2019年は、クレア・フォイのリスベットで始まる!

ニナ・ゴールドという大物キャスティング・ディレクターがいます。マイク・リー監督の誘いでイギリス映画界に入った彼女は、俳優を探し、見つけ、抜擢する名人。いまではドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』や『スター・ウォーズ』シリーズなど、世界的大舞台にイギリスの俳優を次々送り込んでいます。『博士と彼女のセオリー』(2014)にエディ・レッドメインを推したのも、Netflixシリーズ『ザ・クラウン』にクレア・フォイを抜擢したのも彼女だそう。もちろん、どちらも二人が大ブレイクした作品となりました。

私がニナ・ゴールドの記事を読んで驚いたのは、演劇学校を出たばかりのクレア・フォイに彼女が会ってから、BBCドラマ『ウルフ・ホール』に初めてキャスティングするまで、なんと7年もかかっていたこと。そのあいだニナは「ぴったりの役を見つけるまで待ってて」と言いつづけていたらしい。そして『ウルフ・ホール』のすぐ後、『ザ・クラウン』のエリザベス女王役に推薦。あの最高のハマり役がそんな長い時間をかけて実現したと思うと胸アツです。二人の女性の才能とヴィジョン!

そしていま、クレア・フォイはこのドラマで強く印象付けた「強く、思慮深い女性」というイメージに揺さぶりをかけています。まずは『ブレス しあわせの呼吸』(2017)や『ファースト・マン』で、男性主人公を支える良妻賢母像に「それだけじゃない」存在感をプラス。彼女の芯の強さが、夫の繊細さや内向的な性格を浮き彫りにするのです。さらに『アンセイン』では、気丈に振る舞う女性がストーカーに追い詰められ、暴れたりキレたりする姿を見せる。ただ精神病棟で患者扱いされても、「おかしいのはあんたの頭の中!」とストーカーに抵抗するところがカッコいい。

カッコいいと言えば、もうすぐ公開される『蜘蛛の巣を払う女』では、満を辞してイメージを裏切ってくれます。なにせ、ノオミ・ラパスとルーニー・マーラが演じたあのリスベット・サランデル役を引き継ぐのですから! 社会や男に虐待された女の怒りと悲しみ、そしてリベンジを体現するリスベットほど、クールでオリジナルなキャラクターは他にいない。今回、彼女は自分の過去と闘います。だからこそ弱さも見せる。黒髪にピアス、タトゥーといったリスベットの「鎧」のなかから、クレアらしさが見えてくるのが新鮮でした。そうそう、クレアからオリヴィア・コールマンに女王役がバトンタッチされた『ザ・クラウン』シーズン3も、2019年後半のお楽しみ。それまでがんばらなくちゃ!




『蜘蛛の巣を払う女』監督/フェデ・アルバレス
出演/クレア・フォイ、スヴェリル・グドナソン
20191月11日、全国ロードショー





『ファースト・マン』
監督/デイミアン・チャゼル
出演/ライアン・ゴズリング、クレア・フォイ
2019年2月8日、全国ロードショー




『アンセイン~狂気の真実~』
監督/スティーヴン・ソダーバーグ
クレア・フォイ、ジョシュア・レナード
配信中

映画ライター 萩原麻理プロフィール画像
映画ライター 萩原麻理

本誌で映画のレビューを手がける。ライター、エディター、翻訳もこなす。趣味は散歩と、猫と遊ぶこと、フットボールを見ること。

 

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