2019.06.07

番外編 ’19 F/WのランウェイBGMレビュー【Licaxxxのファッション×ミュージッQ】

Licaxxx/リカックス
DJ、ビートメイカー。ウェブ「シグマファット」を主宰。

CELINESelected by Hedi Slimane

EMBRASSE MOI
《LES ÉCRANS ALLUMÉS》

「MUSIC ORIGINAL SOUNDTRACK FOR CELINE」

心躍るフレンチポップ
クラシカルでフェミニンな雰囲気が感じられた今シーズン。音楽もそんなムードに通じる王道フレンチポップで、フランスのインディーバンド、EMBRASSE MOIがショーのために書き下ろした作品。そこまで著名ではない同国のアーティストをフィーチャーする姿勢がとても素敵だと思います。

PRADASelected by Frédéric Sanchez

1.Qual
「Existential Nihilism」
2.Patrick Eudeline
「Un Jour Mon Prince Viendra」
3.The Poetics
「The New Girl」
4.Powermad
「Slaughterhouse」
5.Vitamin String Quartet
「Bad Romance」
6.Mark Snow
「X-Files (UNKLE Remix)」
7.Marilyn Manson
「I Put A Spell On You」
8.Danny Elfman
「Tales From The Crypt」
9.Laibach
「My Favorite Things」

めくるめくダークファンタジー
今シーズン、プラダはダークロマンスなムードを打ち出して、不穏なファンタジーワールドを生み出しました。音楽もその世界観に沿った、シュールなセレクト。まずはSFホラーを彷彿とさせる怪しいEBMから始まって、映画音楽で流れてきそうなストレンジポップ、ゴリゴリのUSハードメタル、四重奏にアレンジしたレディー・ガガの曲と続きます。その後も「X-ファイル」のダンスリミックス、マリリン・マンソンの攻めた楽曲、昔のゾンビドラマの主題歌と畳みかけてくる。最後は欧米のバンドとして初めて北朝鮮で公演した、スロベニアの実験音楽集団ライバッハで締め。2010年代初めにインターネットから生まれた音楽ジャンルで、ディストピアの世界観を表現したヴェイパーウェイヴっぽさもあるし、NYの音楽家であるOPNのような実験的な雰囲気もある。ビッグブランドがこういう尖った選曲をするの、たまりませんね。

MSGMSelected by Frédéric Sanchez

1.Little Snake
「ISTHISREAL.MP3 (feat. Kage)」
2.Vitalic
「Valletta Fanfares」
3.Ratatat
「Gipsy Threat」

個性的ダンスミュージックが揃い踏み
服にははっきりとした色やハートなどのポップなモチーフが使われ、おとぎ話のようなイメージを構築。一方音楽はビート強めのハードなダンスミュージックで揃えていて対比が面白いです。コンセプトに沿う選曲というより、ランウェイのBGMとしてのグルーヴ感を重視した印象でした。

BURBERRYSelected by Riccardo Tisci

MUSIC by M.I.A.

伝統と現代のコントラストが強烈
今回はコンセプトによって会場が二つに分かれていて、流れる音楽もそれぞれで異なっています。音楽を手がけたのは、英国のミュージシャン、美術家、デザイナーであるM.I.A.。フォーマルな雰囲気の会場における彼女のミックスは、ヒップホップをベースにダンスホール、テクノ、ブレイクコアなどでバキッとまとめられていました。一方、現代的なムードのランウェイでは、会場を囲むフェンスを若者たちがよじ登る反抗的な演出が。ここではクラシカルなピアノ曲が流れます。会場コンセプトとBGMを逆にする演出が新鮮です。ブランドの伝統とリカルド・ティッシ自身の革新性を融合するという意志が伝わります。

TOGASelected by Shuhei Abe

1.Lotus Plaza
「Indian Paintbrush」
2.James Holden
「Solidarity Theme (Release)」
3.Nkisi
「VI」
4.杉村恭雄
「Untitled (3)」
5.Deerhunter
「Slow Swords」
6.Chris&Cosey
「Walking Through Heaven」

「好き」を大事にするさすがのセレクト
TOGAの古田泰子さんは、ダンスミュージックに造詣の深いデザイナーの一人です。理路整然としたエクスペリメンタルやシンセポップが楽しめました。Nkisiというコンゴ出身で英国拠点のアーティストの曲なんか、すごくかっこいい。ブランドの持つエッジィさがにじみ出る選曲です。

SOURCE:SPUR 2019年7月号「LICAXXXのファッション×ミュージッQ」
interview & text: Annie Fuku photography: Yuhki Yamamoto,Jonas Gustavsson (runway)