2018.09.07

【LICAXXXのTalk Room vol.4】ゲスト:Yoshinori Hayashiさん

Licaxxx/リカックス
DJ、ビートメイカー。ウェブ「シグマファット」主宰。パーソナリティを務めるJ-WAVE「SONAR MUSIC」も注目。

GUEST
Yoshinori Hayashi/ヨシノリ ハヤシ

トラックメイカー、DJ。2015年にUKのレーベルからデビューした。東京を拠点に世界各都市で活躍中。

自分らしい音質をくずさず、オーバーグラウンドに広げたい

Licaxxx 6月に発表された『Harleys Dub』にはいろんな要素が入ってますが、個人的には"地元"と表現したいような土着的な要素も印象的でした。
Hayashi 打楽器や鈴のような少し土着的な音は、主にジャズのレコードがもとになってますね。ただ、レコードからネタを拾ってそのままループさせる方法は使わないようにしてます。モチーフにするときは単音で鍵盤に入力して、それを弾く。最近はまずいろいろ録音して、最終的に全体を考えながら一曲にするんですけど、その作業がトラックメイカーとしての技量が問われる瞬間であり、楽しいときでもありますね。その際の機微が、楽曲の色とか嗜好性を決める重要な要因のひとつだと思います。
Licaxxx あと、くぐもった音質もHayashiさんらしさですよね。
Hayashi ベッドルームで宅録したようなくぐもった音を聴いてきたし、レコード特有の温かみのある音質が好きなので、デモ音源も、アナログだけをリリースするレーベルに好んで送っていました。ビッグフェスになるほど、昨今のDJの現場も、バキッとした華やかな音質を出すほうが好まれる傾向があると思うんです。そういう均一化されたきらびやかな音の中で、自分の嗜好性として愛着がある「温かみのある音質」で巧打したかったですし、最終的にはそれをオーバーグラウンドのほうに広げたいんです。
Licaxxx HayashiさんのDJプレイにもいろんな要素がまとまって入ってる印象がありますが、昔からいろんな音楽を聴かれてるんですか?
Hayashi そうですね。僕は部屋で聴く音楽とクラブで聴く音楽が同居していることが、DJプレイとしては自然だと思うんです。たとえば、デトロイトやハウス、ディスコなども、当時のヒット曲としてみんなが聴いていたモータウン音楽を消化したものですよね。でも単に奇をてらったプレイにならないようにするためには、どの様式から来て何について考えられた曲なのかを、自分なりに解釈した上でDJをすることが必要だと思うんです。
Licaxxx 海外レーベルからのリリースを機に海外でも活動されてますね。
Hayashi そうです。9月に3回目の海外ツアーを行う予定で、10月にノルウェーのレーベルから1stフルアルバムが出ます。今後の目標は、いわゆる音マニアでない人たちにも、並行して聴いてもらうこと。アンダーグラウンドとマスって、二極化して考えがちですけど、DJはどんな場面でも常にいいプレイをしようとしています。いいプレイとは、聴く人に伝えるために誠実に音を積み上げていくこと。そのためにも、柔軟でいたいというか。だからこそ、ボイラールームなどのメディアに露出することで、自分のコミュニティの外にも行けるし、そこで背伸びすることで得るものもある。ただ、そういうときにくぐもった音だと受け入れられないこともあるので、自分のスタンスをくずさず、ビッグフェスに対応していくこと、枠を広げるということを今後は目指していきたいと思ってます。

PICK UP

『Harleys Dub』
Yoshinori Hayashi
/Jheri Tracks

「長い時間軸でグラデーションを楽しめる景色を作ることを意識した」というロングチューンも収録された新作。12インチEP。

SOURCE:SPUR 2018年10月号「LICAXXXのTalk Room」
iinterview & text:Kanako Hayakawa photography:Shin Hamada