【カルティエ】と日本を結ぶ美しい絆を体感する展示 #102

東京国立博物館の表慶館で、「カルティエと日本 半世紀のあゆみ 『結 MUSUBI』展 ー 美と芸術をめぐる対話」が開催。「Half-Century of Cartier in Japan and Beyond:an Everlasting Dialogue of Beauty and Art.」という英語のタイトルが詩のようで、素敵な世界に導かれる予感です。
 

東京国立博物館の表慶館で、「カルティエと日本 半世紀のあゆみ 『結 MUSUBI』展 ー 美と芸術をめぐる対話」が開催。「Half-Century of Cartier in Japan and Beyond:an Everlasting Dialogue of Beauty and Art.」という英語のタイトルが詩のようで、素敵な世界に導かれる予感です。
 

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展覧会には2つのパラレルワールドが共存していて、左右対称の表慶館の右側では、カルティエと日本文化についての展示、左側はカルティエ現代美術財団と関わりがある国内外アーティストの作品が展示されています。

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「大型の『ポルティコ』 ミステリークロック」は1923年の作品で、ビリケンを拝んで幸運が引き寄せられそうです。
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動物や植物など、自然モチーフの様々なジュエリーたち。高級感と癒しが共存しています。

動植物など自然界をモチーフにした作品も多いです。トンボがモチーフで羽がダイヤモンドのブローチ、宝石でできた鳥や亀や蝶。時計の針が宙に浮いているように見える、大型の「ポルティコ」ミステリークロックは、鳥居モチーフのデザインで、なんと上にビリケンさんらしき人が乗っています。幸運のシンボルとも言われるビリケン。最高級の素材とクラフトマンシップによるものなので不思議となじんでいます。亀の形をした針が時を示す磁気時計もありましたが、時間に追われずマイペースに生活できそうです。

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「時計付きデスクセット」は1931年の作品。コーラルやアベンチュリン、ダイヤモンド、ロッククリスタル、ジェードなど多種多用の宝石や天然石が使用されパワーを放っています。

まず、二つの世界をつなぐ中央のエントランススペースに展示されているのが澁谷翔による「日本五十空景」。美しいグラデーションが並んでいますが、これは作家が自ら47都道府県を訪れ、現地で新聞を買ったときに見上げた空のイメージを描いた作品です。地方の新聞の一面に掲載された空の絵は、京都が紺から朱色のグラデ、岐阜が青から緑、など各地を訪れた日の空からインスパイアされた色で、自分の出身地を探してみるのも楽しいです。毎日のように空は変化し続けますが、カルティエの価値は不変、というメッセージも受け取りました。


右側のゾーンには、日本の文化とカルティエのセンスが高次元で融合した作品が並んでいます。カルティエと日本文化とのご縁は1898年にまでさかのぼります。波模様や鱗模様、竹のモチーフ、螺鈿細工、鳳凰や虎、龍といった吉祥モチーフなど、日本の創造性からインスピレーションを得ているそうです。

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インド、パティアラのマハラジャ、ブピンドラ・シン殿下のために制作されたネックレス(1928年)。輝きは色あせません。

過去に日本で開催されたカルティエの主要な展覧会に出品された傑作の数々も再来日。会場スタッフの方に聞いたら「カルティエのスター選手が来ています」とのことでした。再会するたびに金運が上がりそうです。マハラジャが所有した有名なネックレスや、ベルギー王妃エリザベスの「『スクロール』ティアラ」、ウィンザー公爵夫人の「『パンテール』クリップブローチ」、モナコ公国グレース公妃のダイヤモンドのネックレスなど。ウィンザー公爵夫人とは、ウォリス・シンプソン夫人のこと。王冠を捨てさせた上、こんな最高級でかわいいブローチが手に入るなんて恵まれすぎです。

このコーナーは、所有していた女性たちの高貴な残留オーラも吸収できます。カルティエは常に「王の宝石商、宝石商の王」と称されてきたそうで、庶民は手が届かないですが、こうして博物館で間近に拝見できるのはありがたいです。

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「ダブル タイガーヘッド モチーフのバングル」(1991年)は神話の生き物のようで神々しいです。
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杉本博司の「春日大社藤棚図屏風」(2022年)は、藤棚の写真を和紙にプリントし、京都の職人によって屏風に仕上げられました。伝統と格式が息づいていてカルティエの世界観にもマッチしています。

