9月21日にNetflixで世界同時配信されるドラマ、『マニアック』を一足先に観ることができました。全10話のシリーズですが、見終わるとすぐ見返したくなるような内容。というのもなんと、SFなのかと思っていたら、毎回ジャンルが変わったりするのです! そのへん戸惑わないためにも、5つほどガイドとなるポイントを挙げてみました。
1. 最初はちょっと忍耐が必要――いきなり始まるのが、それぞれ家族と心に問題を抱えるアニー(エマ・ストーン)とオーウェン(ジョナ・ヒル)の暗めな日常。どうやら舞台はレトロ・フューチャーなNYのようです。奇妙なガジェットや広告に溢れた町に気を取られていると、アニーとオーウェンが大企業の臨床試験に加わり、さらに変な世界に足を踏み入れるのについていけなくなる。最初の2、3話は混乱するかも。でも、そのリズムに一旦乗れば、次の展開が待ち遠しくなるはず。
2. エマ・ストーンとジョナ・ヒルの七変化――二人が参加するのは「人の心を解決する」薬の臨床試験。それを飲むと参加者は夢のような、頭の中のファンタジーに没入します。ある夢ではアニーとオーウェンは80年代のダサめ髪型の夫婦。あるときにはギャング映画や『ロード・オブ・ザ・リング』のような世界にも紛れ込みます。これが不穏だったり、笑えたり、毎回趣向が違う。同じキャラがいろんな物語を演じるのは、『クラウドアトラス』(2012)を思い出させます。
3. 日本のディテールが気になる――一方、臨床試験を行なっているのは日本の大企業。ソノヤ・ミズノ演じる科学者たちがピコピコ光る古風なマザー・コンピューターを扱っています。時折日本語で気合いを入れたり、変な標語や盆栽が出てきたりも。『犬ヶ島』(2018)に続いて、デフォルメされた「日本文化」がアクセントです。
4. キャリー・フクナガの挑戦――監督は日系アメリカ人のキャリー・フクナガ。『ジェーン・エア』(2011)で来日したときから野心的な人だと思いましたが、その後映画でもテレビでもジャンルを渡り歩き、同じような作品を作らないところがすごい。『TRUE DETECTIVE/二人の刑事』(2014)や『ビースト・オブ・ネーション』(2015)ではシリアスな鋭さを見せ、今回はブラックなコメディに挑戦。
5. 最後はグッとくる――というのも、アニーとオーウェンの心の問題は、大きな悲しみを抱えているから。その解決に迫る終盤は映画『エターナル・サンシャイン』(2004)のようで、とてもエモーショナルです。若い頃、『スーパーバッド 童貞ウォーズ』(2007)の共演で相性の良さを見せたエマとジョナもそれぞれ大人になり、男女の機微を演じる俳優になりました。彼らやフクナガ監督がこのシリーズのプロデューサーとして名を連ねているのにも、意欲を感じます。
Netflixオリジナルシリーズ『マニアック』
監督/キャリー・フクナガ
脚本/パトリック・ソマーヴィル
出演/エマ・ストーン、ジョナ・ヒル
9月21日より全世界同時オンラインストリーミング
本誌で映画のレビューを手がける。ライター、エディター、翻訳もこなす。趣味は散歩と、猫と遊ぶこと、フットボールを見ること。