[vol.105] おっぱいが証明してる!『DEUCE/ポルノストリートin NY』で娼婦を演じるマギー・ギレンホールは、志の高い女優なのだ

Amazon Primeでシーズン1が視聴可能な米HBO制作ドラマ『DEUCE/ポルノストリートin NY』で、元締めがいない娼婦を演じているマギー・ギレンホールのおっぱいが、とてもいい。いや、正確にいうと、お気に入りの女優が歩んできた豊かな時間とそれに伴う苦労が、幾分くたびれたおっぱいに現われて、そのリアルさを役柄にぶつけて全身でもって表現する彼女の誠実な役者魂。やっぱり好きだな〜、マギー・ギレンホール。

 

ちょっと垂れ目な人懐こい笑顔と、ヒョロ長い体でミュウミュウみたいなモード系のワンピースを着ていたキュートなマギー・ギレンホールを初めて生で見たのは、2000年初頭のインディペンデント映画祭でのこと。弟のジェイクとも仲良さそうにジャレ合い、姉弟で共に売れっ子でやっぱり仲良しなジョーンとジョンのキューザック姉弟と同様に、私は好感を持って見ていた。マギーは役柄のためなら胸を見せることをためらうような女優ではないので、『セクレタリー』(02)では20代のおっぱい、『クレイジーハート』(09)では30代のおっぱい、そして『DEUCE/ポルノストリートin NY』では40代のおっぱいと、私は彼女のおっぱいをその都度、感心して観てきたのだ。

なぜそんなに彼女のおっぱいに注目したかというと、昨今の顔が歳を取らない女優のおっぱいは、その硬直した顔筋と同様にホニャっとした柔らかさがなく観るからに硬くて、ノーブラでも横たわっても、そのおっぱいは垂れるでも崩れるでもなく、パーンと張って型崩れしないのだ。つまり、おっぱいにも表情がない。シリコンだか何だかで盛り上げたしぼまないおっぱいは色香が感じられない。
マギーのように女盛りで赤ちゃんに母乳をあげたおっぱいは、張りがなくなるのは当たり前。『DEUCE〜』で子持ちのくたびれた娼婦を演じる彼女は、そういう肉体に強さと切なさを混在させて、なんとも魅力的な人物像を創り出しているのだ。ちなみに、ニューヨークに住む彼女が、子供が赤ん坊の時に、街角でフツーにおっぱいを出して授乳している姿をパパラッチされていたが、そういう庶民感覚の逞しさも私は大好き。

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イラストレーター&エッセイスト 石川三千花

映画、ファッションを独自の視点からイラスト+エッセイで斬る!著書に『石川三千花の勝手にシネマ』、『勝手にオスカー』など。

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