男の子たちの夏の終わり。『グッバイ・サマー』



どんなに暑いのが嫌いでも、夏の終わりは不思議にさみしくなります。そんな気分にぴったりの映画が、タイトルもぴったりなミシェル・ゴンドリー監督作『グッバイ・サマー』。ダニエルとテオ、14歳の二人がキテレツな車をホームメイドで作り上げ、夏休みの旅に出るお話なのですが、男の子がクリエイティヴになるのがどういうことなのか、そのまま伝わってくるよう。学校でも家でも悩みは尽きず、好きな女の子ともうまくいかず、でも友だちと話したり遊んだりするうちに盛り上がってアイデアが湧いてきて、どんなに無茶なことでもやっちゃう! 大人からすると「馬鹿だなー」と思ってしまうところに創造と想像の源があるのです。

ミシェル・ゴンドリー自身、変なアイデアや手作り感のある映像を発明することで有名な人。彼の子ども時代の思い出を語るこの映画で、そのルーツを感じることができます。ちなみにミシェルは『僕らのミライへ逆回転』(08)で、「有名な映画をホームビデオで再現しちゃう」というアイデアを提唱したのですが、それが去年、アメリカのティーン映画『ぼくとアールと彼女のさよなら』に受け継がれていたのにも感動しました。映画オタク少年コンビが作るムービーはくだらないけどおかしくて、それが重病の女の子の気持ちを一時でもまぎらわせるのです。涙!

もう一つ、この夏の男の子のドラマと言えば、海外でカルトヒットした『ストレンジャー・シングス 未知の世界』。Netflixオリジナルのホラーシリーズです。80年代の大ヒット映画『E.T.』や『グーニーズ』を下敷きにしているだけに、キッズのキャラクターと活躍がいちばんの見どころ。そこに大人やティーンのストーリーラインとしてホラーやミステリ、ロマンスの要素が絡んでくるのです。それにしてもこの年頃の男の子たちの話に女の子が登場すると、まるで「別の生きもの」のようにコミュニティを揺るがすことが多いのですが、『ストレンジャー・シングス』では完璧、異星人扱いでした。ちょっと笑えますが、それって男性の実感でもあるんだろうな。『ストレンジャー・シングス』のクリエーターは双子のダファー兄弟です。




『グッバイ・サマー』
監督・脚本/ミシェル・ゴンドリー
出演/アンジュ・ダルジャン、テオフィル・バケ、オドレイ・トトゥ
9月10日より、YEBISU GARDEN CINEMA、新宿シネマカリテ他、全国ロードショー
(C) Partizan Films- Studiocanal 2015



『ぼくとアールと彼女のさよなら』
監督/アルフォンソ・ゴメス=レホン
出演/トーマス・マン、オリヴィア・クック、RJ・サイラー
DVDリリース中



『ストレンジャー・シングス 未知の世界』
クリエイター/ザ・ダファー・ブラザーズ
出演/フィン・ヴォルフハルト、ミリー・ブラウン、ウィノナ・ライダー
Netflixで配信中

映画ライター 萩原麻理プロフィール画像
映画ライター 萩原麻理

本誌で映画のレビューを手がける。ライター、エディター、翻訳もこなす。趣味は散歩と、猫と遊ぶこと、フットボールを見ること。

 

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