2022.05.24

音楽の聴き方、俺の個人的な見解【オカモトレイジの現象 vol.2】

オカモトレイジ
1991年生まれ、東京都出身。中学校の同級生で結成されたロックバンドOKAMOTO’Sのドラマー。9枚目のフルアルバム『KNO WHERE』が発売中。昨年全国ツアーを開催。

音楽の聴き方、俺の個人的な見解

1 レイジさんが愛用するヘッドホン「PHONON SMB-01L」
2 手作り真空管アンプ
3 引っ越しの際に唯一残したVHS
4 「これは電源の入るiPhoneです」

おすすめのレコードプレーヤー、ヘッドホン教えてください!と、よく質問されます。が、しかし、音のよし悪しや音楽の聴き方って人それぞれに好みや考え方あるし、コレがいいよ!とは一概に言えないなー……と思っています。なので俺の個人的な見解をここに書かせてもらうヨ♪

音楽に限らず芸術作品なら何にでも置き換えられることだと思うんですけど、結局のところ作り手の狙いや意図が一番くみ取りやすい状態がいいと思ってて、ロックバンドのライブはライブハウスで、クラブミュージックはクラブのどデカいスピーカーで、アートはだだっ広い美術館で、映画もデカいスクリーンの映画館で見るに越したことないと思ってます。それを突き詰めていくと60年代のロックンロールは真空管アンプ & 7inchシングルで、80年代のカルト映画はブラウン管テレビ & VHSで、’90s HIPHOPはソニスポのウォークマン & カセットテープで、となってくるわけです。まぁでもそれが必ずしもベストってわけでもないんですけどね。

別の切り口で考えるちょっとトリッキーな芸術の楽しみ方があります。何年か前にロック好きの先輩の家に遊びに行ったとき「60年代初頭、デビュー前のビートルズやストーンズはお金もないし、アメリカからオリジナル盤を入手できるはずもないから、イギリスでリリースされているアメリカのブルースの輸入盤を、安いオーディオシステムで聴いていたはずだ!」と言っていて。オリジナル盤ではなくPYEインターナショナル(PYEとはイギリスのレーベルで、そこからリリースする海外音楽の輸入ラインのこと)が出している輸入盤を買い集めていました。あくまでも想像ですが、ジョンやポール、ミックやキースが当時ブルースのレコードに熱中していたであろう環境を整えて、その音楽体験を疑似的に再現していたのです。ここまでくるともはやプロファイリングですね。いい音楽はいつ何で再生してもいいんですけど、そこからさらに一歩深掘りして楽しむ姿勢が重要ってことかもしれないですね。

音楽とカルチャーが切り離せない理由はここにあると思います。やっぱり革ジャン着てるときに聴くラモーンズは最高です。

いつか未来のK-POPマニアがこぞって電源の入るiPhoneを買い集める日も遠くないはず……。

 

SOURCE:SPUR 2022年6月号「オカモトレイジの現象」
photography : Masaya Tanaka 〈TRON〉(icon) hair & make-up: Takeru Urushibara 〈FLEURI〉(icon) text: Reiji Okamoto