[vol.107] 美しく聡明で、頼もしくもあるケイト・ブランシェット51歳。一生、仕事が途絶えない「俳優」だわね

今月の1日から開催しているベネチア映画祭に、審査委員長としてレッドカーペットに現れたケイト・ブランシェットが、知的な存在感といいドレスの着こなしといい、相変わらずのかっこよさ。彼女はきっとメリル・ストリープのように、一生仕事が途絶えることがない女優(あえてここでは俳優ではなく、女優と書いておく)に違いない。

ケイト・ブランシェットは、すでにカンヌやベルリンの国際映画祭でも審査委員長を努めた経歴の持ち主で、アカデミー賞主演女優賞はもちろん、さまざまな映画祭で演技賞を受賞している実力派だ。彼女をサポートするエージェントやファッションのスタイリストに優秀な人材がいるので、作品とドレスのチョイスにも抜かりはなし。まあしかし、人間、とてつもない何かを手に入れれば、当然、失うものもある。今は関係を修復した模様だが、数年前に、ケイトの夫で劇作家&演出家のアンドリュー・アプトン(54歳)が年若い女優と何やら怪しいムードでパパラッチされて夫婦の危機を噂されたことも。しかし、そんなありがちな夫婦間の問題も泥沼化することなく、良識ある大人の対処で元さやに収まった2人。互いに演劇芸術を高め合う同志のカップルなのだろう。また3人の子供を抱える家族としての絆は、何ものにも変えられないということか。やることなすことワンランク上の人間力を感じさせるケイトなのだ。

そんな彼女はベネチア映画祭で、「自分のことをいつも『女優』ではなく、『俳優』と言ってきた。私の世代では『女優』という呼び方には蔑称的な意味合いがあったが、良い演技には性的嗜好は関係がない」と明言。これは、ベルリン映画祭が男優賞と女優賞を区別せずに一本化して演技賞にしたことや、今後の国際映画祭がジェンダーの中立性を打ち出すことへの支持を明らかにしたものだ。こういう発言は映画業界のみならず、全世界が共有すべき意識改革に他ならない。聡明で頼もしき「俳優」ケイト・ブランシェット。その上美しくもあるのだから、隙がなさ過ぎ。彼女の夫が、ちょっと火遊びした気持ちが分からんでもない。

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イラストレーター&エッセイスト 石川三千花

映画、ファッションを独自の視点からイラスト+エッセイで斬る!著書に『石川三千花の勝手にシネマ』、『勝手にオスカー』など。

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