2022.09.08

社会へのメッセージを思考し発信する、新たな場所作り【UMMMI.の社会とアタシをつなぐ音】

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(左)UMMMI. うみ●映像作家。これまでに愛、ジェンダー、個人史と社会をテーマに作品を発表。ルイ・ヴィトンやナイキなどとの仕事の傍ら、ミュージックビデオの制作も行う。

(右)Yiqing イーチン●Loci名義でDJや、イベントオーガナイザーとして活動。ほかにもラジオ番組の配信や読書会「NEON BO OK CLUB」の運営など幅広く活躍中。

vol.19 社会へのメッセージを思考し発信する、新たな場所作り

『Ode To Black Trans Lives』Tygapaw

ジャマイカ生まれのDJ/プロデューサー。2020年の本作品は「BLACK TRANS LIVES MATTER」に光を当て生まれたエクスペリメンタル〜アブストラクト・テクノ。

UMMMI.(以下U) イーチンはDJやパーティのオーガナイズのほかに読書会を始めたよね。

Yiqing(以下Y) 今年から、フィジカルとオンラインで参加できる「NEON BOOK CLUB」をスタートさせました。

 勉強することや、読書から知識を得ることは、ある意味で社会に対しての抵抗につながると思う。世の中で起きていることを、自分の目や耳できちんと確かめていくプロセスを経ることで、意見や意思が見えてくるというか。

 私が読書会をしようと思った理由は、まさにそれです。世の中に疑問を持つきっかけだったり、日頃感じているモヤモヤと向き合ったりする時間になったらいいなと。そして、文字や本を通してコミュニティ作りをしてみたくて。

 イーチンの活動において、影響を受けたアーティストはいますか?

 TygapawというDJのインスタグラムをチェックしているんだけど、この前投稿していたライブパフォーマンスには痺れました。Tygapawは、ノンバイナリーでジャマイカ人。楽曲やライブを通して、ジェンダーや人種問題について訴え続けている人。なかでも『Ode To Black Trans Lives』に収録されている「Scene1」は、Tygapawが社会に対して思う挑発的なメッセージを込めた作品です。政治的なことを覚悟をもって表現する姿には、いつも刺激と勇気をもらっています。私自身も、DJ活動や「NEON BOOK CLUB」を通して、社会に対して日頃感じていることを参加者と共有して、発信し続けていきたいです。

 自分の意見を誰かとシェアできる”場所”が、そもそも大事だよね。この間、福岡で半野外のパーティに行ったのだけど、メインフロアから離れた場所で友人数名がスピーカーで音楽を流し始めて。そこに人が集まって新しい小さなレイブが誕生したんです。用意された場になじめなかったとしても、自分たちの場所を手作りで創造することの可能性を感じました。

 たったひとつのアクションだけで、生まれるものが確実にありますね。

 そうだと思います。実はアタシも、展覧会、映画上映、読書会などが融合したプラットフォームをオンラインと現実を横断しながら作ることを計画しています。誰もが気軽にアクセスできて、次なるネットワークをつなげられる場所にできたらいいな。

MONTHLY SELECTION

『Hideous Bastard』
Oliver Sim

¥2,420/Beat Records
The xxの一員であるオリヴァーが、レトロなシンセ・サウンドにセンシュアルな歌声を乗せて、初のソロ作品を完成。ゲイ男性としてのアイデンティティを前面に押し出し、自分が恥じていること、恐れていることを、ユーモアも交えて明確化。その過程でもたらされた解放感を聴き手と分かち合う。
『Tired of Liberty』
The Lounge Society

¥2,750/Big Nothing
"自由にうんざり"と逆説的スローガンを掲げてデビューするのは、英国から現れた10代のバンド。自分たちを抑圧する力に抗い自由を謳歌する彼らのロックンロールは、不可測で変幻自在だ。この世代が抱く未来への不安や無力感に率直な言葉を与えながら、それを超越するワイルドなエネルギーを漲らせる。