vol.21 奮い立たせるようなハッピーハードコア
9月8日にエリザベス女王が亡くなった。かつてアタシがロンドンに住んでいたときに思いを馳せる。市内の中心地を歩けば、お土産店に女王の顔が印刷されたポストカードやマグカップが並んでいて、いたるところで目にする存在だった。ネットでも彼女がどれだけユーモアにあふれた女性だったかが話題になっている。確かに女王のことを悪く言う人は多くない。常に人の目に晒され、悪事を許されない存在であるのに、称賛され続けるということはすごいと思うし、それに値するくらい素晴らしい人物であったのだろう。でも、女王の人間性それ以前の問題として、名目として象徴化している君主を讃えることが、21世紀の今、必要なのかどうか? という疑問がよぎる。
そんなことを彼女の死後考えながら、インターネットラジオのNTS RadioでEclair Fifiの新しいミックスを聴いていた。約2時間にもわたるこのミックス、前半はアンビエントやハウスの聴きやすい曲が流れていたのに、ちょうど1時間ほどたったときに唐突にEclair Fifiの声が入る。「みなさん、女王が亡くなりました!」。そしてその直後、前半とは打って変わった、笑っちゃうほどアッパーでハッピーハードコアなScott Brown versus DJ Rab S の「Now is the time」が流れ出す。Eclair FifiもScott Brownもスコットランド出身ということを考えると、この奮い立たせるような選曲は、長い間イギリスに独立を求めてきたスコットランド人としての心の叫びだったのかもしれない……とつい思ってしまった。
この原稿を書いている今、日本では安倍元首相の国葬の直前で議論がやまない。なんにせよ誰にせよ、どんな偉い人であったとしても、アタシは国葬反対です。死んで悲しまれる偉人(と社会から扱われる人)と道端でひとり死んでゆく人の命は平等のはずだ。国葬されるような人は裕福なのだから、一般市民の生活保障のために税金を使ってほしいと切に訴えたい。Now is the time!
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