2019.02.07

ロマンティックな気分になれる曲は?

Licaxxx/リカックス
DJ、ビートメイカー。ウェブ「シグマファット」を主宰。ラジオパーソナリティを務めるJ-WAVE「SONAR MUSIC」も注目。

ロマンティックな気分になれる曲は?


「Next Generation」
Paolo Mantini


「Osiris」Maisha
『There is a Place』収録曲

映画のような展開で非日常の感覚を味わって

 今号のテーマは巻頭特集ともリンクした、「ロマンティック」。ということで、この言葉から連想した2曲を紹介したいと思います。

 1曲目はピアノの音色のみの曲を。バークリー音楽大学卒のイタリアのミュージシャン、パオロ・マンティーニ「Next Generation」です。ハウスの大御所といわれるペペ・ブラドックのリミックスが入っているレコードをきっかけに知りました。パオロは若い"オタク"なピアノ奏者という風貌なんですが、音楽は展開がはっきりしていてエモーショナル。幻想的でファンタジックだけど華やかなだけじゃない、ちょっぴりディストピアな雰囲気も感じられるのがいいですね。クラシカルでありつつ、ピアノでビートを刻んでいるような、ミニマルなループ・ミュージックの要素もある。ドリアン・コンセプトのようにクラシック畑から出てきてはいるけど、クラブ・ミュージックにもアプローチできるというか。アンビエントやクラシックをよく聴く人、特にスティーヴ・ライヒなどが好きな人にはハマるんじゃないかな、と思います。

 2曲目はロンドンの新世代ジャズシーンで注目を集める6人組バンド、マイシャ「Osiris」。ロバート・グラスパーやカマシ・ワシントン、サンダーキャットが好きなので、そのつながりで聴き始めました。この曲は12分と長く、そのなかで徐々に盛り上がっていくところ、どんどんテンポが速くなっていくところ、やさしさを感じる部分など、映画のように物語的な展開が楽しめます。異国情緒や民族音楽っぽさがあるし、予測のつかない展開がまるで夢を見ているかのよう。こういう本能的なセッションって熱量がすごくあるし、俗っぽいけれどどこか官能的な感覚もあって好きですね。

 ロマンティック気分を盛り上げたいときに、ぜひ聴いてみてください。

PICK UP

『mō’zā-ik.』
Phony Ppl
¥2,200/P-VINE

多数のアーティストとのコラボで名を馳せたブルックリンのソウル・バンドが、最新作で本邦デビュー! モザイクというタイトルどおり、色も形も違う曲がここに集結。90年代風のヒップホップやラテンジャズなど多様なサウンドを、メロウなグルーヴで束ねている。

『Come Over When You’re Sober, Pt.2』
Lil Peep
¥2,200/SONY MUSIC

こちらは2017年に21歳の若さで急逝したラッパー兼シンガーの遺作。ヒップホップとロックを新たなスタイルで融合するムーヴメントの旗手だった彼は、ひんやりとしたギターとシンセに乗せて心の痛みを淡々と吐露。そのダークでシネマティックな世界は独特だ。

text: Hiroko Shintani

SOURCE:SPUR 2019年3月号「LICAXXXのミュージッQ」
interview & text: Annie Fuku photography: Yuhki Yamamoto

FEATURE