[vol.50] ほとんどが黒ドレスの授賞式で、派手なプリントドレスを着たフランシス・マクドーマンドという生き方

目下、映画のショーレースで、主演女優賞受賞の独走状態のフランシス・マクドーマンド60歳。彼女が主演した『スリー・ビルボード』は、英国アカデミー賞でも主演女優賞を含む最多5部門で受賞した。思わず注目してしまったのは、マクドーマンドが着ていたその日のドレス。まるでゴールデン・グローブ賞授賞式の再現のように、差別やセクハラの撲滅キャンペーンに賛同する女優たちが黒いドレスを着用する中、いつもは地味すぎるほどのドレスのマクドーマンドがヴァレンティノの派手なプリントドレスで現れたのだ!

いや〜、待ってました!こういうことをしでかしてくれる大物を。もちろん黒ドレスでセクハラ撲滅の意思を集団で表す効果や意義はあるが、みんなが同じ方法である必要も強制もない。その意思の表現は人それぞれ。メリル・ストリープが黒ドレスならば、とか、他の女優がみんな黒ドレスならば私も、みたいな上っ面な黒ドレスよりも、どんなドレスであれ、差別やセクハラには抗議する意思のある色ドレスの方が本筋、とわたしは思う。マクドーマンドのこんなに派手なドレス姿を見るのは滅多にないことなので、痛快!壇上でスピーチする彼女が、分かっているわよ的な表情で「マーティン(『スリー・ビルボード』の監督)が、わたしのコンプライアンスはちょっと問題があるっていうのよ」と自分のドレスを指してタメを作る。ドッとうける会場。このユーモアね。続けて彼女は「でも、私はこの会場にいる黒ドレスの女性同志と完全に連帯してます」。誰が彼女のドレスを批判するだろう。

きたるアカデミー賞で、2度目のオスカーを受賞するのはほぼ確実のマクドーマンド。きれいに撮られたい、などというケチな女優根性が皆無で、常に信頼のおけるプロの仕事をみせてきた本物の女優。彼女が昔「みんなが整形すれば、おばあさんの役は私ひとり占めだわ」と笑っていたのを思い出した。

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イラストレーター&エッセイスト 石川三千花

映画、ファッションを独自の視点からイラスト+エッセイで斬る!著書に『石川三千花の勝手にシネマ』、『勝手にオスカー』など。

https://twitter.com/michikaishikawa

 

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