[vol.18] 誰とも比べられない存在感を持つ ティルダ・スウィントンの魅力とは

昔からアンジェリカ・ヒューストンやシガニー・ウィーバーなどのデカくて強い女優が好きだ。彼女たちが、大柄なのに繊細な演技をすると、ことのほか心に沁み入る気がしたものだ。ティルダ・スウィントンもまた180センチはあるデカい女優で、デレク・ジャーマン監督の『カラヴァッジオ』(‘86)でデビューして以来ずっと注目してきた。アメリカ女優のアンジェリカやシガニーのようなユーモアには欠けるが、ティルダのどこかアンドロジナスな魅力は唯一無二な存在感。ちょっとクセのある洋服もアート感のあるモードな雰囲気で着こなしてしまう。彼女は今55歳だが、あのマスカラのない目と最低限のメイクで洋服に負けずに十分に持ってしまう天然の美しさは、かなり特殊だ。

『胸騒ぎのシチリア』(11/19日本公開)でティルダはロック歌手に扮していているのだが、私は彼女のバカンスファッションに見とれてしまった。シンプルなシャツドレスやTシャツをすとんと着ただけで、これほど絵になる女優がいるだろうか。いや、ティルダの場合、洋服がシンプルであればあるほど彼女の彫刻然とした気高い美が際立ってくるのだ。作中、彼女はラフ・シモンズがティルダのためにデザインした2着の衣装を着用している。そのうちの1着がイラストで描いた白のジャンプスーツ。パンツ部分がたっぷりとした幅広で、背中は大きく開いている。ダイナミックだが同時にエレガントでセクシーなルックは、ティルダの個性に合わせて計算し尽くされた秀逸なデザインだ。夜の祭りに繰り出すこの衣装のティルダは、一見の価値ありだ。

もう1本、マーベル・スタジオの最新作『ドクター・ストレンジ』(20171/27 日本公開)で、天才外科医にして魔術師のドクター・ストレンジのメンター(指導者)役に扮したティルダは、なんと丸ボーズ。それがねー、やっぱり違和感ないのよね。コスチューム系、魔女系などなど、普通の人間から遠ざかるほどに、独自性がひときわ輝いて見える貴重な存在だ。

イラストレーター&エッセイスト 石川三千花プロフィール画像
イラストレーター&エッセイスト 石川三千花

映画、ファッションを独自の視点からイラスト+エッセイで斬る!著書に『石川三千花の勝手にシネマ』、『勝手にオスカー』など。

https://twitter.com/michikaishikawa

 

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