2019.02.01

多様なカルチャーがはぐくんだ大器、Cosmo Pykeの音楽

interview&text:Hiroko Shintani  photography:Kento Mori


SOURCE:SPUR 2018年11月号「SPUR LOVES...」

スケーター、スプレーペイント・アーティスト、ハイエンドなブランドの広告キャンペーンや雑誌で活躍するモデル……。いくつもの肩書をもつコスモ・パイクは「とにかくフツウの仕事をしたくないんだよ(笑)」と説得力満々に言う。現在20歳、ミレニアル世代らしいそんなフットワークの軽さを誇る彼が、英国を面白くする若手クリエイターとして脚光を浴び
ている理由とは?

Profile
1998年ロンドン生まれ。2017年にEP『Just Cosmo』でデビューし、今年4 月に行なった初来日公演はソールドアウトに。来年初めには、亡くなった祖母にインスパイアされたというEPを、発表する予定。

多様性を誇る町から生まれる音楽

コスモ・パイクが脚光を浴びる理由、それはシンガー・ソングライターとしてのコスモが発表している、ユニークな音楽にある。そう、ジャズのグルーブ、フォークに根差したギタープレイ、スカやアフロビートのリズム、ラップ調のボーカルを取り入れた、エクレクティックで気まぐれなバイブスの音楽に。「そういうスタイルは、僕がロンドン南部のペッカムで生まれ育ったことと深く関係しているんだ」と彼は説明する。「ペッカムは、幼い頃はちょっと怖いと感じたくらいで、タクシーが行きたがらないような場所だったんだ。でも大人になるにつれて町の魅力がわかって、素晴らしい場所で育ったと実感するようになった。イスラム教徒がいて、アジア系やアフリカ系の住人がいて、ふとスペイン語が耳に飛び込んできたりという、多様性を誇る町。僕の音楽はまさにそういう環境の産物だよ」

スマホが僕のレコード会社だよ

母はスコットランド人、父はジャマイカ出身だというから、彼の出自そのものが町を体現しているようでもあるが、かつてはミュージシャンだった母に、ギターの手ほどきを受けたのが8 歳のとき。以来音楽にのめり込み、アデルや故エイミー・ワインハウスほか多数のスターが学んだパフォーマンス・アートの名門校、ブリット・スクールに進学した。「授業もさることながら、そこで出会った友達からより多くを学んだ。みんな個性的な音楽を作っていて、すごく刺激を受けたんだ」とコスモ。
2 年前に卒業して本格的な活動をスタートしてからまだEP1 枚発表したばかりだというのに世界中でファンを獲得。日本から南米まで各地をツアーしている彼は、あえてレコード会社とは契約せず、「これが僕のレコード会社だよ!」と、手もとのスマホを指さす。
「今はアーティストが直接聴き手に作品を発信できるし、業界のシステムに組み込まれたくないからね。それに、自分はすでに一定の成功を収めていると思うんだ。インターネット経由で大勢の人が僕が何者か知っている。世界中から大きなラブを感じている。音楽のおかげでね。そのラブこそが成功を意味するんだよ」



INFORMATION

『Just Cosmo』
Cosmo Pyke

(70Hz Recordings Ltd)

人生で初めて書き上げた曲「Wish You WereGone」から始まり、少年期の自分を凝縮した、5 曲入りのデビューEP。レイジーでぬくもりのあるサウンドを背景に、鋭い観察眼を駆使して日常風景を描く。

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着たい服はどこにある?
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