今、ロックンロールってどんな音楽?と訊かれたら、スタークローラーのアルバムを聴かせるのが、手っ取り早いのかもしれない。カリスマティックなシンガー、アロウ・デ・ワイルドが率いるこのロサンゼルス出身の4人組は、ロックンロールのエネルギー、デンジャラスさ、楽しさを体現。破天荒な爆音ライヴで、ここ日本を始め世界中で音楽ファンを熱狂させている。フジロック・フェスティバル出演のために今年2度目の来日を果たした彼らが、フレンドリーで無邪気なオフの顔を見せてくれた。
日本はほかの国よりライブを楽しんでる
――3月に来日した時はなんと全5公演を売り切りましたよね。日本での反響に驚いたのでは?
オースティン:うん、あんなに歓迎してもらえて本当にハッピーだったし、今回も東京滞在を楽しんでいるよ。
ヘンリー:みんな明治神宮が大好きなんだ。すごくピースフルで、東京にいる間はほとんど毎日通っているよ。
アロウ:でも私はザワザワした原宿の町も大好き!
オースティン:そんな風に両極端なものが混在しているのが面白いよね。
ヘンリー:あと、日本ではほかの国より、みんなライブを楽しんでくれているような気がした。日本の人たちは勤勉で、普段は真面目に仕事しているから、ライブで思い切り気分を発散させているのかなって、勝手に分析してるんだけどね。
過激なパフォーマンスの裏側
――ライヴと言えば、血糊を塗りたくったり客席に飛び込んだりする、アロウのワイルドなパフォーマンスが、各地の音楽ファンを驚愕させています。
アロウ:血糊はライブを盛り上げる材料というか、オーディエンスからリアクションを引き出す手段なの。シンガーとして、どんな形でもいいからリアクションが欲しいじゃない?たまにやり過ぎて、ちょっとした騒ぎに発展することもあるわ(笑)
――なのに、子供の頃のあなたはすごくシャイだったそうですね。
アロウ:ええ。どうやって変身できたのか自分でもよく分からないんだけど、多分シャイな自分に嫌気が差したんだと思う。なんとかしたくて、半ば強制的に自分を積極的に表現するように促した……みたいな感じかな。時間はかかったけど、ある日“誰がどう思おうと構わないんだ”と吹っ切れた瞬間があって、自分を解放できたの。
オースティン:彼女だけじゃなくて、みんなこのバンドをやっているうちにどんどん変わって、解放された気がするよ。
ティム:うん。演奏もどんどん激しくなっていったし。
ヘンリー:そういうライブの評判のせいで、クレイジーなキッズだと思われがちだけど、4人ともすごくナイスなんだ(笑)
オースティン:そしてロックンロールを絶滅から救うのさ!
「キュートな女の子になんてなりたくない」
――実際、ロック人気がダウンしている中で、あなたたちは救世主と見做されているところもありますね。
ヘンリー:あまり期待されると荷が重いけどね。僕らはいい曲を書いて、いいライブをやって、音楽を通じて人々とつながりたいだけだから。
アロウ:うん。ロック復権のお手伝いができたら最高だけど、今のところは、とにかく楽しみたいというのが本音かな。
ヘンリー:フェスに出ると、僕ら以外にロックバンドと呼べるアーティストがほとんどいないことも珍しくない。でも逆に目立って注目してもらえるし、少数派も悪くないよ。
――アロウのステージ衣装も、アンドロジナスなところが独特です。
アロウ:そうね。自分で作った衣装もあるし、古着もあるんだけど、フェミニンな服はあまり好きじゃないの。“キュートな女の子”にはなりたくない。キュートなだけの女の子シンガーって最悪でしょ?それにお手本にしているシンガーも、アリス・クーパーとかイギー・ポップとか男性が多いから、彼らの衣装にもインスパイアされる。だから私の場合は、アンドロジナスかクレイジーか、どちらかに転ぶのよ(笑)。
INFORMATION
『Starcrawler』
STARCRAWLER
(¥2,000/Beat Records)
今年1月に登場したデビュー・アルバム。60年代のガレージ・ロック、70年代のハード・ロックやグラム・ロック、80年代のヘヴィメタル、90年代のグランジ……と、半世紀のロック史を凝縮したキャッチーで粗削りなサウンドから、大きなポテンシャルを秘めたバンドの勢いが伝わってくる。
Profile
2015年、ロサンゼルスで同じ高校に通っていたふたりのティーンエイジャー、アロウ・デ・ワイルド(ボーカル)とヘンリー・キャッシュ(ギター/ボーカル)が、ティム・フランコ(ベース)とオースティン・スミス(ドラムス)を交えてバンドを結成。今年デビューした新人バンドの中では、一二を争う大きな注目を浴びている。アロウは音楽界で活躍する人気フォトグラファーのオータム・デ・ワイルドを母に持ち、父のアーロン・スパークもミュージシャン。
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