2017.05.25

気鋭トラックメーカーtofubeatsの挑戦。「1時間のフルアルバムを、本当にみんな聴きたいのか」

interview&text:Eimi Hayashi  photography:Takemi Yabuki(W)

高身長でスラリと伸びる手脚に歯切れの良い関西弁。26歳の若きトラックメーカー、
tofubeatsは、堂々とした風格をまといつつも柔和な好青年だった。一方でカメラに向けられた力強い視線からは、メジャーで着実に実績を重ねてきたクリエイターとしての貫禄と自信がうかがえる。

通算3枚目となるフルアルバム『FANTASY CLUB』が、524日に発売。本人が唄う楽曲を中心にした今作は、これまでの陽気なJポップとは明らかに異なるテイストに仕上がっている。「メジャーで何をやるべきかをクリアにするのが難しい」と赤裸々に話す彼が今作に込めた思いをきいた。

Profile
1990年生まれ、神戸市在住のトラックメーカー/DJ。中学生の頃からインターネットを駆使した楽曲制作で実績を挙げ、2013年に森高千里をゲストボーカルに迎えた「Don’t Stop The Music」でメジャーデビュー。以降、藤井隆やBONNIE PINKらをゲストボーカルに招いた『First Album』(2014年)、Dream Ami、KREVAらを招いた『POSITIVE』(2015年)を次々とリリース。そして2017年5月24日に3rdアルバム『FANTASY CLUB』を発売。神戸市が行うキャンペーン“U30 CITY KOBE”のテーマソング「THIS CITY」を収録の他、ゲストボーカルにKANDYTOWNの中核を担うYOUNG JUJU、シンガーソングライターのSugar meを起用。

『POSITIVE』のようなノリは、今はやらなくていいかなと思っています

――3枚目のアルバム発売おめでとうございます! 前作までは1年ごとに出されていて、今回は約1年半ぶりということですね。

ありがとうございます! 単純な話で、これまでに2枚アルバムを出したことで嬉しいことに仕事の量が増えまして。一番大きかったアニメの音楽制作はアルバム1枚分ぐらいのボリュームでした。本当は今作も1年後に出す予定だったんですけど、少し間をあけてもいいということになって。

――6曲目に収録されている「FANTASY CLUB」をアルバムタイトルにした理由は?

あの曲はセカンドアルバムを作った時にすでに完成していたんですけど、『POSITIVE』には歌モノの明るい曲だけを入れようと決めていたので外しました。でも個人的にすごく好きな曲だったので、どうしても世に出したいという思いがずっとあって。今回は『POSITIVE』とは違った路線でいくと決めたので、「FANTASY CLUB」を軸にアルバムを作リ始めたというのが主な理由です。

――確かに前作と比べるとテイストが変わりましたね。インストの曲も多いですし。 

『POSITIVE』のようなノリは、今はやらなくていいかなと思っています。前回はゲストボーカルなど強い要素をいっぱい積み上げることに注力しました。でも今回は最初からテーマを決めていたので、1時間という枠組みで最初から最後まで通して聴いてもらうことを意識して作りました。前の曲と同じトラックを次の曲でも引き続き使ったりと、全部の曲がその前後の曲とつながるよう調整して。例えば5曲目の「OPEN YOUR HEART」は最後が四つ打ちに変わるんですけど、あれは次の曲を「FANTASY CLUB」にすると決めたので、あの展開を付け足したんです。漫画の次回予告のように、次を読みたいって思わせないと1時間ももたないんじゃないかと思って。

自分がメジャーで何をすべきなのか。わからないという思いを率直に表現

――最初からテーマを決めていたと仰いましたが、今回のアルバムのテーマは?

