2023.01.08

共同体で考えることが、社会を生き抜くヒントになる【UMMMI.の社会とアタシをつなぐ音】

共同体で考えることが、社会を生き抜くヒンの画像_1

(左)UMMMI. うみ●映像作家。これまでに愛、ジェンダー、個人史と社会をテーマに作品を発表。ルイ・ヴィトンやナイキなどとの仕事の傍ら、ミュージックビデオの制作も行う。
(右)MIRA新伝統 みらしんでんとう●電子音楽家のRaphaelとダンサーのHonamiから構成された、オーディオ・ビジュアル・パフォーマンスを制作するアートプロジェクト。

『Noumenal Eggs』MIRA新伝統
『Noumenal Eggs』MIRA新伝統

ベルリンのSubtextからリリースされた1st EP。「他者性と、消費主義社会における"資源"としての身体」をテーマに制作した6曲が収録されたアンビエント作品。

UMMMI.(以下U) 先日参加してもらったイベント「水平都市 – FLATLINE CITY」で、MIRA新伝統のパフォーマンスを観ましたが、何をテーマにしていたのでしょうか?

Honami(以下H) 今回は私たちが影響を受けた学者のダナ・ハラウェイが掲げるスローガン「Make kin not babies(子どもではなく類縁関係をつくろう)」が題材です。ダナが考えることはとても複雑な内容ですが、私たちなりに噛み砕いて、パフォーマンスに落とし込みました。

 Honamiのコンテンポラリーダンスと、Raphaelの奏でる音との不思議なバランスが素晴らしくて、いまだに感動と熱狂を引きずっています。

 ダナの考えを通して、社会で起きている問題や、個人が鬱屈として抱えることをコミュニティ単位で共有し向き合うことが、さまざまな困難を乗り越えるためのヒントになると感じました。なので、私たちだけではなく、ほかのパフォーマーも交え、共同体をテーマに表現をしました。

Raphael(以下R) ラストの場面では、僕たちのEP『Noumenal Eggs』に収録されている「Howling Machines」を使用しました。メロディアスな曲なのですが、最後には遠吠えのような叫び合う音が入っていて、複数人でコミュニケーションを取り合い、声を上げる必要性を表しました。

 まさに今回私たちが企画した「水平都市 – FLATLINE CITY」は、さまざまな領域にいる人たちの接続点として、ともに考えられる居場所をつくれたらなと思っています。ただその一方で、コミュニティとして人が集まることで、誰かを傷つけてしまう可能性があることも感じています。

 最近は世の中の風潮的に、傷つかないことがよしとされる傾向がありますよね。もちろん、ひとりでいたら、誰からも傷つけられない世界にいられるかもしれません。でも、人間は社会的な動物なので、集団から完全に離れることは難しいと思うんです。それなら自分だけではない誰かと傷を共有し合うことで、乗り越えていくための考えを見つけ出せたらいいですよね。

 コミュニティが存在することが、直接的なセルフケアにつながるわけではないかもしれないけど、それぞれの傷を共有しながら、みんなで考え、許していくことで生まれる力強さはあるし、これからの社会を生き抜いていく方法の一つになるかもしれないと思っています。

MONTHLY SELECTION

『Flag Day Original Soundtrack』
Various Artists

¥2,750/Universal Music
ショーン・ペンの最新監督作で音楽を委ねられたのは、過去作でもタッグを組んだパール・ジャムのエディ・ヴェダーだ。キャット・パワーや娘のオリビアを巻き込み、タイムレスなフォークテイストの曲の数々を用意。家族との関係に苦悩する主人公の心を代弁し、ゆっくりエンパシーの輪を広げていく。
『Sap』
Okay Kaya

¥2,530/Big Nothing
女優やビジュアル・アーティストの顔も持つノルウェー系アメリカ人のシンガー・ソングライター。さまざまなキャラクターやイメージに自己を投影するようにして、サードを完成させた。おぼろげな光に照らされたドリーミーなサウンドスケープ、そして複雑に重ねた歌声で、自分の深層心理を仔細に描き出す。
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