そして一階に戻り左側のゾーンは、国内外アーティストの作品が展示。杉本博司、村上隆、三宅一生、森村泰昌、北野武、横尾忠則、荒木経惟、森山大道、川内倫子、束芋、宮島達男など、最もメジャーで豪華な顔ぶれです。右側の展示室にはカルティエのスター的作品が展示されていましたが、こちらはアート界のオールスターです。

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カルティエ現代美術財団とつながりが深い北野武(ビートたけし)の作品。どこか懐かしい自画像ですが、すぐ北野武とわかるのがすごいです。

作品数も多く、フィーチャーされているのが北野武。「北野武とのつながりは、一連のプロジェクトを通じて育まれ、当初、日本国外では主に映画監督として知られていたアーティストの隠れた一面の発見に繋がっていきました」と資料には記されていました。フランスに愛されレジオン・ドヌール勲章のオフィシエ章も受章した北野武の才能は、カルティエによって見出され、進化したのでしょうか。北野武デザインの画材の収納箱、鮮やかな色の自画像、いけばなをモチーフにした動物と花が合体したオブジェ「Lion」など、日本でもなかなか見られない貴重な作品が展示。フランスで行われた北野武のカルティエでの展覧会は大人気で、近所の小学校の生徒が遠足で訪れるほどだったそうです。自由奔放でピュアなタッチの作品が子どもたちにも共感を受けたのでしょう。

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横尾忠則の20点のポートレイトシリーズは、肖像画という形による横尾氏とアーティストの豪華コラボレーション。

回廊には横尾忠則による、日本人の芸術家のポートレイトが展示。今回展示されている作家も描かれています。ここに並ぶことができたら一流芸術家の証かもしれません。

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「時間が足りない:need more time」(香取慎吾)は、「タンク」からインスピレーションを受けて制作。東京タワーや黒うさぎも描かれています。

赤くてエネルギッシュで目を引く絵画は、2017年、タンクウォッチの100周年を記念する展示に寄せられた、香取慎吾の作品。「時間が足りない:need more time」は、文字盤に見立てられたキャンバスに数字が踊っていて、時間とダンスしているような楽しさが。香取慎吾のその後の芸術家としての躍進を思うと、カルティエと関わったことで運気がさらに上がったのかもしれない、と思わせられます。

これまでにカルティエ現代美術財団で複数回の展示を行なった杉本博司による数学的オブジェも展示され、存在感を放っていました。階段の壁には、束芋によるウォールドローイングにプロジェクションをかけ合わせた作品が展示されていたり、見どころだらけです。右側のカルティエと日本文化ゾーン、左側の国内外アーティストゾーンを合わせるとかなりの作品数。数々の名作時計を作り出しているカルティエの展示で、時間を忘れてしまう感覚が。展示会場で、カルティエとアーティストたちが刻む栄光の時間に身を委ねたいです。

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束芋のインスタレーション作品「flow-wer arrangement」はクラシカルな内装に合っていて、奥ゆかしさが漂います。

カルティエと日本 半世紀のあゆみ
「結 MUSUBI」展 ― 美と芸術をめぐる対話
期間:~2024年7月28日(日)
時間:9:30~17:00  金・土曜日は19時00分まで(入館は閉館30分前まで)
休:月曜
会場:東京国立博物館 表慶館
東京都台東区上野公園13-9
https://www.tnm.jp/modules/r_event/index.php?controller=dtl&cid=5&id=11080

辛酸なめ子プロフィール画像
辛酸なめ子

漫画家、コラムニスト。埼玉県出身、武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。アイドル観察からスピリチュアルまで幅広く取材し、執筆。新刊は『辛酸なめ子の世界恋愛文学全集』(祥伝社文庫)『タピオカミルクティーで死にかけた土曜日の午後 40代女子叫んでもいいですか 』(PHP研究所)『大人のコミュニケーション術 渡る世間は罠だらけ』(光文社新書)『妙齢美容修業』(講談社文庫)『辛酸なめ子の現代社会学』(幻冬舎文庫)。Twitterは@godblessnamekoです。

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