【連載第11回】アートセレブのたしなみ/ディオールのCOOLな国技館

 先日、両国国技館でクリスチャン・ディオールのファッションショーが行われました。クリエイティブ・ディレクターのラフ・シモンズや本国の系列会社CEO、海外セレブから国内セレブまで、ファッションピープルが表参道でも代官山でもなく墨田区に集結するとは……。下町在住として感無量です。

 当日、7時過ぎから銀座の 「エスプリ ディオール - ディオールの世界」展会場前からシャトルバスが運行。この展示も一棟まるごと使ってかなりゴージャスでしたが、無料バスまで出るとは、さすがハイブランドの財力。乗るだけで運気が上がりそうなバスで、セレブ風の方々とご一緒させていただきました。会場に到着すると、黒い服のファッションピープルたちで周辺は埋め尽くされていました。開場時刻になり、中に入ると、国技館の廊下や壁が全て白く改装されていて、またしても糸目をつけない資金力に驚かされます。ランウェイは真っ白い正方形で、人工雪が降っていました。おしゃれ空間にテンションが高まり、浮つきそうになるのを静めてくれます。しかし前の方の席には原色系のドレスをまとった華やかなモデルや女優(すみれさんや森泉さん、水原希子さんなど)がいて、内心興奮しつつ双眼鏡を持ってくれば良かったと後悔。注目されることに慣れているセレブたちは、前で立って社交を繰り広げていました。あとでニュースを見たらオドレイ・トトゥも来ていたとか。そして国内のカリスマ的なインスタグラマーも集結。会場で会ったファッション誌の知人に聞いたら、ファッション業界ではインスタグラムが主流で、ブロガーよりもインスタグラムでフォロワーが多いおしゃれピープルが重用されているそうです。未登録なので出遅れた感が……。

 

 そしてショーが始まると、クラシカルだけれど未来的な服を着たモデルたちが白いランウェイに登場。相撲は女人禁制なのに大丈夫かと一瞬心配になりましたが、土俵は天井の方に格納されていたようで安心。64ルックも発表された今回のショーは「エスプリ ディオール 東京2015」と題され、テーマはメガロポリス東京。デザイナーのラフ・シモンズが東京にインスピレーションを受けてデザインしたそうです。スパンコールやエナメルなどシャイニーな素材が多く、景気回復の予兆かと期待させられます。最後、ブルーのシャツを着たラフ・シモンズが一瞬登場し、1500人の拍手を受けていました。

その後、フロアはそのままアフターパーティの会場に。ふだん土俵がある場所に入っていいのか躊躇しつつ、音と光の洪水の中へ……。若者が「この空間にやられそう~」と話すのが聞こえ、おしゃれな空間に気圧されていたのは自分だけではないとわかって安心。それでも世慣れたおしゃれピープルは、「ディオール」のロゴ入りの限定枡を果敢にGetしていました。あまり社交できないまま会場を後にし、帰ってからツイッターやインスタグラムで見かけた人の名前を検索し、確認。余韻に浸りました。ひとりアフターパーティはネット空間で……。

 

 

 

“辛酸なめ子”

辛酸なめ子

漫画家、コラムニスト。埼玉県出身、武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。アイドル観察からスピリチュアルまで幅広く取材し、執筆。新刊は「妙齢美容修業」(講談社文庫)「辛酸なめ子の現代社会学」(幻冬舎文庫)。twitterは@godblessnamekoです。

FEATURE