トラディショナルな韓紙作りにトライ!
チャン・ソンウさんは、陰陽紙をはじめとした韓紙を昔ながらの技法で作る職人。質のいい楮と豊富な水源で有名な京畿道・加平郡で、工房チャンジバンを運営しながら130年以上にわたる伝統を守っている。韓紙は日本の和紙作りと工程は同じ。だが、ソンウさんの作る陰陽紙は、2枚の紙を漉き合わせて1枚にするという工程がプラスされる。作業台に立ち、紙漉きを体験する赤楚さん。「木枠を回して、せーので簀桁からはがすときが一番わくわくしますね。方向を変えて重ねる理由は何ですか?」との質問に、「互いのまばらな部分を補い合うことで、さらに丈夫で長持ちする紙に仕上がるんです」とソンウさん。
陰陽紙はその耐久性と独特な風合いで、朝鮮時代に王宮や寺院などで広く使われた。日本とのつながりも深く、豊臣秀吉の時代に技術が伝わって、四国地方の泉貨紙に影響を与えたともいわれている。ソンウさんは陰陽紙の深い歴史と素晴らしさを紹介する一方、作り手の立場から本音も語ってくれた。
「韓紙産業は難しい局面に差し掛かっています。作業の大変さが身にこたえる日もあります。そんなときは、体に染みついたリズムに身をゆだねてみる。すると紙も不思議と思い通りに仕上がるんです。質のいい紙をお客さんに届けたいという思いのみです」
加平の工房に続いて訪れたのは、ソウル市内・仁寺洞にある専門店。書芸はもちろんのこと、国内外のアーティストが創作の材料を求めて訪れる。スタッフの方いわく「薄くて軽いものはお子さんの折り紙用や、オリジナルのブックカバー作りにと買っていかれます。厚みのある韓紙で名刺を手作りしたいというお客さんも。部屋のインテリアの用途で買う方も多いですね」とのこと。赤楚さんも「額に入れて壁に掛けるだけでも雰囲気が出ますよね」といろいろな紙を広げながら、色みや質感をチェックしていた。