晩夏の夜【秋元才加の音語り】

vol.8 晩夏の夜

「Bitch I'm Madonna (feat. Nicki Minaj)」
Madonna
『Rebel Heart』収録

「酩酊」
underslowjams

　みなさん、こんにちは。秋元才加です。今年の夏は前代未聞の夏でしたね。私は、夏が好きです。薄着でいいから楽だし、夏ならではのアクティビティもたくさんあります。外で飲むお酒も好きです。あの、夕暮れから夜にかけてのいやらしい温度と空気の匂い。夏ってなんだか悪いコトをしたくなってしまうのは私だけでしょうか？　朝帰りしたりしなかったり……（笑）、ちょっぴり大胆になる季節、それが夏なのではないでしょうか。
　そんな気分を盛り上げてくれる私の一曲はMadonnaの「Bitch I’m Madonna（feat. Nicki Minaj）」です。「一晩中楽しむのよ！　ハメはずしたいならはずせばいいじゃない！」。マドンナ姐さんの言葉が、ズンズン心に響いてきます。若いアーティストではなく、マドンナの年齢をもってこのようなメッセージを送っていることがポイントなのです。いくつになっても楽しんでいいんです（人に迷惑をかけない程度に）。例年なら、渋谷や新宿でくんずほぐれつしながらも夏の夜にのまれていくカップルや団体を見ながら元気をもらう秋元ですが、今年はちょっと様子が違いましたね。いつもならフェスやイベント盛りだくさんで、もっと音楽を楽しめたのになぁ。ちょっと寂しい秋元ですが、外出が減ったので出費も酒量も減りました（笑）。私も一年に何度かは、飲みすぎて二日酔いになり、次の日をつぶして落ち込むことがあります。そんなときにぴったりの曲がunderslowjamsの「酩酊」です。心と体、離れ離れになる、それがお酒！　それが夏！　曲調もゆっくりでセクシーなところも好きです。2曲ともに、お酒にひもづけて聴きたい曲ですね。今日は飲むぞ～！と気合を入れて繰り出す夏の夜、二日酔いで後悔する朝。まだまだ私には、学びが足りないようです。みなさん、くれぐれもコロナには大胆になりませんよう。今年の晩夏は今年ならではの楽しみ方を。ソーシャルディスタンシングを保って、移り変わる季節を思う存分楽しんでいきましょう！

Monthly Pick-up

『Voices』
Max Richter
￥3,000／Universal Music

　多方面で活躍するドイツ人の作曲家が、国連の世界人権宣言をテーマにした最新作を完成。そこから聴こえてくるのは、低音の弦楽器の響きを強調したオーケストラと、70の言語で条文を読む人々が繰り広げる、厳粛な対話。人類の理想を讃えるとともに、現実を嘆いているかのよう。

『APRIL/月音』
Emmy The Great
￥2,300／Big Nothing

　広東語の歌詞でスタートする本作は、英国人と香港人の血を引くシンガー・ソングライターが、香港側のルーツを掘り下げるアルバムだ。香港で出会った人々や家族を巡るストーリーが淡々と描かれ、全編を包むノスタルジックなやさしさは、彼女が見いだす安らぎを物語っている。

SOURCE：SPUR 2020年11月号「秋元才加の音語り」
text: Sayaka Akimoto　text（Monthly Pick-up）: Hiroko Shintani 　photography: Kodai Ikemitsu　styling: Mayu Yauchi　hair: Keiko Tada 〈mod’s hair〉　make-up: Nao Yoshida