッコよくて。ピアノとかギターとか生楽器を基調にした、コズミック系ディスコトラップみたいな感じです。でも彼、ドクター・ドレーを知らないらしくて、それが「サブスク・ネイティブな感覚」だなと思いました。

――では2020年を振り返って、気になった音楽トレンドはありますか?

レイジ トラップやヒップホップをやっていた若者たちがハウスに移る傾向が見受けられます。みんなそろそろトラップに飽きてきているようですね。その一方で90年代初めの頃に主流だったようなサウンドも戻ってきていて、ブロックハンプトンやAGクラブ以降の、“ゆるおしゃれギーク・ヒップホップ”みたいなのが今一番カッコいいんじゃないかな。K-POPでは、ザ・ウィークエンドデュア・リパの流れをくんだ、80年代リバイバルが盛んですね。EVERGLOWTWICEもいい曲を発表しました。

――思えば2010年代を通じてインターネットが、音楽の聴き方から情報の入手方法まで多くの変化をもたらしましたよね。

レイジ プロモーション方法も変わったし、付随して曲作りも変わりました。TikTokで踊りやすい曲を意図的に作る人がいたり。とはいえめったに狙いどおりには売れないですが。それに音楽の残り方についてはよくない方向にいっているかな。飽きるのも早くて、長く聴かれる名曲が生まれにくくなっていると思います。

臼田 K-POPの流行はSNSの影響が大きくて、私も情報は主にSNSから得ているので恩恵は計り知れないですね。ファンがニュースをすぐに日本語に訳してアップしてくれるし、映像にも字幕をつけてくれて、オンタイムで情報が届く。各国のファンが無償でプロモーションしているから広がる文化なんですよね。

発信をしないからといって関心がないわけじゃない

――今年はコロナ禍を受けて、ストリーミングライブやバーチャルなクラブなど、新しい音楽の楽しみ方が登場しました。実際に体験してみてどうでしたか?

臼田 散財です(笑)。実際足を運ぶのであれば予定に左右されるし、チケットが簡単に買えるわけじゃないから行く回数が限られる。でもオンラインでいくらでも観られるとなると次々チケットを買っちゃう。もちろんナマが一番なんですが。

レイジ 一度ドライブインフェスにDJで出演したら、意外とよかったです。友達と行くのも楽しそうだし、BBQしてる人がいたり、レイヴっぽい雰囲気もあったりして、新しい形として定着するかも。

――他方で2020年は、国内外でミュージシャンが社会の動きに反応し、積極的に声を上げる年にもなりました。レイジさんも検察庁法改正案について、Twitterで意見を表明していましたね。

レイジ あのときはとにかく、経緯を耳にした瞬間に「ヤバくねえか?」と思ったのが大きいですね。今まで政治に無関心だったのに、すごく関心が高まったんです。以来庭で芝刈りをしながら国会中継を爆音で聞いていたり(笑)。周囲の人にも「レイジ君が発言しているのすごくいい」なんて言われてうれしかったし、あれ以来俺の周りでは、政治の話をするのがスタンダードになりました。

臼田 生活の中で、当たり前のようにそういう話ができるようになったのは、すごくいいことだと思います。東京都知事選挙のことも話題に上って、一緒に投票に行きました。私はSNSで発信しないタイプなんですが、発信しないから関心がないわけじゃないんです。

――ちなみに、今特に興味を抱いている社会問題といえば、なんでしょう?

臼田 すごくざっくりしているんですけど、地球の将来についてより深く考えるようになりました。具体的にできていることは少ないけど、たとえば環境活動家でもある小野りりあんちゃんのInstagramなどは、定期的に見ています。やっぱり子どもが生まれると、自分の未来だけがよければいいというわけにはいかないんだなと、考え方が変わりました。

――最後に、おふたりが音楽のパワーを実感するのは、どんなときですか?

レイジ 音楽はアートフォーマットとして強度が高いと思います。映画なら何度も観ない限り内容を完璧には再現できないけど、名曲は歌詞とメロディを思い浮かべれば、100%脳内で再現できる。簡単に再生できるし、何百年前の曲が、現代に生きている俺らに伝わっているのはすごいことですよね。

臼田 そこに通ずることですが、音楽は芸術的なものなのに、こんなに手軽に生活の中にある。朝起きた瞬間にスマホをピッと操作するだけで、少しうれしくなったり。自分の気分を変えてくれる芸術が身近にあることが、幸せだなと思うし、だから音楽がすごく好きなんでしょうね。

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1 ニュー・シングル「타협」(写真)のミュージック・ビデオを公開したばかりのイ・ヨンジ(이영지)は、現役の高校生の実力派ラッパー。
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2 中学時代にYouTubeでカバー曲を公開し注目を集め始めた藤井風。2020年にアルバム『HELP EVER HURT NEVER』(写真)を発表した。
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3 11月末にアルバム『BORDER:DAY ONE』(写真)にてデビューを果たしたENHYPEN。7人のメンバーから成る期待のボーイズグループだ。
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4 ウガンダを拠点に東アフリカ各地のテクノを発信するレーベルNyege Nyege Tapes。写真はタンザニア出身のSISSOのアルバム『MATESO』。
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5 2曲入りのシングル「Star To A Young Culture」(写真)でデビューした6人のガールズグループ。臼田さんのおすすめ曲は「SO BAD」。
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6 ビートメイカー神仲アナンは曲作りを始めてまだ間もない新鋭。写真は彼がサウンドクラウドに上げている曲「Cosmic Love(feat.Y’N)」。


Reiji Okamoto

1991年、東京都生まれ。中学の同級生で結成したロックバンド、OKAMOTO’Sのドラマー。DJとしても活動。最新作はEP『Welcome My Friend』。2021年1月からのドラマ「直ちゃんは小学三年生」(テレビ東京)のOP曲を担当。
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Asami Usuda
1984年、千葉県生まれ。女優としてテレビ、映画で活躍。ドラマ「家売るオンナ」(’16)や映画『愚行録』(’17)、『南瓜とマヨネーズ』(’17)など話題作に起用され、公開中の映画『私をくいとめて』にも出演している。

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