[vol.78] 野心ギンギラの『氷の微笑』も、今は昔。61歳のシャロン・ストーンが、最近いい感じ。

絶好調の若かった時代よりも、熟年になってからの方が好きになる役者がいる。男優ではヒュー・グラント。そして、女優ではシャロン・ストーン。はい、あの『氷の微笑』で全身から野心をギンギラに放っていたシャロン・ストーンが、還暦も超えて、とても上手に歳をとっているのだ。多少のシワ取りはしているだろうが、決して不自然なまでの美容整形に頼ることなく、エクササイズや作り物でない笑顔など、今の自分のままでできることを無理なくしている感じ。この無理なくしている感じって、特に美貌で売っていたセレブには難しいのよね〜。

もともと演技力もたいしたことなかったストーンが、戦略にのって裸を売り物にしていた『氷の微笑』(’92)当時。売れるためなら何でもやります的なガッツはたいしたものだが、あまりにも見え透いていたために下品に思えたものだ。美しい顔立ちだが、鼻が低いので横顔が貧相なのもマイナス要因だった。ところが、マーティン・スコセッシ監督の『カジノ』(‘95)で物欲のかたまりみたいなヤクザの女役がぴたりとハマって、ゴールデングローブ賞のドラマ部門で主演女優賞を受賞した。ここで勘違いしたストーンは、さんざん裸で売ったくせに、もう脱がないと宣言。脱ごうが脱ぐまいが、それは役柄次第だろうに、最初に裸ありきだったからこういうことになる。そして案の定、脱がない宣言以降は女優として低迷。よせばいいのに『氷の微笑2』(’06)なんぞに出てラジー賞で最低主演女優賞を受賞した。

ところがね〜、最近ぐんぐんいいのよね。気取らないカジュアルなかっこうが若々しく、パパラッチにも気軽にVサイン。目のあたりがショボついてはいるが、年相応の美人でなんといっても笑顔がチャーミング。ギラギラした欲望からふっ切れた感が漂い、3人の息子と幸せそう。テレビシリーズも好評で、映画の新作もぞくぞくと。思えば、2年前のゴールデングローブ賞のプレパーティで生シャロン・ストーンをお見かけしたが、ほぼスッピンで気さくな様子。スターオーラを出すような感じじゃないところが意外で、妙に感心したのだった。

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イラストレーター&エッセイスト 石川三千花

映画、ファッションを独自の視点からイラスト+エッセイで斬る!著書に『石川三千花の勝手にシネマ』、『勝手にオスカー』など。

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