2018年、忘れられない映画の女子キャラ5選

© 2018 Hereditary Film Productions, LLC
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2018年のまとめをしようかな、と公開作のリストを見ていて気づきました。今年はほんとに面白い女性キャラクターが多かったなあ、と。しかもみんな個性的なんですよね。ありがちなステレオタイプがひとりもいない。SPURの表紙にもなった『レディ・バード』のシアーシャ・ローナンや『アイ・トーニャ』のマーゴット・ロビーはその代表格ですが、ここでは本項で拾えなかった「心に残る女子キャラ」を5人、挙げてみたいと思います。

◆『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』のジャック・ブラック
なのに、筆頭にくるのがなぜジャック・ブラックなのか!? なぜならこの映画、ゲーム世界に取り込まれた4人の高校生がアバターになって大冒険、という話なので、セクシーなビッチ系女子が、ジュマンジ世界ではジャック・ブラックの体に入っているのです。すごいのはすんなりそれが納得できてしまうところ。彼が自意識強めの女の子に見えてくるのをぜひ体験してほしい! タイプの違う4人が放課後を過ごすことで理解しあう、という『ブレックファスト・クラブ』的設定なのに、ストーリーは徹底的に男女のタイプや外見を裏切っていく。それがハリウッド大作のデフォルトなのも心強い。



◆『パティ・ケイク$』のダニエル・マクドナルド
負け犬扱いされている主人公が、才能ひとつでのし上がっていく。そんな『ロッキー』や『8マイル』のようなど根性ものの主人公がパトリシアです。ダニエル・マクドナルド演じる彼女は強いというより、いつも強がっているような繊細さがあって、それが詩的なラップに表れる。で、ラップ・バトルにはガチで挑むのです。自分の体験やヒップホップ愛、ニュージャージーへの思いをパトリシアにこめたのはジェレミー・ジャスパー監督。娘、母、祖母の三世代のストーリーになっているのも「わかってるな」って感じです。


◆『若い女』のレティシア・ドッシュ
このフランス映画の主人公は31歳のポーラ。見はじめたときは「めんどくさそう」と思った彼女を、最後には愛していました。恋人に家から放り出され、仕事もなくパリの街を転々としながら、あちこちに迷惑をかける彼女。嘘もよくつくのですが、そんなジタバタが実は重要なんだ、ということがわかるのです。何もないところから自立するには、とにかく人と関わって、大事なものとそうじゃないものを見分けていかないといけない。意外なラストも清々しく、女性監督らしいと思いました。レオノール・セライユ監督以下、スタッフ全員が女性で作られた一作です。



◆『500ページの夢の束』のダコタ・ファニング
ダコタ演じるウェンディは『スタートレック』のオタク。そして自閉症を抱えています。自立支援のホームで暮らしながら、コツコツ書いた自分の脚本をコンテストに出すため、バスを乗り継いでLAを目指す彼女。その道中では、ウェンディのオタクぶりが他人と心を通わせる手段にもなります。しかもだんだん、彼女が普段表せない感情や言いたいことをスタートレックのキャラクターに投影していることがわかって、泣いてしまう。フィクションの力! 自分が編んだ色違いのセーターを日替わりで着たり、ブルーのカシオを愛用したりしているところも好き。愛犬ピートの行動にハラハラします。



◆『ヘレディタリー』のトニ・コレット
『RAW』『クワイエット・プレイス』『テルマ』など、女性キャラクターによる斬新なホラーが目立ったのも2018年。その真打が、めちゃくちゃイヤ~な気持ちになる『ヘレディタリー/継承』です。トニ・コレットは今年、多数の映画やドラマでまったく違う役を演じていましたが、本作では顔だけで怖さが伝わる。彼女が演じる母親は「家族」の恐ろしさを象徴してもいるので、役者根性が据わっていると思いました。しかも初長編となるアリ・アスター監督をエグゼクティブ・プロデューサーとしてサポート。今年いちばん尾を引いた映画かもしれません。

映画ライター 萩原麻理プロフィール画像
映画ライター 萩原麻理

本誌で映画のレビューを手がける。ライター、エディター、翻訳もこなす。趣味は散歩と、猫と遊ぶこと、フットボールを見ること。

 

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