
2017年最初の記事に「楽しみ!」と書いた、『メリー・ポピンズ リターンズ』がついに公開されました。シャーマン兄弟の素晴らしい音楽も、泣かせるストーリーも、「ひと匙の魔法」も……64年の映画の美しさとスピリットを引き継ぎながら、ちゃんとアップデートされている。なかでもコスチュームがぐんと楽しくハッピーで、気分を上げてくれました。クラシックなものに斬新なエッジを吹き込むのは、さすがサンディ・パウエル。彼女はもうすぐ公開される『女王陛下のお気に入り』でも衣装を担当しています。
今回エミリー・ブラントが演じるメリー・ポピンズは、いつも鏡をのぞいているほどオシャレな人。彼女のアイコニックなアイテムと言えば傘と帽子、ウエストを絞ったコート、それにボウタイでしょうか。オリジナルの舞台はエドワード朝時代、この映画ではその少し後の30年代。でもシックなアイテム一つひとつに、いまでも着たくなるディテールがあります。肩にケープがついたコートは裏地がポップな水玉模様。タイやスカーフは必ず手袋と色がお揃いです。ボウタイブラウスもストライプでちょっと辛口に。
メリー・ポピンズの基本色はロイヤルブルーと濃い赤。エレガントではっきりしたコントラストが彼女らしさを表しています。一方、バンクス家の人々の基本色はグリーン。ベン・ウィショー演じるマイケル・バンクスは鮮やかな緑のカーディガン姿で、紳士風だった前のミスター・バンクスより可愛らしい。これは彼が、「大人になったバンクス家の子ども」だからかも。
というのも、乳母役のメリー・ポピンズは子どもたちの世話をしながら、前回と同じく、本当は大人たちをそっと助けている。悲しくてつらいとき、希望が見えないときに、想像力や童心という魔法を見せてくれるのです。これはどの時代でも心に届くメッセージ。冬の最後の買い物に、水玉模様の手袋が欲しくなっています。
『メリー・ポピンズ リターンズ』監督/ロブ・マーシャル
出演/エミリー・ブラント、リン=マニュエル・ミランダ、ベン・ウィショー、エミリー・モーティマー
全国上映中
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本誌で映画のレビューを手がける。ライター、エディター、翻訳もこなす。趣味は散歩と、猫と遊ぶこと、フットボールを見ること。