2025.08.05

【caroline】バンドサウンドの未来を切り拓く、実験的音楽集団【hashimotosanのおすすめ音楽】

一枚のアルバムとの出合いから始まる、"私的"な音楽の旅。多彩な音が育む、新しいカルチャーの萌芽を目撃せよ!

hashimotosanのおすすめ音楽

『caroline 2』caroline

『caroline 2』caroline

『caroline 2』caroline
¥2,860/BEAT INK

個人の魅力や想いが伝わりやすいソロアーティストや、華やかなダンスパフォーマンスで魅せるグループアーティストが中心を占める昨今の音楽シーン。バンドの存在感は、年々薄れているなと感じる。世界の主要な音楽フェスでもバンドがトリを務めることは少なくなり、若者のロック離れが叫ばれているのが現状だ。そんな中、固定観念にとらわれない新しい感覚を持った若者たちによる面白いバンドが、ここ数年ロンドンを中心に登場している。その中の一組がcarolineだ。

ギターやベース、ドラムだけでなく、バイオリンやトランペット奏者もメンバーにいる8人組という構成も珍しいが、彼らが鳴らすサウンドもまた斬新だ。さまざまな楽器が自由に鳴り響き、ノイズ混じりの激しい轟音と、穏やかな静寂が美しく融け合う、不思議な音の世界を作り上げている。

彼らの最新作『caroline 2』は「異なる世界の同時進行」をテーマに制作された、遊び心とチャレンジ精神にあふれた一枚だ。18カ月間にわたってセッションを繰り返し、さまざまな方法でのレコーディングを試みたのだそう。スタジオで演奏した音源と墓地で録音した音をコラージュさせた「U R UR ONLY ACHING」や、別の部屋で2つの違う曲を同時に演奏し、その様子を移動しながら録音した「Coldplay cover」など、驚きの発想と実験精神から生まれた個性的な楽曲が並んでいる。バンドだからこそ表現できる新しいサウンドはまだたくさんあるし、そこには無限大の可能性がある。彼らの音楽を聴いてそう強く思った。

HASHIMOTOSAN(ハシモトサン)プロフィール画像
HASHIMOTOSAN(ハシモトサン)

ジャンルを問わずさまざまなミュージシャンを愛する音楽マニア。Itなアーティストを紹介する自身のX(@hashimotosan122)にファン多し。最近は、新調したアナログプレイヤーでレコードを聴きながら過ごす時間がお気に入り。

2025年8月のおすすめ音楽

『moisturizer』 Wet Leg

『moisturizer』 Wet Leg

¥2,860/Beat Records

3年前にデビューするなり世界を虜にした、英国ワイト島出身のバンドがカムバック。飄々としたウェット・レッグ流インディ・ロックに磨きをかけて、恋する気持ちをいろんなモードで描き、幸福感を伝播する。

『Now Would Be A Good Time』 Folk Bitch Trio

『Now Would Be A Good Time』 Folk Bitch Trio

¥2,750〈7月25日発売〉/Big Nothing

オーストラリア発のこのトリオは、ユーモアや皮肉をたっぷりきかせたイマドキのフォークを志向。美しいメロディに乗せた3人のハーモニーで人間関係のややこしさを憂いつつ、自分を笑うことも忘れない。

『Addison』 Addison Rae

『Addison』 Addison Rae

配信中/Sony Music

TikTok発の大人気インフルエンサーが、シンガー・ソングライターへみごとに転身。ここ20年の音楽史のおいしいところを絶妙なセンスでミックスした彼女のポップソングは、甘くてスリリングでクセになる。

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