 “ポスト・トゥルース*”っていう言葉を最近よく耳にするじゃないですか。ネット上にフェイクニュースが流れて、それを信じる人がいるなんていう話がありますけど、そういうことがぼんやりとしたテーマです。

*ポスト・トゥルース:世論形成において、客観的事実が、感情や個人的信念に訴えるものより影響力を持たない状況(オックスフォード英語辞典)

――なかなか深いところからきているんですね 

ちょっと難しいですよね(笑)。身近な話に置き換えると、今はみんなインスタグラムを使っていて、誰でも簡単にオシャレになれる時代だと思うんですよ。奥行きは重視せず自分が見たい部分だけを切り取るのが普通になってきている中で、フルサイズのアルバムにどうやって向き合っていったらいいのかな、というのが今回のテーマです。だからといって簡単にファストになる時代の流れを揶揄しているわけではなくて。1時間のアルバムを本当にみんな聴きたいのかな? でも1時間でないと出せない雰囲気もあるしなあ、みたいなアンビバレンスな部分を表現しようと思いました。そういう意味で、さっきのタイトルの話に戻るんですけど、「FANTASY」っていい言葉やなって思ったんですよ。浮世離れしている感じもいいなって。

――歌詞もテーマと連動していますね。2曲目の「SHOPPING MALL」は、少し挑発的な内容でもあると思ったのですが。

挑発的だと思う人とそうでない人がいて、そこらへんが面白いなと思っています。僕自身は挑発的なことは言っていないつもりです。どちらかというと自分に問いかけているような気持ちで作ったので。

――そうなんですね。あれはどんな心境から生まれたのでしょうか?

最近だとサブスクリプションの音楽配信が始まったじゃないですか。今まで以上に良い音楽がいっぱい聴けるようになる中で、なんで自分のアルバムを作らなあかんのか、みたいな思いが出てくるんですよね。自分がメジャーで何をすべきなのかわからなくなってくる。でもそのわからないことに対して自分はちゃんと音楽を作って向き合っていかなきゃいけないから、わからなさをそのまま歌詞にしたっていうことですかね。

――全13曲の中で一番思い入れのある曲は?

一番よく聴いているのはSUGAR MEさんが唄っている「YUUKI」です。人に頼んだ曲は聴きやすいんですよね(笑)。今回は自分ばかり唄っているんで(笑)。

――YOUNG JUJUさんとSUGAR MEさんを起用したきっかけは?

YOUNG JUJUは、彼が所属しているKANDYTOWNが同じワーナーからアルバムを出したので、制作中にいろんな音源を聴かせてもらったんです。彼のラップでいい曲がたくさんあったのでお声がけしました。
SUGAR MEさんは、もともと好きなアーティストだったので、どこかでお声がけしたかった。ただ日本語で曲をリリースされてなかったので日本語ではNGなのかなって勝手に思っていたんですけど、去年日本語の曲をリリースされたのを知ってオファーしました。 

――最後に、アルバムについて伝えたいことはありますか?

今回のアルバムは『POSITIVE』よりもポジティブな気持ちで作りました。前回は明るい曲を作らなきゃっていう使命感のようなものがあったんですけど、3枚目になってメジャーで何をやるべきかをクリアにするのが難しくなって。そのどうしたらいいかわからないという思いを率直に表現したので、そんな内容の曲を聴いてもらえたら、それはすごく嬉しいし僕にとってはポジティブなことです。
今回のアルバムは昔の手法に戻しているんですけど、こういうやり方は『POSITIVE』みたいなJポップを経ないと絶対にできなかったことだと思っています。それは僕自身にとってすごく大事なことです。

「BABY」(アルバム『FANTASY CLUB』より)

INFORMATION

『FANTASY CLUB』
tofubeats

WARNER MUSIC JAPAN

01. CHANT #1
02. SHOPPINGMALL
03. LONELY NIGHTS
04. CALLIN
05. OPEN YOUR HEART
06. FANTASY CLUB
07. STOP
08. WHAT YOU GOT
09. WYG(REPRISE)
10. THIS CITY
11. YUUKI
12. BABY
13. CHANT #2

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