2017.12.07

【LICAXXXのコレキキナ vol.5】『A So We Gwarn』Dego & Kaidi

本誌で大人気連載中の「LICAXXXのコレキキナ」がウェブでも読める! 毎月独自の切り口で、新譜&旧譜を紹介します!

じんわり温かくなるハウス・ミュージック

 寒くなってきましたね。今回はホットアイマスクをしたときのように、じんわり心を温めるハウスのアルバムを2枚紹介します。新譜は、UKの2人組ディーゴ・アンド・カイディ『A So We Gwarn』。もともとデトロイト・ハウスの大御所セオ・パリッシュが好きで、彼が手がけるレーベル、Sound Signatureからリリースするということで知りました。一般的にジャズやR&Bを感じさせる音楽って、ビートがすごくまったりしていたり、熱を込めて歌い上げられていたり、とかく甘くなりがちだと思うんです。でもディーゴ・アンド・カイディはジャズっぽさもありながら、ハウス寄りのダンス・ミュージックなので、聴き心地がさっぱりしています。ファンクやソウルなどブラック・ミュージックの要素もありますし、リズムも面白い。アルバム通してとても気持ちよく聴けました。王道のジャズが好きな人たちに、「ちょっと塩味がきいた音楽もどうですか」とすすめたい一枚です。
 あわせて聴きたいのは、そのセオ・パリッシュが自身のレーベルSoundSignatureから再発した『Parallel Dimensions』。彼は常にクセのあるビートに、ちょうどいい塩梅のサンプリングを使ってハウスを作っています。『A SoWe Gwarn』よりもハウス感が強め。ファンクやソウルをサンプリングしている音楽って華やかになりがちですが、『Parallel Dimensions』はオーガニックなビートもあり、派手すぎない。DJをしていると、ストイックなテクノより聴き心地よくしたいけど、まだわかりやすく上げる時間帯じゃないという場面があるんです。そんなときこういう温かいハウスは重宝します。2作とも読者のみなさんにぴったりのおしゃれサウンドです。

Profile
リカックス
DJ/ビートメイカー。ウェブ「シグマファット」 主宰者。J-WAVE「SONAR MUSIC」 ではラジオパーソナリティー として活動中。

SOURCE:SPUR 2018年1月号「LICAXXXのコレキキナ」
interview & text:Annie Fuku photography:Yuhki Yamamoto

PICK UP

『Shadow Work』
Mammal Hands

¥2,000/Big Nothing

ますます自由度が高まっている最近のジャズ界を象徴する本作は、気鋭のUKバンドの最新アルバム。ピアノとサックスとドラムの対話が、インドやアイルランドの音楽、クラシック、テクノの要素を拾いながら緩やかに表情を変え、未知のサウンドにたどり着く。

『Needle Paw』
Nai Palm

¥2,200/SONY MUSIC

世界的人気を誇るオーストラリアのソウルバンド、ハイエイタス・カイヨーテのシンガーが、その美声とギターだけを用いてソロ作品を完成。流麗なメロディとスピリチュアルな言葉、複雑に編んだボーカル・ハーモニーで聴き手をやさしく抱擁し、まどろみを誘う。

text:Hiroko Shintani

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