[vol.73] 『スパイダーマン:スパイダーバース』と『アリータ:バトル・エンジェル』で、デカ目キャラのパワーを思い知れ!

日本生まれのデカ目キャラが活躍する映画『スパイダーマン:スパイダーバース』と『アリータ:バトル・エンジェル』を続けて観て、マンガやアニメーションにおける現実離れしたでっかい瞳の効用について考えてみた。だってお化粧とかしない限り、日本人の目はどちらかというと細目の方が多いと思うのだが、キャラ作りにおいては圧倒的にデカ目が主流。小さい目やつり目なんかは、脇役やへたしたら悪役に追いやられる。実際には、東洋の涼やかさをたたえた切れ長な目が魅力的に見える人は大勢いるのにね。

さて、さまざまなスパイダーマンが結集して闇社会の悪と闘うアニメ『スパイダーマン:スパイダーバース』だが、いきなり秋葉原あたりに氾濫しているデカ目の女子キャラが出てきたので驚いた。ペニー・パーカーというその小柄な女の子は、日本のJKみたいな制服っぽいかっこうをしているが、スパイダースーツを操って闘うスパイダーマンのひとりなのだった!いや〜、こんなドメジャー作品のなかで、日本のデカ目な萌えキャラが世界のスパイダーマンのお仲間とは!しかも、なんというか彼女のキャラデザインがアメコミ作品の中で観ると特殊過ぎて、かえって面白いじゃないですか。デカ目でうるうるっとかわいさをアピール。小さな女の子なのに、めっぽう強い。この意外性が効いてるのだ。

それから『アリータ:バトルエンジェル』の方も、サイボーグの少女戦士アリータの目がやはり不自然なまでにデカい。原作のSFコミック、木城ゆきとによる『銃夢』(ガンムと読ませるセンス!)に敬意を払い、アリータの目はマンガと同じようにデカくなった。こちらは実際の女優のパフォーマンス・チャプターの映像を元にCGエフェクトで再現するという見た目にリアルな姿ゆえ、最初にアリータを観たときには「おおっ、目デカっ!」となる訳です。だけどこの二階堂ふみに似たアリータが、サイボーグの身でありながら恋をしたり、恩人の医師と親子のような関係を築くときに、彼女のデカ目がその胸の内を訴えるのだ。そして、自分が過去に最強兵器であったことを思い出すや、そのデカ目は戦闘に燃え最強のパワーを発揮する。アリータの感情表現は、デカ目が担っているのだ。デカ目は、見ための派手さや華やかさを演出できるが、感情を読ませやすい利点もあるのだった。

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イラストレーター&エッセイスト 石川三千花

映画、ファッションを独自の視点からイラスト+エッセイで斬る!著書に『石川三千花の勝手にシネマ』、『勝手にオスカー』など。

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