東京ミッドタウンの芝生広場に突如現れたボックス状の建物。ルイ・ヴィトン「SEE LV」展の特設会場です。ピンクと黒の派手な柄は、遠くから撮影すると二次元バーコードとして認識されるという意表を突かれるデザインです。
ルイ・ヴィトンの160余年におよぶ歴史の旅を体感できる内容で、2020年にはじまり、中国、ドバイ、そして今回の東京という、コロナ禍を吹き飛ばすような巡回です。没入型のデジタル作品からヘリテージ・コレクションまで、5つの章で構成された展示でヴィトンの世界に浸れます。
まず入って最初に現れるのは、人工知能を駆使した創業者ルイのデジタル肖像画。デジタルアーティストのレフィーク・アナドールがAI技術で作成しました。ルイが生まれたジュラ地方(フランスのブルゴーニュの東に広がるワイン産地)の風景の画像から、じわじわと創業者のシルエットが浮かび上がります。風光明媚な美しい土地で育まれたルイ・ヴィトン創業者のセンス。サブリミナル的にリスペクトが高まります。
続いて、ヴァージル・アブローやニコラ・ジェスキエールが手がけたファッションのアイテムが並ぶコーナーが展開。ニコラ・ジェスキエールによる「刺繍入りプロケードのテールコート」はシルバーに輝く近未来感と繊細な手仕事が融合した逸品。ヴァージル・アブローによる「クラウズ・レインコート」「クラウズ・プルオーバー」など雲柄のアンサンブルも目を引きます。雲の配置に絶妙なセンスが。
これらの個性的なルックを着こなすにはよほどのエネルギーがないと……と思って見回したら、壁一面にヴィトンのアイテムを身につけたセレブたちの大判写真が。ケンダル・ジェンナーにレディー・ガガ、ビヨンセ、セレーナ・ゴメス、リアーナといった世界的なセレブたちに交じって、広瀬すず、岩田剛典、YUTA(NCT127)にKōki,といった日本出身のセレブの姿も。皆さん適度に野心を漂わせ、これからも発展していくポテンシャルを感じさせます。ヴィトンのアイテムでオーラが増幅していました。
写真の前には「カプシーヌ」「キーポル」「スピーディ」「プティット・マル」など、ルイ・ヴィトンのアイコンバッグが展示。今は円安でさらに手が届くきにくくなってしまったバッグたちがまぶしいです。日本が誇る草間彌生や村上隆などとのコラボアイテムも。
続いて多彩な交通手段とともに発展してきたルイ・ヴィトンのトラベルアイテムを一望できる展示室が。といってもただの旅行用品ではないのがさすがです。
1885年の「亜鉛コーティングを施した『ベッド・トランク』」は、トランクに入れて持ち運べるベッド、という発明品。寝袋よりもだいぶ寝心地良さそうです。それから百数十年の時を経て、持ち運べる移動手段が登場。スケートボードとセットのスケートボード・トランクです。そして、「服はポータビリティの究極の形態」とキャプションにも書かれていましたが、「テントに変身するレインコート」という驚きのアイテムが。ヴァージル・アブローが手がけた逸品で「トランスフォーマブルな機能性」を備えているそうです。アウトドア専門店でも見たことがない、ななめ上の発明品。テントを持ち運ぶのが面倒なら着てしまえば良いのです。
続いての部屋は、アイコニックなモノグラムと来場者が融合するデジタルアート空間。モノグラムが投影され、来場者のシルエットが様々な形に変化しながら重なります。モノグラム好きにはテンションが上がる仕掛け。
最後に、ルイ・ヴィトンの世界のガイド本「シティ・ガイド」シリーズが並ぶ書斎風スペースが。今まで見てきて一番手が届く価格帯かもしれません。本は数千円からで、東京ミッドタウン ガレリアB1 アトリウムの特設ギフトショップでも購入できます。
世界各国を巡回する展示会場に漂う異国の空気を感じながら、世界各国のガイドブックを拝見。燃油サーチャージが上がって円安になって欧州の空港が人手不足でロシア上空は飛行機が迂回……と、ますます海外旅行しにくい昨今ですが、この展示でヴィトンと一緒に時空を超えた旅ができた感が。しかも無料とは……。旅費や諸々の経費が浮いたぶん、いつかヴィトンの魅惑の商品を買えるかもしれない、と夢が広がります。