先日、プライベートでインドに行き、ムンバイのアート&パワースポットにも行くことができました。まず、ガイドさんに連れて行っていただいたのは船着き場。行き先の詳細を把握しないまま船に乗り、その船が窓もなくわりとラフな作りだったので若干怖かったのですが、1時間強、揺られて着いたのが、ムンバイから約10キロのエレファンタ島でした。
世界遺産にも認定されたエレファンタ島。岩窟の上の岩に何か人の顔がたくさん浮き出ているような気も……?
エレファンタ島にはおよそ5世紀前後に作られた、シヴァ神を祀る洞窟の寺院があります。ちょうどその前日までシヴァ神をお祀りするスピリチュアルなイベントに参加していたので、呼ばれたようで嬉しいです。島に着くと、猛烈な暑さに襲われ、目の前の長い階段を見て一瞬気が遠くなりました。ガイドのインド人女性は「今日も40度以上あるけど、別にインドでは普通のことよ」と涼しげに笑っています。インドでその前々日に熱中症で病院に搬送された病み上がりの身には厳しい階段。なんとかシヴァ神のパワーにつながって頂上へ向かいます。一応、歩くのが辛い人用の神輿みたいな籠もありましたが、恰幅の良い女性を運んでいる4人の男性が死にそうな表情をしているのを見て自粛。
歩くのが辛い人は1000ルピー位払えば籠に乗って岩窟まで行けます。
エレファンタ島石窟寺院への参道。両側にお土産屋が並んでいますが、見る余裕はありませんでした……。
そしてたどり着いたCAVE(岩の洞窟)は、外よりは若干涼しく、霊妙な気が立ちこめていました。「ここはパワースポットですか?」とガイトさんに聞くと、「ここは聖なる場所で昔から瞑想の場として使われていました」とのことでした。日本人は全然いなくて、レアなスポットに来られたようで嬉しいです。
岩窟には、シヴァ神のレリーフの数々が。ただ残念なことに、16世紀にこの場を発見したポルトガル人の射撃の的になって結構破壊されてしまっていましたが、それでもダイナミックで見事な作品に圧倒されました。
例えば、踊るシヴァ神。この像を見てから、帰りの船で瞑想していた時、シヴァ神のようなシルエットが踊っている動画がまぶたに浮かぶという不思議な体験もありました。長い時を経て、この像に封じ込められた霊力がまだ残っているようです。
ヨガで瞑想するシヴァ神、怒るシヴァ神、頭部が三位一体のシヴァ神などの像も圧巻です。破壊されて詳細は見えないのですが、ゲームをするシヴァ神と奥さんの像もありました。このシーンにまつわる神話が印象的です。シヴァ神が妻のパールヴァティーとダイスゲーム(サイコロ遊び)をしたらシヴァ神が負けて、怒って4本の腕でテーブルの上のダイスを払い落としました。神様なのに大人なげない……。しかし賢い妻はだまってダイスをテーブルの上に拾い上げ、後ろを向いて背中で静かな怒りを表現し、夫に分別を悟らせたそうです。パールヴァティー、美しい上に性格も素晴らしい最高の女神です。女性としてもいろいろと学ばされるレリーフです。
最高の女性、パールヴァティーが惚れるシヴァ神の魅力の一つは、シヴァリンガ……。そう、男根のご神体です。岩窟内の社の中に、石の巨大なシヴァリンガが屹立していました。直径1mくらいで、カチカチに固い素材なのが妙にエロいです。たぶん社は子宮を表しているのだと思います。ということは……ごちそうさまです。シヴァ神とパールヴァティーの合体パワーを吸収し、精気を分けてもらえました。厳かな寺院なのに、秘宝館みたいな要素もあり、聖と俗が隣り合わせなのがインドの魅力だと実感しました。
インドといえば大人気なのがガネーシャ。ふんどし姿のレリーフを発見。
漫画家、コラムニスト。埼玉県出身、武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。アイドル観察からスピリチュアルまで幅広く取材し、執筆。新刊は『辛酸なめ子の世界恋愛文学全集』(祥伝社文庫)『タピオカミルクティーで死にかけた土曜日の午後 40代女子叫んでもいいですか 』(PHP研究所)『大人のコミュニケーション術 渡る世間は罠だらけ』(光文社新書)『妙齢美容修業』(講談社文庫)『辛酸なめ子の現代社会学』(幻冬舎文庫)。Twitterは@godblessnamekoです。